新型コロナウイルスの余波で、6年生の息子が通う小学校は2020年の3月2日から長期の休みに入りました。卒業式をどうするのかも問題に。結局、息子の小学校では卒業式に保護者は参加できず、先生と生徒だけで実施することになりました。式の当日、こんなことがありました。
せっかくの卒業式に保護者が参加できず、悲しく不満
6年生の長男が通っている小学校では、先生と生徒だけで卒業式を行うことが決まりました。それまでは連日の報道を見て、
「保護者の参加は1人だけに制限されるかも」
「クラスごとに入れ替えて卒業証書を授与する学校があるらしいよ」
「まさか保護者が入れないなんてないよね?」
など、ママ友LINEでは、そんなやり取りが飛び交っていました。
わが子の小学校は、この予想の中で最も番望んでいなかった「保護者完全不参加」になったわけです。
わが家は数年前に上の子の卒業式を体験していました。 卒業証書授与、卒業生が在校生へ贈る感謝の言葉、在校生からは「後は任せてください!」と卒業生を送る言葉とはなむけの合唱。そして、卒業生の最後の合唱。
息子たちがあの感動的な卒業式を経験できないと思うと、親としてはとっても切ない気持ちになりました。
ママ友の中には、そんな思いを強くして、不満や怒りを口にする人も。
「この地域はコロナ出てないんだから卒業式普通にできるでしょ」
「時間を短くすれば大丈夫なのに。一生に一度なんだから」
「保護者1人だけでも入れるようにならない?」
この状況では仕方がないと分かっていても、口に出してしまうのでしょう。
式の当日、予想外の展開にママたちは…
この日、体育館には入れなくてもと、校庭には子どもを見送るママの姿が。校舎と体育館をつなぐ通路が唯一、子どもに拍手を送れる場所です。
卒業式が始まる時間が近づくと、自然とこの通路の両脇に親が並び始めました。その横を、正装にマスク姿の先生が
「このたびは卒業おめでとうございます」とあいさつしながら足早に体育館に入って行きました。
6年生の担任以外の先生も体育館に入り、しばらくして校長先生が現れました。
校長先生は通路に入る前に姿勢を正して立ち止まり、集まっていた保護者に深々とおじぎをしました。それまでワイワイガヤガヤしていた親も静かになり、校長先生に注目します。
「ご卒業おめでとうございます。このたびは、このような形になってしまい大変申し訳なく思っております。(中略)職員だけになりますが、今日は精いっぱい子どもたちを祝福し、中学校に向けて背中を押したいと考えております。卒業証書を手にして帰ってくる子どもを、たくさん励ましていただきたいと思います」と優しい声で話すと、再び、深々と長いおじぎをしました。
通常とは違う卒業式、これでは涙する場面などないだろうと想像していたのですが、
「あっ、どうしよう…涙出る、やばい」 隣を見ると、ママ友も涙、涙。
「やだー、涙腺弱くなってるー、歳だねー」なんてみんな照れ笑いしながら。そして、
「やっぱり、卒業式見たかったねー…」ってまたみんなで涙。
そんな親の前を通り、マスク姿の子どもは体育館へ入場します。拍手と
「おめでとう!」の声の中、緊張しながらも背筋を伸ばして立派な姿でした。
不満を言ったり、切なくなったり、涙が出たり。子どもよりも親の方が、この状況にオタオタしていましたね。 こんな卒業式もまた、家族の歴史の一つになりました。
(ファンファン福岡公式ライター/ymz)