2023年10月「子どもの留守番は放置であり児童虐待にあたる」という虐待禁止条例の改正案が埼玉県議会に提出され、全国的に物議を醸した子どもの留守番問題。改正案は市民の反対の声が強く法案を取り下げることとなりました。
子どもが小学生になり、そろそろ短時間だけでも留守番させたいという親も多い中で、実際に何歳からさせていいものかなど、心配ごともあるでしょう。今回は小学生の留守番事情や、留守番をさせる際に気を付けたいポイントについて元保育士ママが考えてみました。
留守番は虐待にあたる?!
テレビやネットなどから「子どもの留守番が禁止になる」というニュースが流れてきて驚いた親も多いと思います。2023年、埼玉県議会の自由民主党議員団が議員発案の条例の改正案として提出した虐待禁止条例の改正案が全国で物議を醸しました。
埼玉県虐待禁止条例の改正法案の内容
条例の改正法案がどのような内容だったか一部抜粋してみましょう。
“第6条の2 児童(9歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にあるものに限る。)を現に養護する者は、当該児童を住居その他の場所に残したまま外出することその他の放置をしてはならない。”
“児童(9歳に達する日以後の最初の3月31日を経過した児童であって、12歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にあるものに限る。)を現に養護する者は、当該児童を住居その他の場所に残したまま外出することその他の放置(虐待に該当するものを除く。)をしないように努めなければならない。”
つまり、この法案が可決されれば、小学校3年生以下は自宅で子どものみの留守番が禁止になり、小学校4年生から6年生は努力義務となることに。罰則規定はおかれないものの、このように児童を放置することが虐待にあたるとされたのです。
反対意見相次ぎ法案は取り下げに
これをうけ、子育て世帯を中心に市民からは強い反対の声が相次ぎました。さいたま市PTA協議会からも反対の意見あがり署名活動が広まる事態に。
このような市民の声をうけ、改正法案が提出されていからわずか一週間で、放置を禁止する虐待禁止条例の一部改正案を埼玉県議会に提出した自民党県議団は法案を取り下げることなったのです。(参照:埼玉県議会「子ども放置禁止」条例の波紋 留守番は虐待?反対意見相次ぐ 議論の経緯は | NHK)
この一連のできごとから、子どもの留守番について本当にさせてよいのかなど各家庭でも話題になっているようです。小学生の留守番事情や気を付けたいことなどを改めて考えてみました。
海外では留守番禁止の国も
日本では、昔から「鍵っ子」という言葉があるように共働き世帯の子ども達は自分で鍵を持ち歩き子どもだけで留守番をすることが当たり前のようにされてきました。しかし、海外では子どもの留守番を禁止している国もあり、世界では留守番させないことが当たり前とされているようです。
留守番に厳しいニュージーランド
ニュージーランドの法律では、児童虐待について日本よりも厳しく取り締まっており、14歳未満の子どもだけでの留守番は禁止になっています。自宅での留守番はもちろん、車の中で子どもだけを放置することも禁止です。スクールバスでの通学以外は保護者が学校に送り迎えしなければいけないので、子どもだけで歩いて帰るということもありません。(参照:家庭問題 | 在オークランド日本国総領事館 (emb-japan.go.jp))
アメリカは州ごとに異なる
アメリカの場合は、州によって子どもの留守番についての法律も異なります。法律で決められているのは、イリノイ州(14歳以下の留守番が禁止)、オレゴン州(10歳以下)・メリーランド州(8歳以下)の3州のみ。
他の州では法律では罰せられなくとも、留守番についてのガイドラインが定められている場合もあり、子どもの年齢・成長度合いや身体能力などによって判断するそう。(参照:子どもの身近なルール in アメリカ | 現地情報誌ライトハウス・シアトル (youmaga.com)
香港は12歳以下の留守番禁止
日本と同じアジア地域の国の中では、子どもの留守番について法律で厳しく定められているのが香港。香港では、法律上12歳以下の子どもを一人にしてはいけないため、もちろん留守番も禁止。通学時も一人での登下校をさせないようにスクールバスや、親が送迎するのが一般的です。
また、子どもで一人にならないように、保護者だけでなく、祖父母やヘルパーさんがきて面倒をみてもらうような体制が整っているようです。
治安や情勢の違いもありますが、やはり海外の方が子どもの留守番について厳しいようですね。
日本の留守番事情
日本の小学生がいる家庭は、実際にどの程度子どもだけで留守番をさせているのでしょうか。
小学校中学年から留守番率が増加
セコムの【子どもの安全対策に関する調査】によると、子どもに留守番をさせたことがあるかという質問に、小学校低学年は「ほとんどない(月に1~2回程度)」と「まったくない」という回答が6割を占めています。中学年以上は「常にある(週に5~7回)」「よくある(週2~4回)」「少しある(週1回程度)」を合わせて全体の約6割を占めるようになり、高学年になるとさらに留守番をさせたことがある人がぐっと増加することが分かります。
反対に、乳幼児期の子どもに関して留守番をさせたことがある人は「常にある」~「少しある」を含めてもわずか1割程度となっていました。(参照:「子どもの安全対策に関する調査」2020|セコム株式会社のプレスリリース (prtimes.jp))
この結果から、やはり子どもを一人で留守番させ始めるのは小学生になってからという人が多いようです。小学生低学年の内は学童などに通い放課後の子どもの居場所が確保されていましたが、中学年以降学童を利用しなくなった子達が親が帰ってくるまでの間留守番せざる負えないということも増加の原因になっているようです。
