福岡市公式インスタグラム連動企画「#fukuokapeople」。福岡市で魅力的な活動をしている様々な方にフォーカスを当て、プロジェクトの内容はもちろん、活動の裏側や熱い思いを伺います。今回は、現代社会の課題でもある食品ロスに一石を投じる、「CYCLE EATS(以下、サイクルイーツ)」の開発者・山田恵也さんにインタビュー! デザイナー業の傍ら、食品ロスの削減と食品事業者を盛り上げるための取り組みを積極的に行っています。活動を始めた経緯や実感している手応え、今後の展望を伺います。
生産者の苦境から見出した、新しいフードマッチングのかたち。
「サイクルイーツ」の開発者・山田恵也さんは“フードマッチング”を合言葉に、規格外の野菜や賞味期限間近などの“訳あり品”を対象にしたショッピングアプリを運営しています。山田さんの本職は空間デザイナーですが、どのような経緯でこの事業を始めたのでしょうか。 山田:「レストランの店舗デザインを手がけた際に、農家さんが農産物を廃棄せざるを得ない状況にあることを知りました。もったいないことですが、それには致し方のない理由があり…。廃棄される農産物をどうにかして活用できないかという思いが芽生えたのが、この事業の発端です。また本業の店舗デザイン以外にも、もっと永続的に店舗運営をサポートできないかと考え、食品ロス削減×集客に繋がるフードマッチングアプリ『サイクルイーツ』を立ち上げました」 畑で廃棄される農作物の多くが、出荷規格をクリアできない規格外の野菜です。また、価格の下落によって“売れば売るほど生産者は赤字”となる現象も起こり、これも廃棄せざるを得ない一因となっています。 生産者は収穫から水洗い・商品選定・袋詰め・箱詰め・出荷までの人件費と、設備費・送料・手数料などのコストを負担しているので、時価によっては収穫・出荷することで赤字となる場合があるのです。それが豊作と重なったらさらに深刻。赤字運営は死活問題となるので、食品ロスがもったいないといえど致し方のない状況…。 そんな畑で起きている社会問題を、何か別の方法で解決できないかと山田さんは『サイクルイーツ』を立ち上げたといいます。
食品事業者と消費者を直接繋げ、win-winの仕組みを構築。
フードマッチングアプリ「サイクルイーツ」は、食品事業者自らが“訳あり品“をお手頃価格で販売し、消費者が販売先へ直接受け取りに行くシステム。事業者と消費者が直接繋がることで、事業者としては流通コストを削減でき、収益を確保しながら同時に食品ロスも削減できます。消費者としても収穫したての野菜やお値打ちの食品を購入できて、新鮮でおいしい食卓を囲めるという、win-winの仕組みです。 山田:「サイクルイーツの“サイクル”には、農作物や食品を廃棄せずに循環させるという意味合いと、いろんな人々が食品ロス問題に関わってほしいという想いを込めています。畑が広がる郊外は年々過疎化や高齢化が進んでいるのですが、そこにサイクルイーツの消費者が野菜を受け取りに足を運び、地域の方と触れ合ったり、収穫体験したり、食べ物を通じて地域活性化に繋がることも期待しています」
生産者だけでなく、飲食店としてもロールモデルとなる取り組み。
「サイクルイーツ」がリリースされて約1年。【生産者や食品事業者の苦境を救う】+【食品ロスを削減する】といった取り組みを続けたことで、確かに見えてきた希望があると山田さんは語ります。 山田:「もともと価値がないとされてきたものに、価値が生まれている喜びを間近で感じています。出荷できず処理に困っていた大量の野菜を、生産者の代わりに飲食店スタッフが収穫し、そのまま店頭で無料提供するという実験を行いました。一般のお客さんのほとんどが「なぜ無料?」と聞くので自然と会話が生まれ、食品ロスの課題について考える大切な機会になります。さらに、大根が無料だからと別メニューを“ついで買い”してくださる方や、お店のリピーターも増えて、『サイクルイーツ』の活用によって人々が集い、コミュニケーションが育まれるようになったんです。とても有意義な好循環ですよね。飲食店としては食品ロス削減の社会貢献に取り組むことでブランディングも確立できて、今後こういった活動によるニーズがどんどん高まる予感!」 消費者からも「自分の行動がSDGsに繋がって嬉しい!」という声が寄せられているとか。アプリを介して食べ物や消費行動について改めて見つめ直し、社会貢献の輪を広げ、地域や人々の交流も築かれる。そういった活動の副産物があちこちで生まれているのです。
食品ロスの現場に警鐘を鳴らし、目指すは社会の意識改革!
今年4月には福岡市の鳥飼八幡宮で、賞味期限が近いものや形が不ぞろいの食品、規格外の野菜などの“訳あり品”を集めた「0円マルシェ」を開催し、多くの人の関心を集めました。 山田:「食品業界では、メーカーや販売店がブランド価値を損ねないように食品ロスの現状をひた隠す風習が残っています。食べても品質的に問題がないのに“賞味期限が近い”“賞味期限切れ”を理由に廃棄するのは、社会的に印象がよくないですし、バッシングを受けるリスクがあるからです。けれど、隠したところで何の問題解決にもなりませんよね。むしろ食品ロス削減に向けて取り組む姿をオープンにした方が、よっぽど企業のブランド価値は上がるのではないでしょうか!?」 そう語る山田さんの想いに地元食品メーカーが共鳴し、複数の企業が「0円マルシェ」に出品。こうして一歩一歩、少しずつ食品ロス削減の取り組みの輪が広がっています。 山田:「福岡市の教育機関でも、校外授業で収穫体験を設けてくれたら嬉しいですね。小・中学生の子供たちへの食育にもなりますし、都会の子にとっては貴重な自然との触れ合いにもなります。若い世代に食品ロス削減の意義・姿勢を伝えていくことで、今後彼らによってよりよいサスティナブルな時代がつくられると思います」
食品ロス削減を率先して取り組む、先進都市で叶えられること。
食品ロスへの意識改革となる草の根運動を続けていきたいと語る山田さんに、これからの展望を伺いました。 山田:「いろんな企業や人を巻き込みながら、食品ロス削減に共鳴する社会になってほしい。今後は福岡市とも一緒になって取り組んでいきたいです。 僕らが暮らすまちがSDGs先進都市として社会を引っ張ることで、食品事業者を最大限に応援し、地域を盛り上げていけるはずだから。『サイクルイーツ』も究極の地産地消アプリと呼ばれるように頑張ります。今後も食品事業者と消費者をオンライン上でマッチングし、リアルな場として収穫体験やマルシェなどのイベントも積極的に続けていくつもりです」 食品ロスの現場に問題提起をしながら、ロス削減活動を小さな輪から大きな輪へ。食品事業者と消費者を繋ぎ合わせ、サスティナブルな好循環を生み出す山田さんの取り組みに今後も注目しましょう。
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