猫も人間も変わりゆく【サ日記】

 甘え猫のサニです。もう10歳をとうに超えて15歳になろうというおれですが、いまだに甘えん坊なところは変わりません。この家に飼われて年末で2年になるチョビはいっこうに飼い主になつこうとしないので、「家猫がそんなこっちゃダメだ」と説教するけど、あらたまる兆しはないニャア。

 以前はキャットタワーのてっぺんに置いた猫つぐらに常駐しておったが、暑くなってからは、タワーの一番下でうずくまって過ごすことが多い。「猫界の広瀬すず」と言われ、この近所では最もかわいい猫だと飼い主は自慢するが、愛嬌がなくていかん。

 片やおれは「猫界のスフィンクス」とも呼ばれるが、年とともにそれにふさわしい貫録を身に着けてきた、と自負しておる。

 先日、グーグルフォトを整理していたら、3、4年前の写真に目がとまった。まだちょいちょい外出が多かった頃のおれだ。今よりも少しふっくらしているような気がする。その頃からすると、体重も300gくらい減ったかも。やつれたわけじゃないぞ。

 古い写真はいったん見始めると、やめられない。4年前のうしの写真もある。今と比べてずいぶんほっそりしている。

 これが最近のうし。おれと逆にここ何年かでふっくらしてきた。2年ほど庭で姿を見なかったが、今年ふらりと戻ってきた。どこかで武者修行して身体を鍛えていたものと思われる。

 これだけ細いと「うし」っぽくないが、白地に黒のぶち模様はやはり乳牛のようだ。

 デカさでうしと双璧のクマの昔の写真だ。熊にふさわしい獰猛な顔で吠えている。

 やつもちょうど今日やって来た。少し右のひたいのあたりの毛が茶色く薄くなっているように見える。気性が荒いからどこかの猫と決闘でもしたのか。

 しかし、こんな怖い顔した猫はなかなか見ない。こいつにケガをさせる相手も相当なツワモノに違いない。

 やはり若かりし頃のほうが精悍な感じはする。格闘家のようなたたずまいだ。

 今見ると少しやせている。外で暮らすと、何かと敵も多く大変なんだろう。

 好奇心旺盛なバーは、クマに近づこうとしたが、脅かされると一目散に逃げた。そりゃオソロシイことだろう。ママのクミコも気が強い猫だが、さすがにクマには対抗できん。ダンナのうしには、パンチを食らわしていたが。

 バーが庭の祠(ほこら)に入り込むのはいつものことだが、神様にお供えしたごはんやお水を平らげるので、飼い主がいつも文句を言っておる。

 ヌー(右)とバー(左)の兄弟は、高いところに登るのが大好きだ。この梅棚でもよく見かける。まだ小さいから外敵が来なくて少しでも安全な場所を探しているのか。そういえば、アメリカのヌートバー選手は故障者リストに入ったな。

 この白い部分が多い方がヌー君だ。ヌー・バー兄弟はうしの子どもだからいずれうしのようにデカくなるかもしれん。人間はそれをたのしみにしているようだ。おれには関係ないが。

 うしは図体はデカいが、よく見ると少々気弱な表情をしているようにも見える。この物陰から見る感じ、「巨人の星」の明子ねえちゃんのようだ。若い人は知らんか。

 二匹の母親であるクミコの方が勇ましいぞ。博多でもだいたいおかみさんの方がしっかりしてるようだからニャ。

 ヌーもおかあさんと一緒だと外敵から守ってくれる、と安心するようじゃ。

 何度も言うが、古い写真についつい時間を忘れて見入ってしまうのは、人間も猫も同じようだ。

 久しぶりに、今は亡き大御所猫・しろさんの姿が出てきた。これも4年くらい前だろうか。おれが今の家に入りこんだ7、8年前には既に貫録十分のお姿だったから、しろさんは最後まであんまり変わった印象はない。無口でほとんど声を発しないところは、うしとも共通している。おれもペットクリニックの先生から「ふてぶてしさのカタマリ」と言われるくらい、神経の図太い猫ではあるが、このしろさんとうしの落ち着きにはかなわない。

 しろさんは、道路の真ん中で堂々と寝そべってどかないので、車の方が遠慮して迂回したりしてた。方やうしの方は、去勢手術に連れて行くため、飼い主がペットクリニックから借りてきた捕獲器に閉じ込められたときも、顔色ひとつ変えず、鎮座していたそうだからニャ。猫の顔色がわかるのか、という話もあるが。

    *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *

 さて、暑い暑い8月もあと十日を切った。今月の地域猫カレンダーの紹介だ。

 「福岡ねこともの会」さんは、子猫特集になってるようだ。なんか黒猫はフクロモモンガみたいな顔してるぞ。茶色の方は、模様は違うが、顔立ちがうちのチョビに似ているような。

 こちらが「ピースキャット」さんのカレンダー。上の猫は、チョビ一族(チョビ、クミコ、ヌー、バー)の模様の系統だ。以前チョビに似てるんで、勝手に「チョビ兄」と呼んでた猫がいた。そいつに似てるような気がする。そのチョビ兄も半年以上姿を見せんが、かつてのうしのように、どこかに武者修行に出たのかしらん。

 左下の猫は、どことなく高級そうな毛色をしておる。しろさんも若いときはこんな感じだったのか。

 そんなこんなで今も暑い日が続くが、おれとチョビも家の中は涼しくても常に外出のチャンスはうかがっておる。

 しかし、昔と違って長いこと外にはおれん。飼い猫は家で甘えるのがいちばん。

 チョビにも「もっと飼い主に甘えろ」と飼い猫としての心構えを言って聞かせるが、言うことを聞かん。相変わらず、人間が近づくと、「シャーっ」と般若の形相で火を噴く。

 ただ、最近は部屋の中の快適さがわかってきたようで、すぐ家に戻って来るようにはなった。

 弟たちもだんだんチョビに似てきたぞ。でも、家では飼えん。二匹でいっぱいいっぱいだ。

 というわけで、定位置のパソコンの前のいすでおやすみさせてもらうぞ。

 また、来月9月に会いましょう。

※この記事内容は公開日時点での情報です。

著者情報

福岡市南区在住。サバトラ柄。熟年オス猫。雑種だが、アメショーの血が入っていると思っている。
ふてぶてしさが身上の甘え上手。
推定5歳か6歳の頃、今の飼い主宅に上がり込み飼い猫に。それ以前は不明だが、数百メートル離れた公園にいたとの不確かな情報。おととしの暮れ、孫娘のようなキジ白猫チョビが弟子入り。
世の中の動きに敏感なものの、とくに行動はしない。

目次