福岡の書店員さんに福岡ゆかりの本を紹介してもらうファンファン福岡の「福岡キミスイ本」シリーズ。47回目はメトロ書店 福岡千早店(福岡市東区)の持田美貴さんを訪ねました。あわせて、この時期に読みたい話題の7冊を紹介します。
舞台は太宰府 いろいろな正義の形が見えるミステリー
「此の世の果ての殺人」 荒木あかね著
―こんにちは! 今回持田さんが紹介されるのはどんな本でしょうか。
荒木あかねさんの「此の世の果ての殺人」(2022年8月講談社発行、1,815円、税込み)です。作者が福岡県出身で、九州大学の卒業生。第68回江戸川乱歩賞を最年少で受賞しました。表紙を見るときれいな物語を想像しがちですが、中身は本格ミステリーです!
―この本との出合いは?
“江戸川乱歩賞を最年少で受賞した小説”というところが気になり、手にしたのがきっかけです。読み進めると舞台が太宰府だったので親近感がわきました。いろいろとどんでん返しが続いていくので、さすがは江戸川乱歩賞だと感じました。
―作品のどんなところに面白さを感じましたか?
この作品は、終末世界とミステリーを合わせたような架空の物語。日常を淡々と送る女子大生と、教習所の教官で元刑事のイサガワが地球最後の謎解きに奮闘するというストーリーです。そんな“正義”が消えた世界でも、倫理観を持って行動する人の姿に胸を打たれました。それぞれが自分の正義感を貫くさまが見どころです!
―太宰府が舞台ということですが、福岡や太宰府らしさを感じたところはありますか?
車を運転しているシーンで、太宰府天満宮の近くを通る場面があり、リアルな情景が文章として結構出てきます。太宰府周辺に詳しい人は引き込まれるのではないでしょうか? また、太宰府を観光地ではなく“田舎”と表現しているところが、福岡県出身の作者らしい表現だなと思いました。
―どんな人にオススメしたいですか?
京極夏彦(きょうごくなつひこ)さんが好きな人にオススメです。本格ミステリーが好きな人はかなり満足できる作品じゃないかと思います。あとは福岡の人ですね。太宰府に行ったことがある人は多いと思うので、あの町でこんなことが…と想像しながら読んでもらうとより楽しめるのではないかと思います。
―メトロ書店 福岡千早店について教えてください。
当店は千早駅開業とともにオープンし、現在約5万3,000冊を取り扱っています。シルバー世代向けの人文書をはじめ、学生向けの学習参考書や実用書、子育て世代向けの絵本などに力をいれています。その他文具も取りそろえ、今後さらに充実させていく予定です。
―ありがとうございました! 現在24歳の作者が描く本格ミステリー小説、気になります…! 続けて話題の7冊を紹介します。
「へんてこな生き物」【中央公論新社】
川端裕人著/1,320円(税込み)
かわいい小動物ハニーポッサムは巨大な睾丸の持ち主、水棲哺乳類アマゾンマナティが「森」の中を飛ぶ(?)、手のひらサイズの巨大な虫など、常識を軽く超えてくる生き物たちの「へんてこ」を活写。信頼厚いサイエンスライターが新しい科学的なトピックを交えて約50種を楽しく紹介します! 200枚超のオリジナル写真も掲載。
「思春期のトリセツ」【小学館】
黒川伊保子著/946円(税込み)
12歳までは子ども脳、15歳からは大人脳、13歳から15歳までの3年間は子ども脳から大人脳への脳の移行期に当たります。思春期の脳は、不安定で制御不能のポンコツ装置とか。そのポンコツ脳で、さまざまな困難を乗り越えていかなければなりません。しかも、ここで親子関係に亀裂が入ってしまうと、一生の傷になる可能性も。人生で最も過酷な数年間に寄り添う一冊です。
「思い出リゾート/【別冊】ロケの手応えゼロだった『水曜どうでしょう』の新作はなぜおもしろかったのか」【光文社】
嬉野雅道著/2,970円(税込み)
「うれしー」こと嬉野雅道さんの人生哲学が詰まった珠玉の全15話をまとめた「思い出リゾート」。さらに、光文社新書をオマージュした別冊付録「ロケの手応えゼロだった『水曜どうでしょう』の新作はなぜおもしろかったのか」では、カメラ担当ディレクターの著者による「水曜どうでしょう」2020年新作の裏側を紹介します。本作では撮影中、大泉洋さんが「オレたちはもうジジイだよ」とつぶやいたほどロケが難航。そして2年近くが経ってようやく始めた編集で再発見した魅力を語ります!
「ぎおんご ぎたいご にゃんこ」【青春出版社】
沖昌之著/1,980円(税込み)
ベストセラー「必死すぎるネコ」の著者であり、SNSや雑誌「猫びより」などでも活躍中の猫写真家・沖昌之さんの“激写系”猫写真に、ぴったりの擬音語・擬態語を組み合わせた手のひらサイズのねこ辞典。さまざまな表情・ポーズ・生態を見て読んで何度も堪能できる一冊です!
「世界がぐっと近くなるSDGsとボクらをつなぐ本 ハンディ版」【学研】
池上彰監修/1,430円(税込み)
漫画と図解でSDGsをわかりやすく解説。2030年までに達成すべき17の目標と、社会の今がわかります。すぐに実践できるヒント集や、池上彰氏の解説など、自分事として理解するための工夫がたくさん盛り込まれた本書。新しいグローバル・スタンダードを知り、つかむための一冊です。
「増補改訂版 親の介護をはじめたらお金の話で泣き見てばかり」【双葉社】
鳥居りんこ著/1,485円(税込み)
「介護あるある大ピンチ」を招かぬためのアッと驚く裏ワザが満載!「親の具合が悪くなる前に最低限やっておくべきチェックリスト」など今すぐできる超実戦テクを駆使すれば、1円でも安く済み、1円でも多く取り戻せます。知らなきゃ泣き見る「介護とお金の基礎知識」、必読の最新版です。
「中山間地域ハンドブック」【農文協】
中山間地域フォーラム編/1,980円(税込み)
人口減少・高齢化をいち早く経験した中山間地域は、課題先進地であり、新しいライフスタイルとビジネスモデル提案の場です。中山間地域の歴史とデータからみた現況をおさえた上で、中山間地域における諸課題を36テーマ別に問題の所在とそれに関わる取り組みをコンパクトにまとめ、提言とあわせて再生の道を展望します。
いかがでしたか。読書の秋に向けて、本を開いてみては。次回もお楽しみに。