糖尿病は個人差が大きい疾患です。そのため様々な治療方法や治療薬があります。関心の高い糖尿病について、小田辺内科医院の小田辺修一先生にうかがいました。
【糖尿病専門医】小田辺内科医院 小田辺修一先生
久留米大学医学部卒業。東京大学医学部にて博士号取得。フランス・リール・パスツール研究所、フランス国立科学研究センター研究員を経て2000年小田辺内科医院理事長に就任。臨床研究院を兼務しながら基礎研究を続ける。英語・フランス語での診察も行う。
別名「サイレント・キラー」 静かに危機が忍び寄る
血糖値が高いと言われても、生活に困るような状態でなければ痛いわけでもない…と、放置していませんか。
加齢により体の機能が衰えると、血糖値を下げる「インスリン」というホルモンの分泌量が減るため、年齢を重ねるほど「糖尿病」を発症しやすくなると考えられています。高血糖状態が続くことで血管内壁が傷つき、じわじわと血管がむしばまれます。その結果、心筋梗塞や脳梗塞などの恐ろしい病気につながるため、「サイレント・キラー」とも呼ばれています。たとえ肥満ではなくても、40代以上であれば糖尿病を発症していたも不思議ではありません。
糖尿病が進むと血管が多い臓器ほど障害が起こりやすく、例えば眼内で起これば眼底出血による急激な視力低下、腎臓で起これば人工透析が必要なレベルまで腎機能が低下することもあります。また、足の血管障害による下肢末端の壊疽(えそ)や強いしびれが起きることもあり、それらの合併症で人生が大きく変わってしまうこともあります。
日本の成人の5~6人に1人は糖尿病患者&予備軍
多くの糖尿病は食べ過ぎや運動不足、肥満やストレスなどで発病することから「生活習慣病」と呼ばれますが、両親の片方が糖尿病の場合、遺伝により発病しやすいことが知られています。
潜在患者を含め、日本の成人の5~6人に1人が糖尿病に罹患している、または予備軍とみられ、世界的には東アジア系の人種は「白人より糖尿病になりやすく、太るとその傾向があらわれやすい」といわれています。
糖尿病の治療は、まずカロリー制限などの食事療法や運動療法ですが、それら自体がストレスになる方も。うまく血糖がコントロールできない場合には、患者さんそれぞれにあった最適な薬の処方をおすすめします。
患者の体質や生活に合う薬を処方する医師の経験と技術
近年、画期的な糖尿病の治療薬が次々と開発されており、それらの薬を単独もしくは組み合わせることで、副作用が生ずることなく血糖をコントロールすることが可能になりました。特に当院では、できる限りインスリン治療は行なわず、インスリン治療の場合も量を最小限にすることを目指しています。長年インスリン治療を行っていた方が、新薬の服薬だけで血糖コントロールが可能になったり、薬のせいで血糖が下がりすぎ、意識を失う低血糖状態が起こりにくくなったりしたのも、薬の進歩のおかげです。
また、食前・食後、空腹時などの血糖値を、スマホなどで確認できる最新の機器を使用することで、自分自身の血糖値の動きをいつでも確認することができるようになりました。新薬や新しい治療法を常に学ぶ、専門医探しも患者さんにとっては重要です。
定期検診やかかりつけ医受診など早めの対策で合併症を防ぐ
まず半年から1年に1回程度、血液検査でヘモグロビンA1c(HbA1c)を定期的に測定することで、すでに糖尿病なのか、糖尿病になりかけている「境界型糖尿病」なのか、あるいは正常範囲内なのかを知りましょう。さらに、いつもと違う痛みや傷が治りにくい、眠りが浅い、異様に喉が渇くなどの違和感がある時は、早めの受診を。特に家族に糖尿病患者さんがいる場合や、最近体重が増加している方は、医療機関での受診と血液検査をおすすめします。
合併症さえ起らなければ、糖尿病は必要以上に恐れる病気ではありません。まず、禁煙やダイエットなど、できることからはじめてみましょう。