受診すべきか迷う生理不順。不安な気持ちで過ごすより医師に相談してみてはいかがでしょうか。更年期以降の気になる婦人科の病気について青葉レディースクリニックの小松一先生にお聞きしました。
【産婦人科専門医】青葉レディースクリニック 小松一先生
九州大学医学部・大学院卒業。福岡市立こども病院新生児科、九州大学病院麻酔科蘇生科研修を経て、九州大学病院周産期母子センター母性胎児部門や北九州市立医療センターなどに勤務。2007年青葉レディースクリニックを開院。マタニティヨガや母親教室なども行なう。
例えるなら、生理は月に1度のベッドメイキング
月経(生理)は、およそ28日周期の間隔でおこり、3~7日間続く子宮内膜からの周期的な出血のことを言います。一般的には11~13歳の頃に始まり、閉経まで30~40年間ほど続きます。なぜ生理がおこるかを考えるには、どのようにして妊娠するかということを理解する必要があります。そもそも正常な卵巣では月に1回、卵子が入った成熟卵胞が破裂し、いわゆる排卵が起きます。排卵された卵子は、卵管の中に採り込まれます。その後、正常な妊娠の場合は子宮から、卵管に上ってきた精子と受精して受精卵となり、子宮の中心部へ運ばれ、子宮内膜と接合(着床と言います)します。
受精卵が子宮内膜にスムースに着床するためには、子宮内膜がフワフワに起毛したベッドのような状態が理想的で、排卵に備えて子宮内膜は徐々に厚くなり、受精しなかった場合は、排卵の約2週間後、古くなった子宮内膜がきれいにはがれ落ちるという現象が「生理」です。
例えて言うと、子宮内膜は受精卵を受け入れるために、毎月、ベッドメイキングをしていると考えれば判りやすいでしょう。
さまざまな症状がある生理不順 悩んでいる人は早めに受診を
生理のトラブルはさまざまですが、月経周期や経血量の異常、月経痛や月経前緊張症候群などの月経随伴症状の有無に分けられます。正常な月経は25~38日間の周期で、これを逸脱する場合は月経不順と言われ、短い周期の場合は頻発月経、長い場合や不規則な場合は稀発月経、特に3カ月以上月経がない場合を無月経といいます。いずれの場合も正常な排卵が行なわれていないことが多く、妊娠希望の方は早めに受診しましょう。月経周期の正確なメモや基礎体温表は診断に役立つので、ぜひ持参してください。女性ホルモンや甲状腺ホルモン、乳汁分泌ホルモン(プロラクチン)を採血し、超音波検査で排卵をしているかどうかを確認します。
頻発月経で経血量が多い場合(過多月経)、貧血に注意しましょう。月経痛がひどい場合は超音波検査を行うことで、子宮筋腫や子宮腺筋症(子宮壁が厚くなり、強い月経痛や多量の経血量が発生する)が見つかることもあります。重症の貧血があっても自分で気づかない場合があり、最近、経血量が多くて疲れやすい、だるい、日中に眠いなどの症状があれば、ぜひ受診しましょう。
また、月経不順では不正出血を伴うことが多く、子宮がん検診も同時に勧めています。40歳以上の方で肥満、糖尿病、未産婦、さらに超音波検査で子宮内膜が厚いなどの所見があれば、子宮体がん検診を実施します。治療は年齢や妊娠を希望するか、しないかによって異なります。妊娠を希望せず、経血量が多い、月経痛がひどい場合は低用量ピルがお勧めです。低用量ピルでは月経周期を28日に調えることができるという副効果もあります。
特に1年間で2~3回の月経しかないというような若年の女性の場合、子宮が小さく萎縮することがあります。現在は妊娠を希望していなくても、将来の妊娠に備えて放置せず、受診することをお勧めします。また、40代になると黄体ホルモンを含有した薬剤の内服や子宮内避妊用具を勧めています。月経不順は多少なりとも誰もが経験するものであり、緊急の検査や治療は必要ではありませんが、治療が必要かどうかの判断を含め、妊娠を希望するかしないか、他に原因となる異常があるかどうか調べることが重要です。
「閉経かな」と思ったら産婦人科を受診しましょう
閉経の前触れとして一般的なのは月経不順ですが、突然無月経となることもあります。無月経が1年間続くと、医学的に「閉経した」と診断しますが、閉経後、更年期障害の症状や突然の出血に驚いて慌てて受診される方も少なくありません。更年期とは閉経の前後5年間を言いますが、更年期の症状の陰に別の疾患が潜んでいることもあります。また、更年期の症状は多様で程度もさまざまです。更年期かなと思ったら、下記の[セルフチェック]を参考にして、一人で悩まず医師に相談してください。