【QPS研究所】世界トップレベルの人工衛星技術が、人々の生活と未来をより豊かにする!

福岡市公式インスタグラム連動企画「#fukuokapeople」。福岡で魅力的な活動をしているさまざまな方にフォーカスを当て、プロジェクトの内容をはじめ、活動の裏側や熱い思いを伺います。今年度最終回を飾るのは、小型SAR(合成開口レーダー)衛星を開発・運用している「株式会社QPS研究所」の代表取締役社長・大西俊輔さん。世界トップレベルの高精細小型SAR観測衛星を開発し、国内外から注目を集める大西さんに、小型SAR衛星の革新的技術と今後の未来像、また大西さん自身のパーソナルなエピソードトークを伺いました!

目次

福岡市を拠点とする宇宙ベンチャーが開発した、世界トップレベルの小型SAR衛星の凄みとは!?

出典:QPS研究所

大西俊輔さんが代表取締役社長(CEO)を務める「QPS研究所」は、“宇宙の可能性を広げ、人類の発展に貢献する”をミッションに、小型人工衛星の研究開発や設計、製造などを行うベンチャー企業。これまで難しいとされてきたレーダー衛星の小型化を実現し、2019年に小型SAR衛星初号機「イザナギ」を、また今年1月に2号機「イザナミ」を打ち上げ、日本のみならず世界から注目を集めています。 大西:「私たちが開発した小型SAR衛星は、電波を使って地表の画像を得る地球観測衛星です。この衛星を2025年までに36機を打ち上げることを目標にしていて、そうなると世界のほぼどこでも好きなところを、また特定の地域を約10分に1回定点観測することにより準リアルタイムな、かつ高精細な観測データを取得できます。カメラを使った衛星だと夜間の撮影が難しく、また雲がかかると地表が見えなくなってしまいますが、レーダー衛星は時間帯や天候に左右されず地上の様子を画像化できることが強み。例えば、夜に災害が起きた場合も速やかに地域状況を確認でき、豪雨や台風などの悪天候時も雲の下の様子をしっかり観測できるので、本当に欲しい情報を迅速に得られます」 JAXAやNASAなどでもレーダー衛星が作られていますが、弊社では低コストで小型化・軽量化でき、複数機を運用する体制にすることが革新的! そこから得られるデータが今後防災や環境調査に役立てられると期待されています

子供の頃の好奇心がすべての始まり。宇宙に関わる“モノづくり”を志す。

出典:QPS研究所

世界トップレベルの100kgほどの高精細小型SAR衛星を開発し、工学博士としても注目を集める大西さん。そもそもこの道を志したきっかけは何だったのでしょうか? 大西:「幼い頃に抱いた“宇宙の謎を知りたい!”という好奇心が根源にあります。『宇宙は何であるの?』『宇宙はどうやって始まったの?』という子供の純粋な疑問が好奇心に昇華した感じですね。ただ、理学博士の道は自分にとって難易すぎるぞと(笑)。これまでいろんな科学者たちが、宇宙の謎を探究するために望遠鏡や衛星を使って研究してきて、そういったドキュメンタリー番組を観ながら『宇宙に関わるモノづくりの仕事もあるな!』と気づいたんです。これなら自分にもチャレンジできるかも!? と夢を広げていきました」 子供の頃からモノづくりが好きだった大西さんは、こうして工学の分野で宇宙と関わることを志したと言います。

レーダー衛星によって叶える豊かな未来と、宇宙解明に向けた小さな一歩。

出典:QPS研究所 「イザナギ」との初交信の様子

これまで幾多の衛星の設計・開発に携わってきた大西さんは、トライ&エラーを繰り返す中でさまざまな困難に直面してきたはず。そんな時に一体何を原動力にしてチャレンジし続けてきたのか、“モチベーションの源”についても気になります。 大西:「前述の通り、“宇宙の謎を知りたい!”という好奇心が発端にありますが、このレーダー衛星で取得したデータがGPSデータのように、今後地球上の人々の暮らしを豊かにすることに繋がると思うと、そういった明るい未来像が僕の原動力になっています」 地球観測をリアルタイムに行うことで、地球の“今”を知る重要な情報となるのはもちろん、長期蓄積データを分析すればこの先地球がどうなるかの予測にも繋がるそう。「宇宙の謎を知ることが大きな目標ですが、まずは宇宙の一つである地球をしっかり把握することも重要」と大西さんは語ります。 大西:「ゆくゆくは他の惑星で活用できる可能性もありますよね。宇宙の謎を解明できるのは何世代も先の話だとしても、それに向けて小さな1歩を僕たちの世代で歩めたらいいなと思っているんです。未来に託す重要な資料を得るために衛星を飛ばして、絶え間なく地球観測データを蓄積していきたいです」

