私には30年の付き合いになる友達A子がいます。彼女との出会いは小学6年生の春。みんなが泥だらけになって遊ぶ、下町の小学校に転入してきたA子との衝撃の出会いと、その思い出をお話ししたいと思います。
真っ白タイツの転入生
6年生の4月。「転入生が来る」との事前情報にざわつく教室に、担任の先生に続いて小柄な女の子が颯爽と現れました。先生の紹介のあと
「A子です。よろしくお願いします!」とぽっちゃりした色白の頬をニイッと引き上げ、目を三日月のようにして笑う彼女は、長い髪をポニーテールにし、白いフリルのブラウスにベビーピンクのタイトなミニスカート。真っ白いタイツで物怖じする様子なく堂々と挨拶をしました。
私のいた小学校は首都圏から少し離れた緑豊かな下町にあり、学校帰りに竹林で泥んこになって遊ぶのは当たり前。おしゃれより、動きやすい服装を好む子が多い学校でした。6年生になってもトレーナーにズボンが普段着だった私たちにとって、真っ白なタイツはすごくおしゃれに見えて衝撃的でした。
休み時間が始まると同時に、クラスの女の子たちはあっという間にA子を取り囲みます。
その頃の私は洋服に頓着がなく、スカートを履くだけでドキドキするほど。そんな私にとってA子はとても気になるものの、どこか近寄りがたく、遠巻きにみていました。
彼女は大きな声で笑い、誰とでも話せる明るい子で、男女もクラスも関係なくどんどん友達が増えていきました。しかし私は華やかな彼女とはグループが違うせいか、親しく話すということはほとんどありませんでした。
きっかけはミミズ
私の学校には、畑で野菜を育てる授業がありました。
枯葉での肥料作りから始まる本格的な授業は、ミミズや虫が出たと時折騒ぎになりながらも楽しい時間でした。
その日、畑をスコップで掘り起こしていると、クラスメートが太いミミズを拾い上げ私の鼻先に差し出しました。驚いて後ろにのけぞった私は派手に転倒し、頭から腰まで土まみれになってしまったのです。呆然とする私に、笑い転げながらもいち早く手を差し出し立ち上がらせてくれたのがA子でした。
「ごめん面白すぎた」と笑い過ぎて目に涙をためながら、頭や背中の泥を払ってくれます。
私から払った土がかかるのも気にせず、A子は笑いながら世話を焼いてくれました。初めは戸惑っていた私も、あまりにも彼女が笑うのにつられ、いつの間にか一緒に笑っていました。
刺激的なA子との時間
それをきっかけに、私たちは沢山話すようになりました。映画・漫画の好みや笑いのツボなど意外に共通点があった私たちは、話題に事欠きませんでした。彼女のストレートな言葉は刺激的で面白く、私のどんな言葉も受け止めてくれる安心感が常にありました。
そしてそれまで引っ込み思案だった私は、彼女と過ごす時間が増えると知らない人とも積極的に話せるように変わっていったのでした。
目に焼き付いた、真っ白なタイツ姿のA子との出会いから30年経ちます。
中学・高校と進級して道が分かれても連絡が途切れることはなく、会えばくだらない話から将来の真剣な話まで何時間も話しました。
その後、彼女は国際結婚し遠く離れてしまいましたが、彼女のマメな性格のおかげか息長く続いています。メールやZOOM(ズーム)で言葉を交わすと今でもワクワクします。
遠巻きに見ているだけでは今のA子との関係はきっとありませんでした。少し近づくだけで、自分の気付かなかった相手の姿が見えてくる。それを彼女との出会いが教えてくれました。
(ファンファン福岡公式ライター / aki)