福岡のラーメンブロガー、ラーメン大好きガーソーさんがお届けするラーメンレポート。 福岡の新進気鋭のラーメン店主会「令和維新会」特集2店目、志免町の「六味亭」。 昔からラーメンが好きだった「居酒屋六味旬蔵」を営む和食の職人が、ひょんなことからラーメン店を始めることになり、自分の原点を突き詰めた結果、あご出汁を使った中華そばと担々麺のお店「六味亭」をオープンさせ、人気のお店となったその経緯を取材しました。
昔はラーメン店をオープンさせるなんて思っていなかった
あご出汁中華そばと魚介担々麺が人気の「六味亭」。 今や福岡でも有名なお店となっている繁盛店ですが、その大将であり、「居酒屋六味旬蔵」も経営している銘田俊介さんにお話を伺いました。 穏やかな笑顔が印象的な銘田さん、親戚にも和食のお店をしている人がいたし、とにかく食べることが好きだったそうで、料理の道に入ること自体に迷いはなかったと言います。 また、凝り性でとことん突き詰めようという研究熱心な性格でもあり、そういう点でも料理人に向いてらしたんでしょうね。 ラーメンは昔から好きで、あちらこちらと食べ歩きもしていたとのことでしたが、それでも自分がラーメン店をすることになるとは、4年前までは全く想像もしていなかったそうです。
独立して「居酒屋六味旬蔵」を開くまで
そんな銘田さんは高校時代から飲食店でアルバイトをしていたそうで、高校卒業後からは親戚がされていた和食居酒屋に、それから魚屋、旅館、割烹店などを経て、21歳から和食の本場関西へカバン1つで乗り込み、大阪の調理師会に入って有馬温泉の高級旅館や京料理の有名店に勤務し腕を磨いた後。 当時勤務していたグループ会社の博多店への出向を契機に福岡へ戻り、その後移籍したいけす料理店で料理長を務めた後に退社、37歳の時に独立して「居酒屋六味旬蔵」を須恵町にオープンさせます。 18年以上和食の料理人として修業を重ねて独立された上で、地域に根付いた営業スタイルを行いつつ、大将の銘田さん自ら和食の職人としてお客様の目の前で料理の腕を振るい、開店当初からお店は繁盛。 でも、まだこの時点でもラーメン屋を開くことなど、想像もしていなかったそうです。 ちなみに、店名の六味。 辛味、酸味、甘味、苦味、鹹味(塩味)の五味に加えて、精進料理は淡味(たんみ)を加えた六味で構成されています。 淡い味=ごまかしがきかない味=いつわりのないものを作るという意味と、基本の味覚五味に+1で真心や癒しの空間、気持ちの良い接客を加えたお店にしたいという意味があるそうです。
「居酒屋六味旬蔵」から二店舗目のラーメン店「六味亭」へ
豚骨ラーメンと地元への愛からお店を借りることに
和食と言えば出汁。 独立当初から手作りにこだわり、特に出汁は相当にこだわって作っていたそうです。 その出汁で醤油ラーメンを作れたらいいなと考えるようになったのは独立して数年後、それも具体的なことは全く考えていなかったという銘田さん。 転機は今から約3年前、「六味旬蔵」の近くにある吉原名店街にあった老舗豚骨ラーメン店「三洋軒志免店」が、大将夫妻ご高齢の為引退、という話をたまたま管理している不動産屋さん経由で聞いた瞬間でした。 昔から通っていた思い出のあるラーメン屋さんがあった場所、銘田さんは話を聞いて、「三洋軒志免店」を残さなければと何かに突き動かされるように、自分が借りますと勢いよく宣言したそうです。 「三洋軒志免店」の跡は地元の人間が守らなきゃという変な使命感と話を聞いたご縁で、勝手に盛り上がってしまったんだそうです。 こうしてラーメン屋をしようと思っていたわけではなく、ラーメン屋跡を借りてしまったとのこと。
「六味亭」の誕生
借りてしまったからには何かしないといけない。 元々豚骨ラーメンが好きで食べ歩いていたし、借りるお店は豚骨ラーメンの名店の跡。 だけど、豚骨ラーメンが好きだからこそ、自分にはその知識が無いから作れないし、「三洋軒志免店」の跡で豚骨ラーメンを出すのは恐れ多い気がしたと銘田さんは言います。 そこで、お店は長年の営業でかなり傷んでいた為全面改装を行い、でも入口の扉はそのまま残し、吉原名店街の電光看板は三洋軒のままにして、ここに「三洋軒志免店」があったことを残すことにして。 自分がラーメンを作るなら和出汁ベースしか出来ない、でも、出汁を作ることは出来ても、ラーメン作りは経験が無いため、ちゃんとラーメンを作る為に勉強をし、とにかく試作を繰り返していきます。 ちょうどそんな時期に私が開催した超実践的ラーメン店開業セミナーを受講しに来られて、そこでご縁を頂いて試食に参加させて頂いたり、銘田さんのイメージの文書化をお手伝いしたりがありました。 出汁がよくてもラーメンに仕上がるかは別の話なんですが、勉強の成果か結果的に完成した中華そばと担々麺は素晴らしい完成度。 長らく試行錯誤してしっかり作り込んだからこその出来栄えでしたね。 こうして、「三洋軒志免店」という名店の跡に、その歴史があった事実は残しつつ、新たに博多あご出汁ラーメンと魚介担々麺を出すラーメン店が出店することとなりました。
