突然ですが質問です。あなたの夫は、会社員ですか? 自営業ですか? 実はこれ、遺族保障を考える上でとても重要なポイントです。夫の働き方によって、万が一の時にもらえる「遺族保障」には大きな差があり、場合によっては全くもらえないことも。ファイナンシャルプランナー(FP)歴10年の私が分かりやすく解説し、疑問や不安についてもアドバイスします。
ここがポイント! 遺族保障の違い
夫の働き方による遺族保障の違いは、加入している年金制度の違いから生じます。日本では、20歳以上の人は誰もが「国民年金」に加入する仕組みですが、これに加えて、会社員や公務員などの給与所得者は「厚生年金」に加入します。 公務員の場合、以前は「共済年金」に加入していましたが、2015(平成27)年から厚生年金と一元化されました。 自営業者やパート、アルバイトなどで厚生年金の加入要件を満たしていない働き方の場合は、「国民年金」のみです。 年金制度を説明する際、よく「2階建ての年金」などといわれます。これは1階を国民年金、2階を厚生年金という階層構造に例えているのです。 2階建て年金の給与所得者(会社員など)の場合、万が一の時は1階部分も2階部分も役に立ちます。受給条件に差はありますが、どちらにも条件が該当すれば、どちらからも年金をもらうことができます。 一方、自営業者などの場合は、最初から1階部分しかありません。国民年金(基礎年金)の受給要件を満たさない場合は、何ももらえないということになります。
夫が会社員、公務員など「給与所得者」なら
まずは、夫が会社員・公務員など「給与所得者」の場合です。 18歳までの子どもがいる場合は、遺族厚生年金と基礎年金のどちらも受給できるので安心です。 問題は、子どものいない妻の場合です。子どものいない妻も、夫が会社員などで厚生年金に加入している場合は、遺族厚生年金をもらうことができます。ここは、国民年金のみの世帯との大きな違いです。 しかし、夫の死亡時に、妻が30歳未満で子どもがいない場合は、受給期間の上限があります。最長で5年間しか遺族厚生年金を受給できません。 夫の死亡時に妻が30歳未満でも子どもがいる場合や、妻が30歳以上の場合は、その後一生涯にわたって遺族厚生年金を受け取ることができます。
どう備える?
子どものいる世帯や、すでに妻が30歳以上の世帯の場合は、遺族厚生年金の受給対象なので、対策を急ぐ必要はありません。 一方、妻が30歳未満で、まだ子どものいない世帯は、要注意です。上限5年で遺族厚生年金が打ち切られるのは、大変心細いのではないでしょうか。 ライフスタイルの多様化が進み、10代同士の夫婦も珍しくありません。日々の生活費で手いっぱいで、生命保険に加入する余裕がない場合もあります。しかし、遺族保障として大きな金額の備えをするには、掛け捨ての安価な死亡保険でよいので、加入しておくことをお勧めします。 例えば、20歳の男性で、掛け捨て型定期保険(死亡保険金1000万円)に加入すると仮定した場合、月額1,000円未満で加入できる場合がほとんどです。保険は、若くて元気なうちに加入することが一番の節約につながります。この機会に検討してみてはいかがでしょうか。
夫が自営業の場合は
夫が自営業の場合は、注意すべきポイントがいくつかあります。 まず、子どもがいない場合(または子どもが既に18歳以上の場合)は、夫の死亡時に「遺族基礎年金」がもらえません。 自営業の夫が、加入している年金制度は、国民年金だけです。国民年金からもらえる遺族年金は「遺族基礎年金」ですが、その支給対象は「子、または子のある妻」です。 年金制度における「子」とは、18歳までとされています(障がい等級のある場合は20歳まで)。つまり、子どもがいない妻や、既に18歳以上の子どもは支給対象ではなく、遺族給付としてもらえるお金はありません。
どう備える?
遺族基礎年金がもらえない配偶者や子どもには、死亡保険金を遺すことが得策です。それぞれを死亡保険金受取人として生命保険に加入し、どちらにもしっかり遺すという対策を検討しましょう。 遺族基礎年金がもらえない遺族は、故人の年金加入期間に応じた金額(数十万円前後)が「死亡一時金」として支給されます。とはいえ、その後の生活費として毎月の遺族年金がもらえないという点では、やはり何か対策をしておく方がいいでしょう。
いかがでしたか。遺族保障を考える上で、子どもの有無は重要なポイントとなります。子どもがいない場合や、既に18歳を超えている場合、年金制度からもらえる遺族保障の金額は少ない(またはもらえない)ことがほとんどです。夫婦や子どもの年齢を軸に、なるべく早めに保険や預貯金で万が一の場合に備えることをお勧めします。