前回は高度不妊治療の体外受精や顕微受精を行う為に卵子を卵巣から取り出す採卵についてでした。今回は、採卵し受精させた受精卵を子宮に戻し、その後の妊娠判定までについてです。受精卵はいくつ得られたのか?果たして妊娠は成立するのか?と不妊治療において診察の度に期待と不安が入り混じる時期です。
移植への準備
採卵後の卵子は、クリニックの培養士さんの手によって、体外受精や顕微受精で受精をさせます。必ずしも全ての卵が受精するわけではありません。私の場合は20個のうち、11個が受精卵になりました。 受精した卵は、受精後2~3日の状態まで培養して子宮に移植する場合も、受精後5~6日後の【胚】 と呼ばれる状態にまで分割が進んだ状態になった卵を移植する場合もあります。またそれぞの卵の状態によって、ランク付けされます。採卵後の女性の身体の状態や、治療方針により、すぐに移植する場合もあれば、受精卵を冷凍して翌月以降に移植する場合も。医師と相談しながら進めていきます。 移植するスケジュールが決まったら、体の準備も進めなくてはなりません。まずは女性ホルモンを注入するためのテープを下腹に貼ります。私は肌が弱いので、かぶれてしまい日に日に痒くなります。医師に相談したら、虫刺され用の薬を塗ってから貼ると痒くなりにくいらしい、とのこと。やってみたら本当でした! ホルモンテープと同時に、膣にアプリケーターを使って挿入する親指第一関節ほどの大きさの膣錠を使用します。アプリケーターの半分以上を膣に挿入し、内筒を押して薬を入れます。これを朝・昼・夕・就寝前と1日4回使用します。(クリニックによっては一日2回の所もあるらしい。医師の判断の違いでしょうね。) 8時間以上あけないことが鉄則です。これらの薬は、例え妊娠成立しても、妊娠10週目までは薬を続けなくてはならないそうです。 膣錠の使用期間が長くなると、毎日4回異物を挿入するわけですから、膣の入口が痛むようになってきたり、膣で膣壁が傷つき出血を伴うこともあります。投薬の時間を忘れないように時間を気にするのも大変です。移植予定日までこれらの投薬を続けて、ようやく移植ができるようになるのです。
移植日当日
移植日当日の朝から凍結していた卵を解凍させます。わずかな確率ですが、解凍が上手くいかず受精卵がダメになるケースもあるそうです。私は、一番ランクの良かった体外受精の卵が無事に解凍できたので、その卵を戻すことになりました。 この日は私服のまま下着だけ脱ぎ、処置台にあがります。さぁ、いよいよ移植です。下っ腹にエコーを押し当て、子宮の卵を戻す位置をモニターを見ながら医師と一緒に確認します。 そこに向かって細いチューブを挿入していきます。子宮口を通過するとき、僅かにズン! とした痛みがありました。目標地点まで到達すると、ドクターの「はい、戻します!」という声と共に、モニターに白くキラッと光るものが映し出されました。 「これが、私の卵かぁ・・・。あとは上手く着床してくれるだけだ」と、心の中で祈っていましたが、処置が終わるとすぐに処置台から起き上がり待合室へ案内されます。 「え!?少し安静にするとかしなくていいの?」と思いましたが、その必要はないそうです。移植そのものは、いつもの内診とそれほど変わらぬ労力でちょっと拍子抜けでした。 移植当日は感染症を防ぐため、入浴は禁止、シャワーのみです。この日からも引き続き、シールと膣錠を使用し、流産防止の飲み薬が追加されました。
妊娠判定日
私の通院していたクリニックでは移植後10日目が妊娠判定日です。市販の妊娠検査薬は生理予定日から7日ほど経過してからでないと正しい判定ができないと注意書きがありますよね。ですから、市販の検査薬をこのタイミングで使っても意味がないとわかっていても、妊娠判定日まで待てずに市販の検査薬を使ってしまう方も多いそうです。 クリニックでは採血によって妊娠判定が行われます。そこでhcgの数値が50あれば妊娠おめでとうございます、という事になりますが、数値が低かった場合は着床しなかったということで、投薬は中止。生理が終わったら、また来月頑張りましょう、とリセットになります。 さて、ここまでが高度不妊治療と呼ばれるも治療の一連の流れです。当然クリニックや医師の判断により、様々な方法を組み合わせて治療が行われるので、ここに書いたものはあくまで一つの例にすぎません。高度不妊治療は高額の費用と時間と苦痛を伴います。ですから、しっかりと担当の医師と納得のいく治療を選択し、夫婦で協力して取り組んでいくことが大切だと感じています。 次回からは私の移植結果などを書いていきたいと思います。
参考資料
『厚生労働省 不妊治療に関する取組み』https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/kodomo_kosodate/boshi-hoken/funin-01.html 『公益社団法人日本産科婦人科学会 不妊症について』 http://www.jsog.or.jp/modules/diseases/index.php?content_id=15
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