こんにちは。久留仁譲二です。弟の中学時代の同級生・村上禎人(よしと)さんが、このたび錫(すず)でグラスなどを作る職人として一歩を踏み出しました。元々は、福岡玉屋のデパート勤務。50代半ばを越え、新たな世界に挑戦します。
博多リバレインの1階には、「HAKATA JAPAN」という名前の通り、和の工芸品を紹介、販売する粋なスペースがあります。この7月1日から7日まで「錫のうつわ展」という展示即売会が開かれました。 作品の多くは、「はかた錫工房」の作家として長く活躍される田中勝(まさる)さんの手になるものですが、最近錫職人として活動を始めたばかりの村上禎人さんのグラスの作品も「博多デビュー」しました。 村上さんは、福岡市の中学時代の私の弟の同級生です。コロナが大騒ぎになる前の2月に3人で飲んだときに、「錫職人になる」と聞いて驚きましたが、ついに作品が見られるというので、リバレインを訪ねてみました。
上の写真は、今回の展示「錫のうつわ展」の案内ハガキの裏側。「~夏の食卓を涼やかに~」がテーマです。表面に、説明文が載っており、錫は浄化作用やイオン効果が高く冷酒やビール等の器として最適だそうです。銀のように黒ずんだり、鉄のようにさびないので、手入れが楽なことも魅力ですね。 夏の食卓に合うグラス、酒器、銘々皿、一輪差し、アクセサリー、キーホルダーなどの小物などが展示販売されました。
このあたりは、田中さんの作品です。ベテランのきめ細かい技が冴えます。
上が村上さんが作ったグラスの作品たち。 ここで、村上さんのことをご紹介します。 福岡大学を卒業した後、地元の老舗百貨店・玉屋に入社、主に広報宣伝の部署にいました。中学高校時代はロック、大学ではジャズにはまった音楽好きの村上さんは、自ら作曲もする特技を生かしてデパート館内で流すBGMも作りました。 地元の人はご存じのように、その後玉屋は長い歴史に幕を引き、村上さんも転職を余儀なくされました。50歳代半ばになってから、玉屋時代の大先輩・田中勝さんと縁あってこの道に進まれたとのこと。定評のあった美術展などのイベントに多く関わった田中さんは、持ち前の器用さを発揮し、独学で「錫(すず)」という素材の魅力を生かす工芸の世界を切り開いていました。
↑これが、田中さんの工房を再現した道具の様子です。手作業で鋳型を作り、鉄などよりは低温で溶ける錫を流し込み加工するのです。箸置きなど小さく繊細な作品も多いので、出来上がりを想像して型を作るのは、相当難しいだろうと思われます。
田中さんに師事することになった村上さんは、今のところグラス専門というところでしょうか。 先ほど書いたように、手作業で型を作るのは難易度が高いため、現在コンピューターを使った製作というやり方で作業しているそうです。
さて、上は村上さんの作ったグラスです。「BB ROCK GLASS」と紹介してありますが、これは何でしょう。 実は「BB」は、アメリカのバンド、ビーチボーイズのことです。先に書いたように、村上さんは大の音楽好き。作品を作るにあたって自身の個性、特徴を打ち出すために「あるミュージシャンの曲をイメージしながら」作業し、それを作品のタイトルにする、というユニークなやり方を編み出しました。工房は自宅内なので、実際に曲を聴きながら、作ることも可能でしょう。
こちらは、「エディ・コクラン」。「サマータイムブルース」などのヒット曲で知られます。
そして、こちらが「サム・クック」。アメリカのソウル歌手です。値段が手ごろなこともあり、私が買い、日本酒好きの知人に差し上げました。 手のひらに収まるくらいのコンパクトさで冷酒をちびちび楽しむのに最適でしょう。知人がサム・クックをご存じかは不明で、説明もしてません。
最後に紹介するのが、ニューヨークのパンクロックバンド「ラモーンズ」です。わりと古いアメリカのポップスが好きな村上さんにしては、珍しい選択です。ラモーンズ好きな方のご依頼で作ったのでしょうか。
「はかた錫」の作品、いくつかご紹介しましたが、いかがでしょうか? 技術と経験で洗練された「師匠」の田中勝さんの作品、音楽というプラスアルファの要素も取り入れた新鋭の「弟子」村上禎人さんの作品。 興味をお持ちになられた方は、まずは、下記のHPをのぞいてみてください。