どんな時に留守番させている?~ライターの実例~
実際、小学生の子どもがいるわが家でも子ども一人で留守番をさせたことがあります。最初の留守番は、ゴミ捨て場や回覧板を持っていくなど5分以内の短時間の留守番でした。小学生も中学年や高学年になると、買い物へ行く間や、仕事から帰ってくるまでなど子どもを留守番させる時間も30分~1時間と長くなるように。
子ども達は、宿題をしたり、おやつをたべたり好きなTVを見るなどして過ごしていますが、思ったよりも帰宅が遅くなる時は不安にさせてしまうこともありました。
わが家では留守番をする際、子どもには
◎火を使わないこと
◎訪問者の対応をしないこと
◎すぐに連絡が取れるようにしておくこと
などいくつか約束事をさせています。幸い、今のところわが家では問題が起きずに留守番できていますが、やはり何か起きてからでは遅いので心配な気持ちはずっとあります。
留守番でのトラブル例
知人や同級生のお子さんを持つママの中には、子どもが留守番をする際にトラブルになったこともあったようです。
ゴミ出しの間に鍵をしめられた
子どもがまだ小さい時に自宅のごみ置き場までごみを捨てに行く際ほんのわずかな時間留守番をさせたことがある人も多いでしょう。そんな時、すぐそこだからと鍵を持たずに外出したママ友は、わずか数十秒の間に内側から鍵を閉められ締め出されてしまったようです。
ママが帰ってこない!と近所で大騒ぎ
兄弟が風邪で病院へ受診するため、小学校中学年の子を留守番させた際には、病院が想定時間よりも混んでおり伝えた帰宅時間よりもかなり遅くなってしまったという人も。病院なので電話で連絡もできずにいたところ、ママが全然帰ってこない!と不安になったお子さんが家からでてご近所さんに助けを求めたそうです。
幸い、ご近所さんが親の連絡先を知っていたため事なきをえたそう。ずっと家にいるようにと話しても、やはり一人で不安な時などは思わず外に出てしまうこともあるでしょう。
留守番をさせる際に守らせたい約束事
仕事や急用などでどうしても子どもを留守番させなくてはいけなくなってしまったら、必ず留守中の約束ごとをしてから出かけましょう。子どもに危険が及ばないよう、事件に巻き込まれないように守らせたいこと、親が気を付けたいことをチェックしておくとよいですね。
火気厳禁、キッチンの使用法
子どもの留守番時に心配なのが火災や火傷などのけが。火の使用は禁止にし、電気ケトルなども使わないように約束しておきましょう。電子レンジは、正しい使用方法が分かっていない年齢なら控えた方がよいですね。
お昼ご飯を一人で食べさせる場合には、あらかじめテーブルにお弁当やパンなどを用意し、温めなくても食べられる状態にしておくのが安全。冷蔵庫の開け閉めなども心配な場合は、水筒などで飲み物も準備しておくのがよいでしょう。キッチンには立ち入らなくても済むように準備しておくのがベストです。
電話や訪問客への対応法
留守番時の防犯対策として、子どもが一人でいることを第三者に知られないようにすることも大切です。宅配便や訪問客が来た際にも対応はしないように。インターフォンは出ないように約束しましょう。
自宅の固定電話にも出ないようにするのがよいですが、親との連絡を自宅電話で行う際には、親以外の人から電話があっても、今親がいないことなどは言わないように指導しておくのがよいですね。
外出しない、ベランダへ出ない
緊急時以外は、家から出ない約束も。友達が遊びの誘いに来た際にも勝手に行かないようにも話しておく。特に小学校低学年の内は転落の危険があるのでベランダには出ないようにも話しておきましょう。
マンションなどの高層階に住んでいる場合は、親が出かける際に部屋の窓が閉まっているかも必ず確認しておくとよいでしょう。
連絡手段を確保しておく
子どもが不安になった時、緊急時には親とすぐ連絡が取れる状態にしておくことをおすすめします。お子さんがキッズケータイやスマホを使っている場合は、充電を確認し、いつでも連絡がつくように常に持っているよう約束しましょう。
家の固定電話の場合は、事前に使用方法を一緒に練習しておくと一人になった時も慌てずに連絡することができますよ。必要なら使い方をメモで書いておくとよいですね。
わが家では、親の連絡先の他、祖父母や、救急車、消防車などの電話番号もメモしておいて、電話機のそばに貼っておくようにしています。
その他 自宅の危険箇所を一緒に確認する
キッチンやベランダ以外でも自宅内で触ると危険なところや、立ち入らないでほしい所なども親子で一緒に確認しておくとよいでしょう。
子どもが工作などで遊ぶ際に使うカッターやハサミなどの危険物も親がいない時には使用しないように約束しておくこともケガ防止につながります。
なぜ危険なのか、理由をきちんと説明するのが大切
留守番の際には、子どもに守らせたいルールや約束事が沢山ありますね。一つ一つとても大事なことですが、ただ「ダメ!」と話すだけでは、いまいち危険性が子どもには伝わりづらいものです。
なぜキッチンを使ってはいけないのか、なぜインターフォンにでてはいけないのか、約束をする際にはその裏にどんな危険が潜んでいるのかを子ども自身が想像することにより、危険なことが理解できるようになります。
留守番は年齢よりも子ども自身の成長段階で見極めよう
小学生の子どもを一人で留守番させ始める時期としては、低学年や中学年が一つの目安になります。はじめは5分~10分など短時間で様子をみて練習していくなど少しずつ時間を長くしてみるのがよいでしょう。
子どもの年齢はあくまでも目安です。それぞれの子の発達段階を見極めて、しっかりと約束事が守れるか、防犯対策がきちんととれているかなど各家庭で判断するようにしてください。
留守番させることが増えてくると、だんだんと親も子どもを一人で過ごさせることに抵抗がなくなってきてしまいます。常に危険がつきもの・子どもが不安になることもあることを念頭におき、できるだけ一人にならないようなケアをしてあげるのも大事ですね。