中学生になり、運動音痴なのに野球部に入部した息子。試合に出られないかもと弱気になった息子に「辛いなら辞めていいよ」と言ったら、意外な言葉が返ってきたのです。
野球好きな息子
わが家の次男は野球が大好き! といっても、小学生までは見る専門。ところが、中学生になって野球部に入ると言い出しました。「大丈夫かしら…?」私の心配をよそに、毎日張り切って練習に出かけていきます。
息子は体が弱く食も細かったことから、人一倍体が小さくて、とても中学生には見えません。まわりの友達は、どんどん背が伸びて、声変わりも始まる中、体重が軽くて簡単に持ち上げられる彼は、時折からかいの対象になるらしく、コッソリ涙目で帰ってくることもありました。
それに、野球部のほかの子は小学生から少年団に入って練習しています。一方、野球初心者の息子は、私に似てかなりの運動音痴です。
当初、私は文化部を勧めていました。
ところが息子の決心は固く、そんなに野球がしたいのなら、と私も応援することにしたのでした。
わが家は現在、母一人子一人なので、キャッチボールの相手をしてくれる父親はいません。彼は部活のない日は毎日、球技場の片隅で、暗くなるまで一人で壁当てをしていました。
「辛いなら辞めていいよ。」と言ったら…
しばらくたったある日のこと。
「後輩が入って来たら、自分はベンチにも入れないかも…」と、言う息子。
「打てない、取れない、走れない! 三拍子揃ったユーティリティープレイヤー!」と、笑いながら、
「せめて、試合の最後に代打で出してもらえないかな…? だってレギュラーよりも目立つし、代打で、かっ飛ばしたらカッコいいでしょ?」と、強がっていました。
「出来るか出来ないかじゃなくて、どう頑張るかなんだよ!」と自分を鼓舞するような言葉が次々飛び出してきます。
私は思わず
「辛かったら、いつでも辞めて良いんだよ?」と言いました。甘い親なのかもしれません。
でも次に息子が笑顔で言った言葉が、心に残りました。
「何言ってるの? 母さん。こんなにたくさん野球の道具を買ってもらって、途中で辞めるわけないじゃない! 絶対頑張るって約束して始めたんだから、俺は辞めない! 野球の道具、買ってくれてありがとう!」
今年最初の練習試合
最初の練習試合で同級生はレギュラー入り。彼は「試合に出させてもらえないかも…」と心配しながら出かけていきました。
そしてその日の夕方、帰ってくるなり息子は言いました。
「良い話が2つあるんだけど、聞きたい?」 笑顔で続けます。
「良い話の1つ目は、同級生のA君が、今回初めて塁に出られたこと! もう1つの良い話は、俺が代打で出させてもらえたこと! 全然当たらなかったけどね…」
自分が塁に出られなくても、A君が塁に出られたことを心から喜んでいました。
どうして息子がこんなに前向きに育ったのか不思議に思います。私が元気がない時には
「母さん笑って!」と、変顔をして見せてくれます。
運動音痴の息子。いつか野球が上達すれば良いなとは思いますが、現実は物語のように上手くはいかないとも思います。
けれど、彼の頑張りは、この先辛いことに当たった時にきっと役立つし、彼なりの進み方を見つける手助けになると思います。
こんな風に成長してくれてありがとう! 次男から「母さんありがとう!」と言われるたびに、心からそう思います。
(ファンファン福岡公式ライター/Kitakitune)