「おとなしくていい子ねぇ」「頭が良くていい子ね」などとわが子が褒められると親は嬉しいものですよね。しかし、ちょっと考えて欲しいのが「いい子」ってどんな子? 実は今「いい子症候群」と呼ばれる子ども達が増えています。その実態や親の適切な関わり方について元保育士ライターが調べてみました。
いい子症候群とは?
「いい子症候群」とは、大人が思い描くいい子になろうとして、常に親や先生の顔色を伺いながら期待に応えようとしている子どものこと。
小さなころから、親や先生の言うことをきちんと聞いてルールをまもり、おとなしくて優しくてお勉強もできる。そんな子どもがいたら周りの大人達も「あの子はいい子だわ」と褒めることが多いでしょう。もちろん、その子ども達の中には学ぶことやルールを守ることを自主的に楽しんでいる子もいるでしょうが、中には無理にいい子を演じて自分の気持ちを我慢している子もいるかもしれません。
「いい子症候群」とはそんな子ども達のことをさしています。
うちの子は「いい子症候群」かも?行動からみるチェックリスト
□親の決めたルールは必ず守る
□「~したい」「~が欲しい」など自己主張をしない
□「いやだ」「やりたくない」などNOがいえない
□お友達に譲ってしまう
□指示がないと動けない
□褒められたい願望が強い
□場の空気を読みすぎる
チェック項目に当てはまる数が多いほどいい子症候群の可能性は高くなりますが、当てはまったからといって必ずいい子症候群だとは決めつけない方がよいでしょう。
いい子症候群に見られる子どもの特徴
特に激しいイヤイヤ期や反抗期もなく育てやすかったわが子も、実はいい子症候群かもしれない。元保育士ライターもそんな悩みを経験した一人です。前項の「いい子症候群のチェックリスト」に挙げた項目について、いい子症候群の具体的な特徴を詳しく解説します。
親の決めたルールは必ず守る
毎日の勉強時間や家での過ごし方について、多くの家庭でルールがあると思います。このルールを厳格に守ろうとする子は親の顔色をうかがって行動しやすい一面も。約束守らないと親に怒られてしまうという恐怖心を持っている子もいるでしょう。
「~したい」「~が欲しい」など自己主張しない
自我が芽生えると多くの子ども達は自分の意思でやりたいことを見つけて主張しはじめますが、それを何回も親に否定されたり却下されると、子どももだんだんと自己主張できなくなってきます。
したいことが本当に自分がしたいことではなく、親が望むであろうという答えを伝えているかもしれません。欲しい物も、本当に欲しいものを遠慮して言えない子もいます。
NOといえない・友達に譲ってしまう
嫌なことがあっても、イヤと言えない子もいい子症候群の特徴。自己主張より自己抑制が大きく働き、自分を犠牲にしてしまいがちになります。
小さな頃から、おもちゃや遊具をすぐ人に譲ってしまう・お友達のいいなりになっているなどの姿が見られるときは気を付けてみてあげるとよいでしょう。
指示がないと動けない
抑圧的支配的な保育・しつけを受けていると、子ども達は自分自身で考えて行動する力がつきにくくなります。子どもの意思とは関係なく行動を大人が指示することで、そのうち誰かに指示してもらえないと動けない子になってしまうかもしれません。
何をしたらよいかわからずぼーっとしている。自分の意思では決められない(人任せになる)という子もいい子症候群の特徴的な様子です。
褒められたい願望が強い
子ども達は大好きな親や先生に褒められることが大好きです。自分のやった行動を褒めてくれることで自信がつき、自己肯定感を高めていきますが、過剰なほどに褒められたい願望が強いのも心配です。
特に、努力した過程でなく結果を褒められることが多い子は、自分自身の目標が「親に褒められる」ことになりがち。これが続くと自分の人生なのに、親の望む人生を歩むことになってしまうという心配があります。
場の空気を読みすぎる
その場の空気を読んで行動できることは素晴らしいことですね。そのような子は協調性もあり、クラスでも友達とトラブルなく上手にかかわっていきやすい子が多いです。
しかし、いつも周りに気を使って皆に合わせて行動していると、本来の自分自身がどういう存在か分からなくなり自我の形成にも影響がでてくるかもしれません。自分が注目されることが苦手になったり、自己主張も上手にできなくなります。
わが子は家では自己主張ができるのですが、外にでるととっても控えめ。お友達とのトラブルでも友達が泣いちゃうから…といつも譲ってばかりでした。先生にも褒められることが多く、周りの親たちからも“いい子”というレッテルを貼られていたかもしれません。
いい子症候群の原因は親にあり!
