お祝い事や自分のご褒美に、好きなものを食べると「また頑張ろう!」と思えますよね。
そんな時間をさらに素敵に演出してくれるお店をご紹介します。
「鮨ちふね」さん。
こちらは1971年に創業した福岡市南区老司にある老舗のお鮨屋さんです。
西鉄大橋駅からタクシーで10分程の距離の所にあります。
大将は2代目の宅島誠さん。
以前は「千舟鮨」という屋号で長年営業をされていましたが、21年8月に「鮨ちふね」としてリニューアルをされました。以前のお店の時から伺っていましたが、今回久しぶりにお伺いしました。
伺ったのは5月中旬。
その日仕入れた旬の素材を中心とした「おまかせコース」(11,000円)を頂きました。
一品料理が8品、握りが12巻。味も量も大満足の内容です。
一品料理8品
和食ご出身の宅島さんの腕が光る逸品を堪能させていただきました。
ホタルイカの煮付け
最初に登場したのは『ホタルイカの煮付け』。
富山県産のホタルイカを短時間煮付け、有馬山椒を入れて仕上げます。
ふっくらとして、また張りがあるホタルイカに山椒の爽やかな風味とピリッとした辛味が効いてとても心地よい。
味加減が絶妙です。
この日は少し汗ばむ暑さでしたが、一杯目のビールとの相性が抜群で次のお料理の期待が高まります。
鯛の昆布締めと鮪の霜降り
お次は『鯛の昆布締めと鮪の霜降り』です。
昆布で締めた鯛、熱湯でサッと湯引きした鮪。表面と内側のコントラストが美しい。
それぞれ違う技法ですが、旨みがギュッと閉じ込められ、もう一口もう一口と箸が止まりません。
『鰻の茶碗蒸し』
鹿児島県枕崎産の鰹節から出汁と福岡県糸島産の卵で仕上げた『鰻の茶碗蒸し』。
蓋を開けた瞬間、上品な香りが広がります。
鰻は鹿児島県産のものを使用し、口に含むと全体のバランスが丁度よくホッと心がなごむ一品です。
サザエのつぼ焼き
長崎産のサザエを丁寧に下処理し小さくカット。
潮の香りを感じます。そして、なんといっても汁がとてもおいしく印象に残ります。
もずく酢
希少な品種で一般ではあまり流通していない沖縄県産の細もずく。
シャキッとした食感に三杯酢が爽やかで一旦口の中がリセットされます。
鰆(さわら)のから揚げ
『鰆(さわら)のから揚げ』。
思わず「おいしい!」と声を出してしまいました。
揚げたての鰆に田楽味噌と柚子がかけてあります。風味がたまりません。
日本酒と合わせていただきましたが、非のつけようのない美味しさです。
握り12巻
後半は握りを楽しみます。
九州を中心とした選りすぐりの旬のネタが並びます。
会話の際はにこやかですが、調理をされる時は真剣そのもの。
握りの手際を拝見していて、とても柔らかな握り方をされていたのが印象的です。
鯛
『鯛』。身がプリッと引き締まっています。程よい厚みで脂と旨みのバランスが最高です。
槍烏賊
モチっとした身に適度に塩が効いています。烏賊の甘みをさらに引き立ててくれます。
おかか巻き
『おかか巻』。こちら、とても衝撃的な味でした。
鹿児島県枕崎の「半枯節」というものを使用しているそうで、削りたてのものを炙りたての海苔で包んで提供いただきます。
「爪が入るほど柔らかい」と、大将が話していましたが、口に入れると普段食べる鰹節より柔らかい口当たりです。
そして、口の中に広がる香りがたまりません。
中落ち
『中落ち』。鮪の旨みがギュッと凝縮していて最高です。
旨みと脂のバランスが丁度いい。大将が「脂のキレが良いのが特徴」と言われていましたが納得です。
中トロ
『中トロ』。中落ちもそうですが、静岡県清水で水揚げされた南マグロを使用しているそうです。
口に含んだ瞬間、旨みと脂がじわっと口の中で溶けてなんとも言えません。また適度な酸味が心地よいです。
鯵
『鯵』は、「玄ちゃんアジ」を使用。玄ちゃんアジは玄界灘の荒波で育ち身が非常に引き締まっています。
厳格な基準があるそうで、一本釣りで釣り上げた26㎝以上の大きさのマアジをそう呼ぶそうです。
鯵にストレスを与えないように出荷するまで手で触れてはいけないのだとか。これを大将が目利きします。
雲丹
『雲丹(うに)』。鹿児島県産。手渡しで頂きます。
新鮮な雲丹の味をダイレクトに堪能できます。他の席のお客様から「こんなおいしい雲丹は初めて食べた」という声が聞こえました。実際、雑味が全く感じないのとシャリとのバランスが丁度よく、いつまでも口に含んでおきたい気持ちになります。
車海老
『車海老』。身が弾けるようにプリプリしています。
程よい火入れで海老の味をとても強く感じます。また、小石原焼の器との相性がよくとても美しい。
赤出汁
『赤出汁』。出汁を味わっていただきたいとの思いから敢えて味噌を控えめにされています。
「おかか巻き」と同じ半枯節をから出汁をとり、赤味噌は香りづけ程度。辛いイメージが払しょくされます。
帆立
『帆立』。北海道産の帆立の中から鮮度の高いものを選びます。
塩とレモンの相性が抜群で、濃厚な旨みをさらに引き立ててくれます。
穴子
『穴子』。長崎県対馬産の肉厚な穴子を「煮穴子」として提供。
フワトロッという表現はまさにこういう時に使うのだと思います。ジューシーかつ、上品な甘みが口の中に溶けていきます。
かんぴょう巻き
『かんぴょう巻』。自家製のかんぴょう巻き、あえて山葵を効かせています。
かんぴょうの甘さと山葵の辛みがクセになる逸品です。
玉子焼
枕崎産「半枯節」から丁寧に出汁をとり、糸島産の卵に合わせます。
ほのかに甘く、出汁の上品な風味が心地よい。
いなり餅
『いなり餅』。こちら、とても斬新。上品な甘みの揚げの中にお餅が入っています。
深蒸し茶
こちらは『八女の深蒸し茶』。八女でお茶の淹れた方を学んでこられ、目の前で丁寧に淹れてくれます。
食後の余韻に浸りながら所作を眺めていると「また伺いたいな」という気持ちが出てきます。
最初、2番目と抽出によって味が異なるとのこと。確かに同じお茶でも違う味わいなのがおもしろい。
「ゆげ製茶」さんの茶葉を使用しているとのことです。
以前も素敵なお店でしたが、リニューアルされた「鮨ちふね」さんは建物から器に至るまで細部にこだわりを感じます。
一品一品がおいしくて、全てが印象に残る味です。「この素材は何ですか?」と私が聞くたびに、気さくに教えて頂きました。帰り際、入り口まで見送っていただきましたが、最後の最後まで丁寧なおもてなし。とても気持ちが良い気分になりました。皆さんの「ハレの日」が素敵な時間になると思います。
鮨ちふね
住所:福岡市南区老司1-11-21 ※西鉄大橋駅からタクシーで10分ほど
予約:092-565-3456/080-3183-2009 昼と夜の二部制です。駐車場有2台(無料)