私が小さい頃、明治生まれの祖母は、ちょっと怖くて不思議な話をたくさん聞かせてくれました。少しずつ紹介していきます。
祖母が十歳の夏、日がかんかんに照っている昼間、自分の家で怪異に遭遇した話。
家族全員、朝早くから畑仕事に出ていたが、昼食を準備するために祖母は一人で家に戻った。
籠(かご)におにぎりと漬物を入れ、薬缶をおくどさん(かまど)にかけようとした時、視界の端で何かが動いた。
向き直るとそこには大きな鼠(ネズミ)がいて、こちらを見ている。
祖母は鼠から目が離せなくなり、体も動かず声も出せなくなった。
鼠が少しずつ近づいてくる。
「あぁ見てはいけない!」…そう思えば思うほど鼠の目以外は見えなくなり、息もできなくなった。
「どうした?」
心配して見に来たおじいさんの一声で息をつけ、動けるようになった。
鼠は、もうどこにもいなかった。
ほんの2、3分くらいと感じていたが、小一時間経っていたそうだ。
子(ね)年生まれの祖母はそれ以来、大の鼠嫌いになった。
祖母が語った不思議な話・その参拾陸(36)「石が憑く」
私が小さい頃、明治生まれの祖母がちょっと怖くて不思議な話をたくさん聞かせてくれました。少しずつアップしていきます。 イラスト:チョコ太郎 祖母が八歳の夏の...
祖母が語った不思議な話・その参拾伍(35)「餅撒き」
私が小さい頃、明治生まれの祖母がちょっと怖くて不思議な話をたくさん聞かせてくれました。少しずつアップしていきます。 イラスト:チョコ太郎 私は幼い頃、「餅...