福岡の宇宙産業の強固な結束力と盛り上がりが、福岡市にも広がりつつある。

出典:QPS研究所が開発するSAR衛星のイメージ。質量100㎏、本体は内径80㎝の正六角柱。画像で衛星下部、直径3.6mの大きく開いたアンテナが特徴。QPS研究所

ところで、大西さん率いるQPS研究所は、北部九州の約20社とタッグを組みながら小型SAR衛星の開発を実現させましたが、福岡では宇宙産業が盛り上がっているのでしょうか? 大西:「20年ほど前に九州大学名誉教授の八坂哲雄先生が『九州域に宇宙産業を根付かせたい』と協力企業を募り、宇宙産業のモノづくりの土壌をつくってくれました。そこでタッグを組んだパートナーの企業のみなさんと長年活動を積み重ねてきたからこそ、今があるんです。最近は他の地域でも宇宙産業が活発化していますが、この20年間の経験値と団結力を持つのは福岡、ひいては北部九州ならではの強みだと思います」 各分野のプロフェッショナルが集まり、みんなが同じ方向を向いて密に連携を取り、モノづくりを続けられる地域性はとても貴重。今回小型SAR衛星の打ち上げに成功したことで、その盛り上がりと団結力が福岡市全体にも伝播しています。これまで宇宙はベールに包まれたものでしたが、だんだん私たちに近い存在になりつつあるとか…!? 大西:「火星到着を目指しているアメリカの実業家、イーロン・マスクさんをはじめ、民間の宇宙飛行士も積極的に活動していますので、近い未来、宇宙に行くことや月に住むことが当たり前の時代がやってくるでしょう。その時は、衣食住のほとんどの産業が宇宙関連の業態になると思いますよ。例えば宇宙で食べる食品、宇宙で着る洋服、農業、建築、医療も宇宙でどう展開するか…とかね。今みなさんが携わっているそれぞれの分野がやがて宇宙に関わる産業に繋がると思うと、宇宙飛行士や宇宙エンジニア以外の人も何かしら宇宙関連のモノ・コトを考えて、未来に繋げていけそうですよね!」

福岡市の宇宙産業とテクノロジー開発産業の相乗効果に期待!

出典:QPS研究所

QPS研究所は現在「イザナギ」「イザナミ」の2機を打ち上げていますが、2025年を目標に36機すべての打ち上げを目指しています。成功したあかつきにはどういった展望を描いているか、この先のビジョンを伺いました。 大西:「目下の目標は36機すべての打ち上げと、準リアルタイムの地球観測データの取得ですが、それと同じくらい大事なのが、取得データの活用法ですね。この点については、ITやIoT、ICTなどの技術開発が盛んな福岡に期待しています! 福岡市で活躍する専門分野の方々に、宇宙からのデータを駆使した新しいアプリケーションサービスを開発してもらいたいと思っています。そうすることで、自然災害が発生した際も迅速に状況を把握できて、人々の安心性・安全性を高められます。また普段の暮らしにおいてもより快適に、より豊かにしていけると確信しています。私たちのモノづくりと、ハードウェアのモノづくりの相乗効果によって、生活に関わるサービスを向上させたいですね!」 大西さんが語るように、宇宙のデータと地上のデータを組み合わせることで、暮らしの快適性を上げるサービスがどんどん生まれそうですね。これから私たちの生活に大きく関わるであろう、小型SAR衛星がもたらす有益性に期待が高まります。宇宙と地球、宇宙と実生活を繋げる大西さんたちの取り組みに、今後も注目しましょう!

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