自宅などで行える「中高強度身体活動(MVPA)」。継続時間10分未満の活動でも、積み重ねることで要介護化のリスクが下がることが実証されたと、福岡工業大学などが発表をしました。 ※MVPA:moderate-to-vigorous physical activityの略で、中高強度の身体活動のことを指します。
掃除機かけや子どもと遊ぶといった活動でも、積み重ねることで要介護予防につながる
これまで、「健康増進のための身体活動」については、WHO(世界保健機関)によって「1回あたり10分以上継続すること」が推奨されていました。国内でも多くの健康施策でこのWHOの基準が採用されていますが、高齢者にとって「1回10分以上継続」の身体活動は、心理的にも肉体的にもハードルの高いものです。 新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、さまざまな「健康増進」や「要介護予防」を目的とするイベント・教室の開催が中止になるなど、高齢者が健康を維持するための活動が難しくなってきています。 こうした中で今回の研究結果からは感染予防対策を講じつつ日常生活の中でスキマ時間などを活用して少しずつでも「中高強度の身体活動」を行うことで、要介護リスクを軽減できる可能性が明らかになりました。 ・「少しでも」「出来る範囲で」体を動かす ・在宅であっても生活活動を含む日常の身体活動量を増やすことで健康は作れる この2点がポイントです。 初めて実証データをもとに明らかになった研究結果がこちら。
研究の内容
この研究では、福岡工業大学が篠栗町など行っている「篠栗元気もん調査」より、平成23年時点に65歳以上だった1,678人を対象として、調査開始時点でのMVPAとその後6年間の要支援・要介護認定との関連を検証。 解析の結果、継続時間10分未満のMVPAの1日あたりの平均時間が長くなるほど要介護化リスクが低くなることが明らかになりました。
新型コロナウイルスの感染拡大防止に伴う外出自粛で、多くの人が家の中にとどまり身体活動が減少することで、身体と精神の健康に悪影響が生じる可能性があります。このような状況下での「高齢者の健康づくり」は、毎日の行動を見直すことで維持できると言うことです。 【MVPA相当の身体活動の例(国立健康・栄養研究所「身体活動のメッツ表」より)】 ▼運動 ・社交ダンス・バレーボール(練習)・自体重を使った軽い筋力トレーニング など ▼生活活動 ・犬の散歩・掃除機かけ・階段の昇降・子どもと遊ぶ など
福岡工業大学×福岡県篠栗町 ~篠栗元気もん調査~
「篠栗元気もん調査」は、より良い介護予防事業を行うための知見獲得を目的として、福岡工業大学や篠栗町などが中心となって行われている調査です。今回の研究では、三軸加速度計内蔵の活動量計により得られた客観的なデータを用いることで、MVPAおよび継続時間を厳密に規定。その上でMVPAと要支援・要介護認定との関連がより正確かつ詳細に評価されている点が、今回の研究の大きな特徴です。