私が小さい頃、明治生まれの祖母がちょっと怖くて不思議な話をたくさん聞かせてくれました。少しずつアップしていきます。
「おばあちゃん、妖怪って見たことある?」
小学1年生のとき妖怪たちが主人公のTVアニメを見終わって祖母に尋ねた。
「枕返しの間に泊まったことがあるよ」
そう言うと祖母は語り始めた。
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戦争が終わった年の秋、祖母は遠方の伯母の家に出かけた。
「食料があるから取りにおいで」というありがたい申し出があったからだ。
満員の汽車で半日、たどり着いた家は戦火を免れ以前と変わらぬ姿だった。
伯母をはじめ従姉妹たちも皆無事で再会を喜んだ。
案内された畑でたくさんの野菜を収穫し終えた頃には、すっかり暗くなっていた。
最初から泊まりでと言われていたので、久しぶりにお腹いっぱい夕食を食べ、ゆっくり風呂にも入れてもらった。
「座敷に布団を敷いたから、そちらでお休み」
伯母からそう言われた祖母はその部屋を見た刹那、ある事を思い出した。
「ここは昔、従姉妹が“おばけが出る枕返しの間”って言ってた部屋だ…」
少し不気味に思ったが、いろいろと親切にしてもらっているのでそのまま床に着いた。
うとうとしているとシャンシャンと鈴の音が聞こえた。
「何だろう?」と目を開けると、踊っている人影が見える…子ども?
気になったが昼間の疲れでそのまま眠ってしまった。
「夕べは何か起こらなかった? 枕を引っ張られるとか…」
翌朝、伯母からいきなりそう聞かれたので鈴の音、子どもの姿の話をした。
「あぁ、良かったね! あなたの願いは叶(かな)うよ」
伯母は笑顔でそう言った。
なんでもあの座敷では稀(まれ)に不思議な事が起き、それに行き当たった者は願いが叶うらしい。
半信半疑で伯母の家を後にした。
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「それで、願いは叶ったの?」
「それからすぐに、戦争で遠方に行っていたおじいちゃんが無事に帰って来たからね」
そう語り終えたとき、隣りの部屋で祖父の咳払いが聞こえた。