十代の頃、ひざが太いと言われたことがトラウマになった私。以来、服を選ぶときなど、太く見られないよう、他人の目線をやたら気にするようになりました。そんな私が、トラウマを乗り越えたきっかけをご紹介します。
大好きなカラオケ 楽しいはずの夜が一変!
「ひざが太いからやめとこ」
何十年経った今でも鮮やかによみがえる、決して忘れられないトラウマの言葉は、赤の他人から言われました。いや、聞こえたというのが正しいかもしれません。それも「足」ではなく「ひざ」。何だかリアルすぎません? 自分の容姿を否定されるつらさを知った瞬間でした…。
私が当時18歳、大学生になりたてのある日、サークルの飲み会の後、仲良し女子3人で大好きなカラオケへ。混雑した受付の列に並び、
「なに歌う?」とはしゃぐ声に、前方に並ぶおしゃれな雰囲気の男子3人組が振り返りました。彼らはこちらに視線をやりゴニョゴニョ。声かける? と相談しているのが何となくわかりました。そんな時代でした(今の若者もそうなのかな)。
その時、冷めた表情をしたひとりの口からボソッと聞こえたのが、
「ひざが太いからやめとこ」
今なら怒りたい!
BGMが流れる騒がしい店内。えっ、今なんて言った? そのセリフは幸い友人たちの耳には届きませんでしたが、私の耳だけはそのひとことを拾ってしまった…
その後、個室で3人ワイワイ騒ぎながら、無理して笑っていた記憶だけ残っています。
ちなみにその夜、ひとりはロングスカート、ひとりはパンツ。ひざが出ていたのは私だけ。つまり「ひざが太いからやめとこ」は、間違いなく私のひざ! 私のひざ、すごく細いとは言いませんが、そんな太い?! しかも、足が太いという一般的フレーズではなく、ひざが太いって。足の一部を具体的に挙げられ、余計に傷つきました。
勝手に品定めして、ひざが太い子がいるからダメって、君たち何様! と、年を重ねて図太くなった今なら怒ります。けれど、当時の私は怒るどころか恥ずかしさに押し潰され、ひっそり傷つくばかり。その後も、ふとした時あのひとことを思い出して、みじめな気持ちがよみがえりました。
そろそろトラウマとさようなら!
つい最近、当時の友人のひとりと20年ぶりに会う機会が。ふと思い立ち、あの時のことを、意を決して口に出してみました。彼女は全く覚えておらず、当然「ひざが太いからやめとこ」も初耳。
「何それ失礼な! そんな男こっちから願い下げ」と大笑い。彼女の屈託ない笑顔に、私の心もちょっとスッキリ。そして、この記憶を口に出すのにこれほど勇気が必要だったことに、我ながら驚きました。
私、思いのほか傷ついていたのね。あれ以来、他人の目線ばかり気にして、ひざが見えないよう、太く思われないようにするのが最優先。つまらない洋服選びに囚われてきたものです。
「ひざが太いからやめとこ」は、私にとって長年のトラウマでした。過去形なのは、最近この経験を、職場の同僚に笑って話せたから。みんな
「失礼な奴ら、余計なお世話!」と軽く一蹴してくれましたし、似たような経験を教えてくれた人も。また、こうして文章にもできました。一度口に出すと、こんなに楽になれるものですね。
見知らぬ男のひとことなど笑い話にして、そんなトラウマとはいい加減さようなら! 第一、ひざが太くて何が悪い! 今後はもっと自分の好きな服を着て、自分らしく気持ちよく過ごしていきます!
(ファンファン福岡公式ライター/とらうまちゃん)