キリスト教式の結婚式では、花嫁がチャペルの入り口から祭壇までのバージンロードを歩く姿が印象的です。エスコート役は花嫁の父親が務めるのが一般的ですが、両親が他界していた私は父親以外の男性にエスコートを頼みました。結果、思った以上のサプライズ感を演出できました。その体験を紹介します。
他界した父の代わりは誰にする?
毎年、結婚記念日が近づくと、自分たちの結婚式を思い出して、温かい気持ちになります。特に心に残る出来事の一つがチャペルへの入場シーンです。一般的には、花嫁は父親にエスコートされながらバージンロードを歩みます。でも、両親は既に他界しており、エスコートを頼むことはできませんでした。
じゃあ、一体誰にお願いすればいいんだろう? お世話になった叔父? それとも、1人で歩いて入場する? いっそのこと、最初から夫と二人で? いろいろと考えてみましたが、どうもしっくりきません。
そんな時、たまたま電話をくれたのが6歳年下の弟でした。話をしているうちに、せっかくなら弟と一緒に入場したい! という気持ちがむくむく芽生えてきました。弟は、両親が他界してからというもの、支え合いながら困難を乗り越えてきた一番近い身内なのですから。弟は私の提案を二つ返事で受け入れてくれ、その場でエスコート役は弟に決定したのでした。
花嫁以上に衆目を集めてしまったそのワケは
そして、結婚式の当日。モーニングを着て迎えに来てくれた弟は、とても頼もしく見えました。
子どもの頃はいつも私が弟の手を引いていたような気がするのに、いつの間にか弟も成長していたんだな。そんなふうに思い返すと、自然と涙があふれてきました。
「姉さん、楽しんで」 弟はそう言って腕を差し出すと、上手にエスコートしながらバージンロードを歩いてくれました。
私は緊張のあまり、参列者の様子をじっくり見られなかったのですが、挙式後に聞いた話では、チャペルの扉が開いて弟と2人で入場した時、会場は騒然となったそうです。
職場の同僚は
「え? この若い人が夫?」と戸惑い、私の身内は
「弟が父親そっくり(に育った)!」と感動。さらに、私の友人は
「弟さん、かっこいい~!」と色めき立つ状況。結婚式の主役であるはずの花嫁の私よりも、エスコートした弟の方が衆目を集めてしまったのでした。
弟は披露宴でのあいさつ回りで、いろいろな人から褒めらたり温かい声をかけてもらえたりして、とてもうれしかったと話していました。
後日、お世話になった結婚式場にお礼を言いに足を運ぶと、私たちの結婚式の写真が飾られていました。それは、弟から夫へ、花嫁のエスコートをバトンタッチするシーンの写真でした。改めて写真を見て、手前みそながら感動的でいい式だったなと実感したのでした。
そして今も、思い起こすたびに弟への感謝の念を抱かずにはいられません。
(ファンファン福岡公式ライター/minimix)