数十年前、私がまだ大学生だった頃。夏休みに10人くらいの仲間でレジャープールへ。皆で遊んでいると、仲間内の女の子が突然男の子に抱きついたのです! いったい何が!?
夏休みのお約束! 皆でプールへ出かけよう!
大学時代の夏休み。10人ほどの仲間で、隣県の大型レジャープールに日帰りで出かけました。流れるプールや数種類のウォータースライダーなど、地元ではわりと有名な施設です。
当日は車3台で早朝出発し、開館と同時に到着。皆、浮き輪やビニールボール持参で準備万端。各々はりきって、ウォータースライダーなど各スポットを楽しみました。その後、流れるプールに皆で移動。私は浮き輪の中に収まり、Rちゃんは私の浮き輪のフチに軽く腕を乗せて、一緒にぷかぷか浮きながらおしゃべりしていました。
そして突然事件は起こった! いきなりの大胆パフォーマンス
そのとき、後方で何か声が聞こえました。振り向くと、今日一緒に来ているS君が、何やら妙にバタついている姿が。そして驚くことに、私の隣にいたはずのRちゃんが、必死な表情でS君の細く白い体にがっつり抱きついているではありませんか。瞬間移動!?
「何あれ! どういうこと!?」いきなり、鼓膜が破れんばかりの怒鳴り声で私の真横に出現したのは、S君と少し前からつき合い始めたばかりのY美さん。夏休み突入前に、彼女から告白したそうです。
Y美さんの鋭い視線の先には、S君とRちゃんが抱き合った状態のまま水面に浮かんでいる姿が…。周りに散って遊んでいた他の仲間たちも、ふたりの様子を遠巻きに見つつ、Y美さんの様子も気になりソワソワ。これってもしかして、仲間内の三角関係ドラマの始まり!?
なんて紛らわしい勘違い!
まもなくプール点検のサイレンが鳴り、プールの中の人たちが全員プールサイドに上がりました。レジャーシートとパラソルで場所取りした一角に、仲間たちが戻ってきました。シートの端に座り、顔をこわばらせているY美さんを、皆チラチラと気にしています。
ほどなくして、けらけら笑いながら、RちゃんとS君がにぎやかに戻ってきました。そこに漂う空気の重さにも気づかず、S君は照れくさそうに言いました。
「僕、溺れていると勘違いされちゃいました!」Rちゃんが笑いながら続けました。
「だってフォームがあまりにひどかったから。あっ、ごめん私ったら失礼なことを」
みんな顔を見合わせてキョトン。そしてようやく理解しました。そういえばRちゃんは高校時代、水泳部に所属。泳ぎが得意な彼女の目には、はしゃいで泳ぐS君のフォームが下手すぎて、溺れていると勘違いして救助のため抱きついたのでした。
無事、三角関係でもなんでもないことが分かり、重い空気は一掃され、
「Rちゃん泳ぎがうまいっていいね、美しいフォームのコツ教えて」などと大盛り上がり。誰かが
「大胆告白かと焦ったよ」というと、Rちゃんは無邪気に
「確実に溺れているから絶対助けなきゃって、そりゃもう必死でした」と答える始末。
ふと気づくと、Y美さんはバツが悪そうに、のんきな顔をしたS君の横に立っていました。大好きな彼が楽しく泳ぐ姿を、溺れていると勘違いされていたとは…。自分もまた勘違いして嫉妬していたとなると、複雑な心境でしょう。
S君はY美さんのために、美しいフォームも習得してほしいな。コーチはRちゃんだったらちょっと面白いかも。などと、私はひとりでこっそり三角関係に続く想像を膨らませてしまったのでした。
(ファンファン福岡公式ライター/山ナオミ)