<ご近所トラブル>騒音問題で分譲マンションを手放すまで追い詰められた

 ご近所トラブルなんてインターネットの中の話で、私達には縁がないだろう…。何の根拠もなくそう思って、新築の分譲マンションを購入。
数年後、泣く泣く手放すことになるとは、夢にも思っていませんでした。

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理想の物件

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 結婚して2年、家の購入を考え始めました。探す中で、値段も手頃、立地もいい、という理想の物件に出会いました。
 「ここ、いいね!」思い切って購入を決断。引っ越す頃、私は妊娠8カ月でした。

 下の階には、50代後半で、スポーツ好きのAさんご夫婦が住んでいました。子どもが生まれたらご迷惑をおかけするかも、と心配でしたが、生まれてきた娘には
 「おはよう」
 「今からどこいくの?」など、話しかけてくれていました。

 住み始めて5年経った頃、日常が一変しました。新型コロナウイルスによる一度目の緊急事態宣言が発令され、元気な盛りの5歳の娘と3歳の息子が、保育園に行けなくなってしまったのです。

 公園にも行けない状況に愕然としましたが、散歩に出てみたり、家でゲームをしたりして、何とか毎日を過ごしていました。そんな中、一通の手紙がポストに入っていたのです。

 「子どもの足音がうるさい、どうにかしてほしい」という内容で、差出人はAさんでした。Aさんへの申し訳なさと突然向けられた怒りへの恐怖。どうしよう… と、私の頭の中はパニックでした。

夜にAさんが乗り込んできた

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 すぐに夫と話し合いました。これからもここに住むのだし、お詫びと「できる限りの対策をして今後は気を付けます」という内容の手紙を渡そうという結論に。翌日、Aさんのポストへ入れました。

 その後、家中にジョイントマットを敷き、改めて子ども達に
 「静かにね、絶対に走らないよ」ときつく話しました。しかし、小さな子どもが走らず過ごすなんてことはできませんでした。何度言い聞かせても、パッと走ってしまう。そんな子ども達を叱りつけ、ピリピリと過ごしていました。

 そうこうする内、緊急事態宣言が解除されました。保育園にも行けるようになり、家の中で走ることが少なくなってきたと思っていた矢先。夜の10時、普段なら鳴ることのない家のチャイムが、ある日突然鳴ったのです。

 夫がインターホンに出ると、
 「Aです」おそるおそるドアを開けると、Aさんが怒鳴り始めました。
 「子どもの足音がうるさい」
 「動悸がする、どうにかしてくれ」など、延々40分近くそれは続きました。何とかなだめて帰ってもらいましたが、夫と二人で、放心状態でした。

 これ以上どうしたらいいんだろう、子どもに何かされたらどうしよう。子どもへの執着と怒り、それが一番怖い、と夫に伝えました。黙って考え込んでいた夫が、
 「引っ越そうか」と、一言。何かを諦めたような、肩の荷が下りたような、そんな表情でした。

おびえる毎日からの脱出

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 これ以上何か言われる前にと、すぐに動き始めました。マンション売却のため、業者を呼んで対応をしながら、新居探し。
 今回のことで、絶対に戸建、と決めて探していましたが、思うような物件はなかなか見つからず「このままここに住めればいのに…」と何度もそう考えてしまい、悔しい、憎いという感情で、落ち込む毎日でした。

 ある時、一人の不動産屋さんと知り合い、売却から引っ越しまでお手伝いをしてもらえることに。
さらに、
 「辛い気持ちでここを手放されるかと思います。でも、次のお家はこれからの人生を長く共にされます。納得のいくお家を探しましょう」焦る私に、そう話してくれたのです。

 「逃げるためだけではなく、新しい生活を始める」前向きな気持ちになり、がぜんやる気がアップ! 半年後には新居に引っ越すことができたのです。
 引っ越し当日。足音、チャイム、家を出るたびにAさんに会うかもしれないという恐怖… これからは何にもおびえなくていいんだ! と、本当にすがすがしい気持ちになったことを、今でも忘れられません。

 現在、引っ越してから2年ほど経ちますが、子ども達が元気に家の中で走り回るのを見ても(普通にうるさくて怒ってはいますが…)穏やかでいられる日常に感謝しています。
 マンションはすぐに買い手がつきましたが、新しい住人について、私は何も知りません。新しい住人もAさんも、静かな日常が送られているよう、祈るばかりです。

(ファンファン福岡公式ライター/かきくけ子)

※この記事内容は公開日時点での情報です。

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