この春、保育園の年中さんになった息子。進級によって環境も変わり、時の流れや成長について、だんだん理解しはじめたようです。そんなわが子が口にした素朴な疑問に思わず身構え、答えにほっこりしてしまったエピソードです。
年中組への進級をきっかけに
息子の通う保育園は、各学年1クラス。クラス替えはないものの、教室や担任の先生は変わります。
「3月31日までは年少さん。4月1日からは年中さんになるからね。5月、6月…来年の3月まではずーっと年中さん。その次は、年長さんになるよ」
年少組から入園した息子が初めての進級を迎えるにあたって、環境の変化に戸惑うことがないよう、繰り返し伝えていたある日のことです。
「ママ、年長さんの次は?」 歩いて登園する道すがら、息子がききました。
「年長さんの次は、小学生になるよ」 1歳になったばかりの娘を乗せたベビーカーを押しながら、私は答えました。
「小学生の次は、どうなる?」
「中学生。その次は高校生。その次は大学生」
「大学生の次は?」
「大人になる。ママやパパみたいに大きくなると、会社に行ったりするの」 実際はもっといろんな人がいるけど、今はまだざっくり教えればいいかな? そう思いながら答えたのですが、息子の質問はまだまだ続きます。
「じゃあ、大人になった後は?」
「ええと…。おじいさんや、おばあさんになるよ」 この調子でいくと…。 待ち受けているであろう展開に、内心ドキリ。 老いや死について、4歳の子どもにどう説明しよう? そのうちタイミングをみて話そうと思ってはいたのですが、ふいに尋ねられると言葉に詰まってしまいそうです。
「じゃあ、おじいさんとおばあさんの次は?」
「ひいおじいさんや、ひいおばあさんになるの」
「ふうん」息子は、先日会ったばかりの曾祖父母の顔を思い浮かべ、納得しているようです。
「じゃあ、ひいおじいちゃんとひいおばあちゃんの次は、どうなる?」 予想通り、息子は聞きました。
息子の回答 ある意味真理かも!
「えっとね…」
まずは、道ばたで枯れている草花や、死んでしまった昆虫について話そうかな。小首をかしげる息子に目をやりながら、私は考えを巡らせました。
ちょうど、桜の花が散りはじめた時期でした。
「桜の花が散ってなくなってしまうみたいに、動物や人の命もいずれはなくなってしまう」のような流れでもいいかもしれません。
しかし息子は顔を上げ、得意げに言ったのです。
「あのね。ひいおじいさんと、ひいおばあさんの次は、赤ちゃんになるんだよ!」
「赤ちゃんに!?」
「うん!」ベビーカーに乗っている妹に笑いかけながら、元気に返事をします。
「えっと、年長さんになって、小学生になって… 会社行って、おじいさんとおばあさんになって、赤ちゃんになって… ぐるぐるーって、まわるよ」
「そっかー!」 先回りして答えてくれたことにちょっとほっとしながら、息子の回答に深くうなずいてしまいました。成長して、老いた後は、ふたたび赤ちゃんへと、生まれ変わりをくり返す。これもまた真理なのかもしれません。教えようとして、逆に教えられてしまいました。
息子はあっという間に新しい教室や先生になじみ、すっかり年中さんの顔に。
この先いつまで自分の話したことを覚えているか分かりませんが、そう遠くないタイミングで、私からも老いや死について話していけたらな、と思っています。
(ファンファン福岡公式ライター/桐谷きこり)