「カップラーメンが食べたい!」切迫早産で入院中の夢は叶うのか?

妊娠は幸せなものですが、体調が悪くて思うように食べられない。歩くだけでも息切れがする。など数えきれないほどの苦労や悩みに直面するものですよね。今では小さな事に思える目標や願望も、妊娠中は叶えるのが難しい大きな夢となることがあるのです。みなさんは妊娠中どんな夢を持っていましたか?

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予想外の妊娠生活

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 2人目を妊娠していた時のことです。地元の病院で「赤ちゃんが小さい」と指摘され、大学病院を受診するよう言われました。3日間の検査入院でしたが、当時上の息子はまだ2歳でした。息子と離れることへの不安、赤ちゃんは大丈夫なのかという不安に押しつぶされそうだったことを覚えています。

 自宅から大学病院へは車で2時間かかります。送ってくれた夫が帰った後は、孤独と不安で眠ることができませんでした。入院翌日に検査が行われ、医師から告げられたのは
 「大丈夫ですよ、成長速度はゆっくりですが、成長しています」という言葉でした。その一言で安心し、その日はぐっすり眠ることができました。

 しかし翌朝、医師から
 「切迫早産ですね… このまま入院しましょう」という衝撃の一言が告げられたのです。
 天国から地獄に落とされたような気分でした。近くに知り合いもおらず、必要な物は夫に届けてもらうしかありません。不安と申し訳なさで涙が止まりませんでした。

不安でも前向きに!

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 それでも数日経つ頃には現実と向き合えるようになり、毎日楽しみを見つけながら生活しようと思えるまでになりました。ネットショッピングで赤ちゃんの服を注文したり、名前を決めたのもこの時でした。

 一通りやりたいことが終わった頃、突然ある欲求が私を支配し始めたのです。それは、カップラーメンが食べたい! というもの。

 もともとカップラーメンが大好きな私。しかし妊娠中は塩分摂取量に気を遣う必要があることや、つわりの影響で匂いに敏感になり、ずっと食べていなかったのです。ところがこのタイミングで、身を潜めていた私のカップラーメン愛が顔を出してしまったのです。

 しかし自分では売店にも行けませんし、病室で食べることはできません。さてどうやってカップラーメンにありつこうかと日々頭を悩ませていたものです。数日考えた結果、食べられるのは転院の日しかないという結論に至りました。「少し落ち着いたら地元の病院への転院について検討してみます」と言われていたのです。

 赤ちゃんのため、転院のため、とにかく動かず横になり、耐える日々が1カ月ほど続きました。ちなみに私の計画は、夫の車で地元の病院へ向かう途中コンビニに寄り、カップラーメンとご対面というもの。
 車の中なら人目を気にする必要はなく、体重管理に厳しい看護師さんもいません。思う存分堪能することができるのです。

 入院生活で溜まったストレスを解消するには食べたい物を食べる! これは赤ちゃんのためだと都合の良い解釈をし、これ以上完璧な計画があろうかと心は弾みました。

小さくて大きな夢

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 今思えば何故あれほど夢中になっていたのかと恥ずかしくなりますが、入院生活に飽き飽きしていた私にとってはまるで旅行の計画を立てているような気分だったのです。

 夫にも計画を共有し、あとは医師のGOサインを待つだけです。そしてついに待ちに待った瞬間が…。
 「転院の許可がおりましたよ!」と。
 私の頭の中はもうカップラーメンでいっぱいです。そして、喜びの感情を隠し切れない私に医師は続けてこう言ったのです。

 「救急車で行きますからね!」と…。

 結局寝たきりで救急車に乗せられ、カップラーメンを食べる夢は叶いませんでした。転院後も2カ月ほど入院生活は続き、私の壮大なカップラーメン計画はあっけなく終わりを迎えたのです。

 本当にしょうもない話だと自分でも思いますが、好きな時に食べたい物を食べられることがどれほど幸せか実感しました。無事に出産し退院した後、夫が
 「今日は俺がご飯作るよ! 何食べたい?」と聞いてきたので、迷わず
 「カップラーメン!」と答えました。

 あの時食べたカップラーメンは、人生で一番おいしかったと言っても過言ではありません。最後の一滴まで大切に味わいながら飲み干したものです。あれから数年経った今でも、カップラーメンを見るたびに思い出しては夫と笑っています。

(ファンファン福岡公式ライター/はる)

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