前回はタイミング法と人工授精についてでしたが、今回は【体外受精】、【顕微授精】について書いていきたいと思います。その言葉、聞いた事はあるけれど違いについては説明できないという方が多いかもしれませんね。ここからが高度不妊治療と呼ばれるもので、経済的、肉体的、精神的負担がかなり大きい治療になります。
体外受精・顕微授精のプロセスは?
いずれも採卵(卵子を体内から取り出す)し、体外で受精をさせ受精卵を作ります。その受精卵を子宮に戻して、着床すれば妊娠成立ということになります。体外受精・顕微授精の違いは受精の方法です。 体外受精は、取り出した卵子と精子を同じ容器に入れ受精させること。精子が卵子の殻を破って受精できるかどうかは自然任せです。 顕微授精は、体外受精での結果が得られない場合や、男性不妊(元気な精子が少ないorいない場合)の場合に行われることが多いようです。その名の通り、顕微鏡下で細いガラス管を用いて精子を卵子に直接注入し受精させる方法。 卵子を取り出す、というと簡単そうに聞こえるかもしれませんが、この採卵が身体的負担も大きく大変な作業なのです。
採卵とは?
通常は毎月左右の卵巣のどちらかから、育った卵が排卵されます。その卵を卵管がキャッチして精子と受精すれば受精卵になります。 不妊治療の場合は、排卵自体が上手く行われていない、排卵しても卵管がキャッチできない、卵管が閉塞している、子宮内の状態が悪く着床を妨げているなど、その過程のどこかに上手くいかない理由があるので医療の手助けをすることになるわけです。
自然に排卵された卵を採取するという方法もあるのですが、一度の複数の卵を得られないなどのデメリットもあるため、不妊治療専門クリニックでは薬の力を借りる治療法を適用しているところが多いようです。体外受精では、一回の採卵でなるべく多くの卵を育てて採取出来た方が、その後の可能性が広がりますからね。ただし、一回の採卵でたくさんの卵が育つ方もいれば、薬を使っても卵が育たないという方もいらっしゃいます。 卵が十分な大きさに育ったら、膣壁から卵巣へ針を刺し、卵子を吸引し採取する。これが採卵です。
私の採卵は副反応が辛かった
たくさんの卵を育てるために、私は飲み薬と注射を使用しました。注射は毎日通院が可能な人はクリニックで打ってもらう事もできますが、仕事があると現実なかなか難しい。そこで多くの人は自己注射を行います。 毎日、自分でお腹にホルモン注射を打ちます。注射器に注射針をセットし、アンプルから薬剤を吸い上げ、細い注射針に変えて、消毒した箇所に自分で注射を打つ。通常なら看護師さんがやっている作業を自分でやる日がくるなんて夢にも思いませんでした。 私も初めは自分で自分に注射の針を刺すのが怖くて、手が震えて、涙が出ました。注射針のキャップを外すのを失敗して指に刺してしまう事もありました。しかも、この注射が痛いのです。この工程、ストレスを感じないわけがないですよね。 週に2度くらいのペースで通院し、血液検査でホルモンの数値を、エコーで卵の成長具合を確認します。個人差がありますが、私は育っている卵の数が多かったため、採卵3日前くらいから、お腹がパンパンに張り、体のだるさ、吐き気もありました。 排卵当日は、成熟した卵の数やクリニックの方針にもよりますが、私は麻酔を使用して眠った状態で採卵してもらいました。採卵数は多く、約20個ほどでした。採卵後は1時間程度休んで元気に帰っていく方がほとんどですが、私は麻酔に弱いのと、採卵数が多かったのでホルモン量や血流の変化に対応できず、4時間寝ても吐き気とふらつきで自力歩行ができませんでした。(家族の付き添いや送迎をオススメします。) たくさん採卵できたのは良かったのですが、その分、針を何十回も卵巣に刺したことになります。よって、術後の腹痛もかなり酷く、翌日まで傷みが続きました。
排卵誘発剤や採卵によって卵巣が膨れ上がり腹水が溜まるなどの症状が起こる卵巣過剰刺激症候群(OHSS)になる可能性もあるので、採卵後10日間くらいは減塩生活をするように勧められました。私の友人にはOHSSで入院した人もいます。それだけ体に負担がかかっているということですね。 経験のない方は、こんな文章を目にすると恐ろしくなってしまうかもしれませんが、多くの方は採卵後、元気に帰っていくのでご安心ください。ただ私のような辛い副反応が出る場合もあるという事です。同じ薬や治療法でも、反応はそれぞれ違います。 ちなみに2度目の採卵の時は、予めホルモン量のコントロールを薬で行っていたので、初回の時ほど辛くありませんでした。不妊治療は精神的な負担も大きいので、少しでも肉体的な苦痛は少ない方が良い。信頼できる医師と相談しながら、納得した治療を進めていくことが大切ですね。 さて、採卵後はどういうプロセスになるのか? また次回お付き合いくださいね。
参考資料
『厚生労働省 不妊治療に関する取組み』https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/kodomo_kosodate/boshi-hoken/funin-01.html 『公益社団法人日本産科婦人科学会 不妊症について』 http://www.jsog.or.jp/modules/diseases/index.php?content_id=15
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