息子は、保育園の頃から近所に住むAくんと大の仲良し。どんどん大人びる周りの子をよそに、いつまでも幼いままの2人に少し心配をしたこともありました。ところが息子の一大決心を機に、2人の友情がびっくりするほど厚かったことを知ることに。母親の私が思わず涙してしまった、2人のやり取りとは。
小学生男子って幼い!?
何でも挑戦してみたい性格の息子の後を、ちょっと慎重だけど面倒見のいいAくんが追いかける、というのが小さなころからの2人の関係でした。小学生になって他の友達が落ち着いていくなか、2人はいつまでも泥だらけになりながら野山を駆け回っていました。
そんな息子が小学3年生の時、突然
「中学受験をしてみたい!」と言い出したのです。幼さゆえに、純粋にもっと広い世界を見てみたいと思ったようです。
もちろん親として挑戦することを応援したいのはやまやまです。しかし
「中学受験をする」なんて言ったら仲間外れにされたりいじめられたりするかもしれない、という事が気がかりでした。なぜなら住んでいる地域は中学受験をする子どもがほとんどいない農村地域。そもそも自宅から通える距離に私立中学がないので、引っ越しも覚悟のこと。
幼い息子にそんな覚悟があるのだろうか…。まだ見ぬ世界に胸を躍らせる息子とは反対に、こちらの気持ちは重く沈むのでした。
背中を押した友達の一言
引っ越しが必要なこと、自分だけ勉強のために遊べないことがあるかもしれないこと、などを息子に伝えました。すると息子は、
「大丈夫だよ! Aくんに受験したいって伝えたら『すごいな! 俺には無理だけど、お前ならやれるよ。頑張れよ!』って言ってくれたよ。Aくんのためにも頑張るから!」と言うではありませんか!
いつの間にそんな決心をしていたのか、ビックリしました。Aくんのおかげで、クラスの友だちも応援してくれるようになり、息子は自信をもって受験に挑むことができました。自分と違う価値観の友だちを心から応援できる、そんなAくんに感謝しかありませんでした。
友情に涙
中学受験の結果、息子は義両親宅の近くにある私立中学へ合格しました。飛行機で移動する距離に住むことになるため、入学を機に家族で引っ越すことになりました。
合格が分かった時
「一番に合格を伝えたいから!」と息子はAくんのところへ。ところがその夜、Aくんのお母さんから
「わかってはいたけど、いざ離れ離れになると思うと辛いみたいでずっと泣いている」というメッセージが届いたのです。それを聞いた息子は、何かを決心したような真剣な顔をしてAくんへ手紙を書き始めました。
息子は手紙に、
「Aくんが背中を押してくれたから頑張れた。ここに帰ってくればAくんがいると思うから、知らない人ばかりの学校へ行くことに不安を感じなかった。そうやって人の気持ちを大事にしてくれるAくんを尊敬している」と書いたそうです。
翌日、Aくんに手紙を渡した息子は、笑顔で戻ってきました。息子が
「夏休みとか、じいちゃんたちいるから戻ってくるよ。俺たちずっと友達だろ」と手紙を渡すと、手紙を読んだAくんは
「ばかやろう! 俺たちは友達とか、そんな関係じゃないだろ? 親友だろ!」と笑顔になってくれたそうです。
息子から話を聞いて、思わず涙がこぼれました。あんなに小さかった2人が、お互いが辛い時は支え合えるほど成長していたなんて! そして、そんな男の友情をうらやましくも思ったのでした。
これからも友情を大切にして欲しい
別々の学校で中学生になった息子とAくん。なかなか会えないけれど、毎日のようにスマホで連絡を取り合っているようです。お互いの事には深く干渉しないけれど、迷ったときには一番に相談する、そんな仲なのだそう。
すてきな友だちに出会えたことに感謝しつつ、お互いに尊敬しあえる男の友情を、ずっと大切にして欲しいと思います。
(ファンファン福岡公式ライター / まゆこ)