「六味亭」のラーメン
博多あご出汁中華そばと魚介担々麺の特徴
「六味亭」のラーメンは博多あご出汁中華そばと魚介担々麺を主としています。 和食職人の博多もんが作る中華そば、ということで博多雑煮に使われるあご出汁と水炊きに使われる鶏ガラスープを合わせ、そこに自家製鯛の骨を焼いて煮出した熟成醤油や生醤油などこだわりの三種の醤油をタレとして合わせることで、よりあご出汁を際立たせ、キレがありつつも博多の人間が食べればわかる懐かしい味わいに仕上がっています。 上五島産の炭火手焼あご(トビウオ)を大量に使用したあご出汁が効いていて、大将の和食で培った経験を一杯のラーメンに凝縮した、優しい味わいながらインパクトありのスープです。 麺は「製麺屋慶史」謹製の熟成ちぢれ麺。 通常の麺と比べてとても手間がかかる麺で、しっかりとした食感とのどごしの良さが特徴。 また、鶏節がのせてあることで、後半に鶏だしが出てきてまろやかに味わいが変わる仕掛けもポイントです。 これに梅とわかめをのせた梅わかめそばも人気。 魚介担々麺は鶏ガラベースに魚介を加え、そこに和風ならではの胡麻醤油を聞かせることで、和風ながらしっかりと美味しい担々麺に仕上がっています。 芝麻醤を使用していないことで、辛味とコクがあるのにスッキリしているのも特徴です。 担々麺にはあごの身をほぐして加え、肉味噌風に味付けしたあごそぼろがのせてあります。
令和維新会への加入
有名な老舗豚骨ラーメン店の跡に中華そばと担々麺のお店がオープンしたということで、当初は興味本位からのご来店も多かったそうですが、現在は地元に根付いて昼時には行列が出来る繁盛店となった「六味亭」。 元々ラーメンが好きで、一ラーメンファンとしてあちらこちらと食べ歩いていた大将の銘田さんは、それでも自分がラーメン屋であるという意識がなかなか芽生えず、ラーメン屋と名乗って良いのか、しばらくは自信が無かったそうです。 自分が作ったラーメンの味には自信があっても、昔からラーメンが好きで食べていただけに、福岡ではラーメン=豚骨という意識が強かったからという理由もあったのでしょう。 その中で話題のお店ということで伺い、仲良くなった馬出の「駒や」さん。 ラーメン屋さんの集まりに顔を出して交流していく内に、自分が作り上げた一杯に自信を持って提供すること、そして他のラーメン屋さんをリスペクトすることが大事で、その為にも自分自身がちゃんとラーメン屋なんだと自覚しなければと思ったそうです。 そこから「駒や」さんの言うところの、福岡やラーメンを盛り上げたい=いずれ維新の風を吹かせられる存在になりたいと、令和維新会に加入し、今では会計を担当されています。 2020年は法人の設立や、「居酒屋六味旬蔵」のリニューアルを行いつつ、コロナの影響で大変だと言われてましたが、それでも今日も六味亭は豚骨ではないラーメンを求めてくるお客さんがたくさん来店されていて、人気に陰りは無いようです。 大将である銘田さんの生来の真面目さと人当りの良さがラーメンに表れているのか、優しい味わいの博多あご出汁中華そばと魚介担々麺。 これからも志免町で中華そばや担々麺と言えば「六味亭」と、地域に根付いたお店として繁盛されていくと思います。 また、令和維新会として福岡及びラーメン業界へ貢献していきたいとも言われてますので、その点でも注目ですね。
まとめ
和食の職人がどうして中華そばと担々麺のお店「六味亭」をすることになったのか、「六味亭」の中華そばと担々麺のこだわり、そして令和維新会に加入しての今後の展望についてを、ラーメン大好きガーソーさんとして取材、記事にさせて頂きました。 次回は第3店目として、箱崎の鶏白湯ラーメン店「絶好鳥」を取材します。
施設名:あご出汁中華そば 六味亭 (ロクミテイ)
住所:福岡県糟屋郡志免町志免東2-1-10
営業時間:11:30~15:00(L.O)18:00〜21:00(L.
O20:30)
日曜営業
定休日:月曜日
営業時間・定休日は変更となる場合がございますので、ご来店前に店舗にご確認ください。
アクセス:須恵中央駅から1,514m