私が小さい頃、明治生まれの祖母がちょっと怖くて不思議な話をたくさん聞かせてくれました。少しずつアップしていきます。
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祖母が7歳の春、隣村の叔母の家へ引っ越しの手伝いに母親と出かけた。
あちこちに咲く花を眺めながらの道行きは楽しく、気がつくと隣村だった。
着いた時には引っ越しの準備はほぼ終わっており、ほんの少し手伝うと昼ご飯になった。
大好きなちらし寿司を食べ終えた祖母は、村の散歩に出かけた。
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小川に脚を浸けたり花を摘んだりしながらしばらく行くと、庭に見事な桃の花が咲いている家があった。
ふと見ると入口に同じ年頃の女の子がいて手招きしている。
誘われるままに中に入ると女の子は部屋の奥へと走っていく。
祖母は少し躊躇(ちゅうちょ)したが、思い切って後を追った。
襖(ふすま)を開けるとそこは広い座敷で、見事なお雛様が飾られていた。
しばらくあっけにとられていたが、不思議なことに気がついた。
部屋に雛人形以外のものが一切無いのである。
さっきの女の子もおらず、人の気配もない。
不思議に思っていると入口から母の呼ぶ声が聞こえた。
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「まさかとは思ったけど、ここにいるとは」
叔母によるとこの家には年老いた夫婦が住んでいたが、昨年二人とも亡くなり住む人もないため近いうちに取り壊すことになっているそうだった。
本当にお雛様があったのかどうか確かめに戻りたかったが、日が暮れる前に帰ろうと母に急かされたため、後ろ髪ひかれる思いでその家を後にした。
「あら?」
家に帰ってから頭になにかが着いているのに気がついた。
それは桃の花びらだった。
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「お雛様が寂しくて私を呼んだのかな。桃の季節が来るたびに思い出すよ」
祖母は目を細めた。
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