1年に1度のわくわくするイベント、バレンタインデーとホワイトデー。わが子がバレンタインデーにチョコをたくさんもらうと、母は嬉しいですよね。しかし、幼い息子がもらうチョコは、のんきに喜んでばかりもいられません。なぜならホワイトデーの用意は母の役目。お返しはとても気をつかいます。
はじめてのバレンタインデー
幼稚園から帰宅後。何度も自宅の呼び鈴が鳴りました。同じ組の女の子が代わる代わるやってきます。はにかみながら可愛らしい小箱とお手紙をそっと渡す子。
「絶対食べてな!」と元気いっぱいに息子の手を取り包みを握らせる子。息子はポカンとしながらも、お菓子をもらえたのが嬉しいようでニコニコと受け取っています。
いただいた包みの数は計10個。先輩ママたちからなんとなく聞いてはいたのですが、実際に女の子たちが息子のために来てくれたことが、単純に嬉しかったです。
3月。ホワイトデーのお返しを探しに、息子を連れて近所のスーパーへ行きました。
バレンタインデーにいただいたのは、小さな駄菓子チョコや、女の子ママの手作りお菓子少々。失礼ながら大体の金額を想像し、お返しはもちろん倍以上、多めに見積もってこの程度と前もって決めていました。
スーパーのホワイトデー特設コーナーには、予定金額で買える魅力的な商品がたくさん並んでいます。楽しく見ていると、偶然通りかかった先輩ママに声をかけられました。彼女は辺りをそっとうかがいながら、ちょっぴり声をひそめて言いました。
「ここで買うとまずいよ。女の子ママたちがチェックしているから」
3倍どころか10倍返し!? ホワイトデー暗黙のルールとは
どうやら、どこでも簡単に入手できる既製品は厳禁。既製品なら有名デパート商品や、インターネットのお取り寄せに限る。また、腕に自信のあるママは手作りお菓子。しかも、マドレーヌやクッキー少々、なんて論外。ひとりにつきロールケーキ1本、ホールケーキ1個を作るママもいるとか!
あわてて息子の手をひき帰宅した私は、後日、遠くのデパートへ。出費は予定金額を大幅に超え、久々の遠出を楽しむ余裕もなく、半日以上を費やして疲れだけが残りました。
翌年のバレンタインデーも、同じくらいの数をいただきました。その頃には、親しくなったママ友たちを通じて、様々な噂が耳に入るように。
「誰々はホワイトデーにパーティーを開き、豪華なお返しまで渡した」
「誰々のお返しは安っぽくてセンスがないと、女の子ママたちが悪口を言っていた」
「誰々のお返し手作りケーキを食べてお腹を壊した子がいる」
ホワイトデーのお返しで品定めされる男の子ママたちも黙っていません。
「100円もしないチョコをばらして包んで、けちくさい」
「手作りクッキー2枚包んで持ってきて、豪華なお返しを期待されても迷惑」など、子どもの気もちはそっちのけ。親同士の批評合戦に、心底うんざり…。
そのくせ、よそはよそ、うちはうち、と割り切れない弱い自分…。悩んだあげく、結局この年も、のこのこ遠いデパートに出向いたのでした。
ホワイトデーのお返し、もう悩まない!
息子もすっかり成長した今。私は、夫にも、働いている職場の男性陣にもチョコを渡さない主義を宣言しています。
まるで、私自身の価値が図られる場のようだったホワイトデー。気をつかうのも、気をつかわせるのもイヤ。見栄をはるのも、無理をするのもイヤ。ちょっぴり疲れた時には、心がときめくスイーツを、自分のために買って食べます。これこそ最大の幸せ!
(ファンファン福岡公式ライター/山ナオミ)