田植えが終わりました 「サ日記」

福岡など北部九州も梅雨入りしてるらしいが、今のところまとまった雨は降ってない。おれは家猫だから、外の天気はどうでもよいが、うちは福岡市内の住宅地で今も田んぼを作っているから気になるらしい。おととい19日田植えをしたぞ。

 まだ田植え前の田んぼ。水がそこそこ入っている。近くの道路の下を流れる用水路から入れるんだが、この水加減が非常に難しいらしい。多過ぎても少な過ぎてもいけないそうだ。

 チョビのやつが勝手に庭に出て田んぼに植える苗の見張り番をしていた。「よけいなことはせんでいい」と怒られていたが。

 すねて箱の横に隠れておる。「猫の手も借りたい」という言葉はうそで、おれもいつも田植えを手伝うつもりでいたが、「あっちに行っとけ」と追い返される。

 チョビのママもすっかりこの家の主みたいな顔して落ち着いて香箱座りをしている。今やチョビの方が大きくなったようだが。

 神様のほこらの中に入るのも得意技だ。お供えの水を飲んだりごはんを食べたりして怒られても平気だ。

 それにしても、チョビはいったいどこから脱出するのか。おれ同様、飼い猫は外に出たらいかんと口をすっぱくして言われているのに。そして、割とすぐ戻って来るおれと違って半日くらい帰って来ないこともあるから、家族が心配する。

 おれも出たいが、がまんして家で留守番だ。飼い猫は飼い主の言いつけを守らんとにゃ。おれも成長した。

 田んぼに向かう連中を見送る。

 ん、なんか来とる。

 大きなうしがピチャピチャと水を飲んでいる。

 このうしもどこで寝起きしてるか知らんが、すっかりうちの庭の常連だ。

 飼い主が一度戻ってきた。まだ水が多過ぎてこのままだと田植えだ出来んので、もうしばらく水を落とす(減らす)という。

 おれは新聞を読んで待っとるぞ。

 チョビはソファの足乗せの下に潜り込んで寝てる。裏の布を破って自分のねぐらにしたんで、ひんしゅくを買っているが、知らん顔だ。

 さて、再度飼い主が出て行く。見送りするが、また眠くなってきた。チョビはひと眠りして目がさえてきたようだ。

 飼い主はえらそうに、「田植えに行く」というが、実態は近所の専業農家の人に植えてもらっている。苗を「はい」と言って渡すだけなら、おれとチョビでも出来そうな仕事だ。

 最新鋭の田植え機でやるから、あっという間の仕事だ。着々と1反2畝(約1200平方メートル)の田に苗が植わっていく。

 45分ほどで一丁上がり。米作りを知らん人には苗が頼りなげに見えるだろうが、2か月もすれば、青々とした稲に育つ。

 おれはごはんを食べないが、最近ちょっとつまみ食いしてみた。やっぱ、猫にはかつおやまぐろの生えさの方が良い。

 チョビが腹をすかして、外を気にしている。

 チョビママとガラス越しに何か話しているのか。「そろそろ飼い主が帰って来んか」と言ってるのか。

 チョビのママは飼い主が近くに来ると、怖い顔をして「シャア」と威嚇するから、この家でこわがられとるぞ。もっと愛想よく出来んのか。おれも愛想はないが、飼い主にすがりついて可愛がられるすべは知ってるぞ。

 チョビも母親同様野良だったからか警戒心が強く、どうも人間に抱っこされてやろうとかいうサービス精神に欠ける。

 そのくせ師匠であるはずのおれにはちょっかいを出してくるから、時々指導を加えている。人間界ではパワハラと言われるところだが、おれたち猫界には野生のおきてがある。

 後輩猫は、一段下がって師匠を敬わんといかん。

 おっ、チョビママが帰ってきた飼い主を見とがめたようだ。泥で汚れた道具を洗っているのか。

 えさをもらえるまではまだしばらく時間がかかりそうだから、おれは今しばらく自堕落に休んでおくぞ。

 みなさん、こげな恰好で失礼しますが、次回の更新まで達者でにゃ。

※この記事内容は公開日時点での情報です。

著者情報

福岡市南区在住。サバトラ柄。熟年オス猫。雑種だが、アメショーの血が入っていると思っている。
ふてぶてしさが身上の甘え上手。
推定5歳か6歳の頃、今の飼い主宅に上がり込み飼い猫に。それ以前は不明だが、数百メートル離れた公園にいたとの不確かな情報。おととしの暮れ、孫娘のようなキジ白猫チョビが弟子入り。
世の中の動きに敏感なものの、とくに行動はしない。

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