住居費は、一生涯の支出の中でも大きな割合を占める場合が多いと思います。購入か賃貸かという問題は、誰もが一度は考えることではないでしょうか。今回は、実際に「購入」と「賃貸」のどちらがいいのか、それぞれの居住スタイルに向いている人(世帯)について、宅建士でもあるファイナンシャルプランナーの筆者がまとめていきます。
住宅の「購入」と「賃貸」、かかる費用の内訳は?
まずは、それぞれの場合にかかる費用に着目して、まとめてみます。
購入にかかる費用
購入に必要な費用は、土地建物の購入資金と、毎年の固定資産税、火災保険料などがあります。固定資産税は住んでいる地域によって差があるので、一概に比較ができません。 また、火災保険料も、補償の対象や建物の構造の違い、住まいの状況などに応じて、大きな差が生じる場合があります。 しかし、台風などで家に被害があった場合は、修繕費を預貯金から捻出するか、加入している火災保険からの補填となりますので自主的に加入しておくのが賢明です。
賃貸にかかるお金
賃貸で必要な費用は、基本的に月々の家賃のみです。その他、一時的に発生するお金として、入居時の諸費用(家賃の3~5カ月分相当額)と、更新時の諸費用(家賃1カ月分としているところが多い)があります。もちろん固定資産税はかかりません。 火災保険(家財保険)への加入は基本的には任意ですが、ほとんどの不動産会社では、入居時に1~2年間分で数千円程度の保険への加入を勧めているようです。
それぞれ35年間住んだ場合の費用を比較してみると…
大まかな費用について分かったら、比較してみましょう。
大まかな費用について分かったら、それぞれを比較してみましょう。 仮に、総額4,000万円の土地建物を35年ローンで購入すると想定します。 ※これに付随する住宅ローンや登記にかかる諸経費、火災保険料などは考慮しないものとします。 賃貸の場合、月10万円の家賃の物件に同じく35年住み続けたと仮定すると、火災保険料や更新料などを考慮しないとしても、総額4,200万円かかることになります。
賃貸の家賃にもよりますが、35年で4,200万円にもなるという結果は驚きではないでしょうか。土地建物だけの購入価格(今回の場合は4,000万円)を超えています。 購入の場合は、諸経費や固定資産税を加味すると、賃貸の4,200万円と同等、または上回ることもあり得ますが、大まかな比較ではそんなに変わらないといえます。
費用があまり変わらないとしたら…どちらを選ぶ?
購入と賃貸、長く暮らせば費用面ではあまり差がないということが分かりました。ここからは、それぞれのメリットとデメリットを挙げながら、検討すべきポイントをまとめます。
購入した方がいい場合とは?
購入した方がいい人(家庭)は、転勤などがなく、その地域に長く住み続けることが明らかな場合です。 また、家族や親戚が多く、相続財産として遺したい場合なども、賃貸ではなく購入の方がいいでしょう。 メリットとして、持ち家がある安心感は絶大です。老後資金の計画を立てる際も、一定期間で住宅ローンを完済しておけば、その後は固定資産税と修繕費などの実費のみで済むため安心です。 デメリットとして考えられるのは、万が一売却する場合に、思ったような金額が付かない場合がある点です。あくまでその時点の評価額で売却することになるため、必ずしも資産価値が高いままではない、という点を理解しておきましょう。
賃貸の方がいい場合とは?
賃貸暮らしが向いているのは、単身世帯や子どもがいない世帯です。 子どもがいなければ、相続という面で末代に遺すことを考える必要はありません。また、住居にかかる費用が家賃のみのため、資金の計画を立てやすいのが最大のメリットです。台風など万が一の修繕費も、大家さんや不動産会社が補償してくれるので、居住者があらかじめ準備しておく必要はありません。 さらに、入退去が自由なのも、年齢や家族構成の変化に応じて住まいを替えることができ、合理的といえます。 デメリットは、近年問題になっている少子高齢化の影響があります。 高齢者のみの世帯は、賃貸物件への新たな入居を断られることがあります。その一方で、高齢者入居可という条件を明示している物件も増えてきました。 同じくデメリットとして「実際には住んでいなくても、借りている限りは賃料を払い続けなければいけない」という点が挙げられます。例えば療養で長期入院していても、退院後の住まいの確保という意味で、賃料を払い続けなければなりません。 この場合、長期療養の医療費と、住んでいない住居の家賃のどちらも出費になり、金銭的な負担が大きくなります。
購入でも賃貸でも、それぞでにメリット、デメリットがあります。自身の置かれている環境や家族構成、将来どうしたいかなどを考え、多角的に検討し、じっくり進めてくださいね。