数年前の7月、私の住む地域に大きな台風がやってきました。その影響で大規模停電が発生。0歳と4歳の子どもがいるのに夫は出張で不在。復旧のめどはたたず。妹宅まで車で避難することを決意して、いざ走り始めると道路は信号も止まっていて…。
夏の台風は突然に
7月のはじめに大きな台風がやってきました。私は当時0歳と4歳の子どもたちと自宅で台風が過ぎ去るのを待っていました。警戒しながらテレビを見ていた14時頃だったでしょうか、突然家の電気が消えて驚きました。
ブレーカーを動かしても反応はありません。テレビもつかず困っていると、実家からメールが。実家は車で1時間ほどですが、停電しているというのです。これは規模が大きい停電だと気づいた私は、情報を集め始めました。
同じ市内の知り合い宅はすべて停電、けれど隣県の妹宅は停電の影響を受けていなかいことが分かりました。妹宅は自宅から車で20分ほどです。わが家に0歳児がいると知っている妹は、すぐ避難してくるように言ってくれました。
自宅はエアコンもつかず室温はどんどん上がっていたので、じっと復旧を待っていては幼い子どもたちが熱中症になる危険も… 悩んでいる暇はありません。出張中の夫に、停電と妹宅に避難することを伝えると、数日分の荷物を用意して子どもたちを車に乗せ、まだ雨風がおさまらない中、車を発進させました。
道路はクラクションが鳴り放題
道路に出てまた驚きました。なんと信号まで停電の影響を受け止まっています。どの車もスピードを落として、恐る恐る車を走らせていました。
妹宅まで、大きな交差点を通り過ぎればすぐの所までたどり着きました。直進車と曲がりたい車、相手の出方を見ながら、時間をかけて交差点を通り過ぎています。
交差点はクラクションが鳴り響いていて、私は右折の列に並びながら、周囲の車に迷惑を掛けたらどうしようか不安でした。外は風が強く、軽自動車だったので揺れが激しく、ますます不安は大きくなっていきます。
ついに車が交差点に差し掛かります。信号が消えている中、左右からも対向車線からも車が通り過ぎていき、私は身動きが取れません。「どうしよう… 全然出られない」なかなか勇気が出ず、私は緊張と不安がピークに達していました。
すると、右側から来た一台のトラックが停止線でピタッと止まってくれたのです。合わせるように左側から来ていた他の車も止まりました。
トラックがクラクションを軽く鳴らしたので、ドライバーを見ると中年の男性が笑いながら手で「行け」と合図してくれているのが見えました。私はクラクションで返事をして会釈すると、ゆっくりと車を発進させます。
左側の乗用車にも会釈すると、「いいよ」と言ってくれるかのようにクラクションが響きました。
ずっと聞こえていたクラクションは、こんなにも優しい音だったのだと気づきました。交差点を無事に通過し、いつもは20分で行ける妹宅まで1時間もかかりましたが、無事に着いた時には気遣ってくれたドライバーへの感謝の気持ちでいっぱいになりました。
災害への備えが大切
結局、自宅の停電は翌朝に復旧しましたが、それ以上時間がかかった友人宅もあり、避難してよかったと感じました。
災害による影響はいつどのように起きるのか予測が難しいものです。皆さんは、備えはしていますか? 私は改めて備えの重要さに気付き、紙おむつやレトルト離乳食の買い置きなど多めに常備するようになりました。災害は起きてほしくないですが、優しいクラクションはもっと増えるといいなと思います。
(ファンファン福岡公式ライター / ましまろ)