月に一度の注射で頭痛を予防する、新しい抗体製剤がついに解禁されました。片頭痛について池田脳神経外科の池田耕一先生にお聞きしました。
【脳神経外科専門医】池田脳神経外科 池田耕一先生
南島原氏出身。福岡大学医学部卒業。福岡大学医学部脳神経外科及び関連病院にて脳血管障害や頭痛外来を担当。2008年春日市に「池田脳神経外科」を開業。脳血管障害や頭痛などの専門的治療を行う。日本脳神経外科学会、日本脳卒中学会、日本頭痛学会その他に所属。
市販薬に頼りがちな頭痛。薬物乱用頭痛になっていませんか
頭痛にはさまざまなタイプがありますが、片頭痛や緊張型頭痛、群発頭痛のような慢性頭痛を「一次性頭痛」、くも膜下出血や脳出血など他の原因によって起こる「二次性頭痛」に大別されます。
当クリニックの統計では、頭痛に悩む方の男女の割合は1:4.9と、明らかに女性患者の方が多いのが特長です。特に、繰り返し起こる片頭痛は遺伝的なものも多く、母親が片頭痛持ちなら、高い確率で娘にも遺伝すると言われています。ホルモンバランスの影響を受けやすく、年代別では更年期を迎える40代の患者が最も多いのです。
そのため、閉経後は片頭痛が消えたという方もいますが、それでもなお、多くの人が日々頭痛に苦しみ、市販の鎮痛剤に頼りすぎることで「薬物乱用頭痛」に陥る人も。
そんな重度の片頭痛患者向けの予防薬が2021年に次々と解禁されました。当院では、その予防薬の治験に参加しましたが、治療早期から今までの薬剤にない効果がみられております。
新しい片頭痛予防薬「抗CGRP抗体製剤」
新しい頭痛治療薬「抗CGRP抗体製剤」は、片頭痛の時に感じるドクドクと脈打つような血管異常拡張や、炎症反応の原因とされる「CGRP」という物質を直接ブロックすることで、偏頭痛を予防し痛みも軽減します。
薬の種類にもよりますが初回に1ないし2本、翌月から月に1本の皮下注射を打つだけです。副作用は注射部位の痛み程度で、少し高価なところが難点です。しかし、重度な片頭痛患者の「失われた時間」は膨大です。ある片頭痛患者さんは、イベントがある度に片頭痛の発作でキャンセルするために「ドタキャンの女王」と呼ばれ、人間関係や仕事に支障をきたしています。経済的損失額は、2021年の報告では年間約3600億円~2兆3000億円と推計されています。「痛みのない有意義な人生」のため、ぜひこの新薬で治療に取り組んでみませんか。