いい子症候群の原因は親の育て方にあるといわれています。特に長男・長女と一人目に多いという傾向が。それはなぜかというと、親が理想の子育て・教育論を子どもに期待したり押しつけてしまうことが多いからです。親のどんな行動がわが子をいい子症候群の子にさせやすくしているのでしょうか。
子どもに過度な期待をしている
いい子症候群の子の親に多く見られる特徴の一つが、「子どもに過度な期待をする」ということ。子どもが将来困らないように、幸せになってほしいという願いから習い事や進学先まで、子どもの意思よりも親の願いを押し付けてしまう場合もあるでしょう。
小学校のテストは100点が当たり前と思っていたり、絶対に中学受験をして○○以上の学校へなどと高いハードルを子どもへ掲げてしまうと、子ども達は親の期待にこたえなくては無理しすぎてしまいます。
自己主張より協調性を大事にさせる
日本人の美学でもある協調性や和の心。まわりのことを考えて気持ちを合わせて行動することが良いとされている風習もあり、子育てにおいても自己主張より協調性を大事に育児をする家庭も多いのではないでしょうか。
もちろん、学校での対人関係や社会にでていくには協調性も大切です。しかし、自分の意思を全くもてなくなるようでは、大人になってから自分の気持ちを相手にうまく伝えられずに困ったり、人前で発言することを苦痛に感じてしまうようになるかもしれません。
完璧主義者
親が完璧主義の場合、子どもの逃げ場がなく息苦しい思いをしたり、わざといい子を演じてしまうことがあります。親の理想のスケジュールなどで子どもが動かないとイライラしていませんか?
特に自己管理能力に優れた親やてきぱきと動ける親にとっては、まだまだ未熟な子ども達の行動がもどかしく感じてしまうかもしれません。そのような親子関係では子どもが失敗することを恐れてしまい、自主性に欠け消極的な子になってしまうことも。
先回りした育児をしがち
過干渉や親や過保護な親に当てはまることも多いのが先回り育児。子どもが心配なあまり、子ども自身で行動する前に親が口や手をだしてしまうと、子ども自身が能動的に動けなくなってしまいます。
家のルールが厳しすぎる
勉強や家のルールが厳格で厳しすぎることもいい子症候群の原因になります。規律を守ることを強要しすぎて、子ども自身のやりたいこと・意思・言い分に耳を傾けないでいるのも問題です。そのような育て方をされると、子どもも「言っても無駄」「親の言うこと、ルールを守らないと叱られてしまう」という気持ちになりいい子を演じてしまいます。
子どもに親の価値観を押し付けるのもいい子症候群になりやすい原因の一つです。子どもの未来は子どもが決めるもの。ということを忘れないでいたいですね。
いい子症候群にならないために親ができること
大好きで大切なわが子が、実は「いい子症候群」で知らぬうちに苦しめていたなんてことになっては、親にとってもつらいことですね。子どもがのびのびと、好きな事をみつけて楽しめるようになるには親の関わり方や声掛けの仕方をちょっと変えていく必要があるかもしれません。
子どもの気持ちを沢山聞こう
いい子症候群にならないためには、親の気持ちを押し付けるのではなく子ども自身がどう思っているのか子どもの気持ちを沢山聞いてあげましょう。
例えば転んでしまったときに「これくらい痛くないよ。大丈夫だよ」といっているなら、「どこか痛い所ある?大丈夫かな?」と子ども自身に聞いてみてください。そのうえで子どもが痛がっている、びっくりして泣いてしまったようなら、「びっくりしちゃったね。転んでいたかったんだね」と気持ちに共感する声掛けをしてあげましょう。
やりたいこと・思いを尊重しよう
子どもがやりたいことを尊重してあげることもとっても大切です。大人にとってなんでそれ?と思うことでも危険がないものならまずはやらせてあげてみてはいかがでしょうか。体験してみてやっぱり違ったと思ったり、一度やって満足したら子ども自身でやめるかもしれません。
習い事や塾も親が決めるのではなく、「ピアノと水泳どっちが興味ある?」「A塾とB塾どっちにいきたい?」と子ども自身にも選択肢を与えてあげるとよいですね。各家庭の事情もあるので、なんでもOKというわけにはいきませんから、ある程度は事前に親が調べて絞り込んでから選択肢を伝えてみるのもよいでしょう。
親子の会話は指示より提案に
お家での過ごし方や勉強のスケジュールを親が決めてしまっている場合、会話がどんどん指示的な形になっていきます。
「宿題しなさい」「終わったらお風呂にはいりなさい」などというよりも「今日の宿題はなにがあるの?」「何時からやる予定にしよっか?」など指示の形ではない言葉かけを気を付けましょう。親の意見を伝える際にも「お母さんはこう思うけど○○はどう思う?」と子どもに提案しながらしっかりと子どもの気持ちも聞いてあげる姿勢をとりたいですね。
結果よりも努力をほめてあげよう
テストの点数や、合格不合格の結果だけでなく、そこまで頑張ってきた過程をしっかりと褒めてあげましょう。小さなお子さんなら、運動会で一等をとったことを褒めるのもよいですが、「練習がんばってたね」「最後まであきらめないでかっこよかったよ」という言葉かけもしてあげるとよいでしょう。
親と子は、別の人間ですから意見や考え方も違って当たり前。いろいろな考え方があることを親子で話し合えると、社会に出てからも自分の意見・他人の意見を尊重しあえる子になるでしょう。
頑張るママも時には力を抜いて
いい子症候群になりやすいお子さんの親は、よい母であろうと頑張り続けていて、すべては子どものためにという意識の強い方も多いと思います。親の必死な姿がかえって子ども窮屈にさせていたり、苦しめてしまっている場合もあるので、時にはママだって力を抜いて休んでくださいね。
大人が失敗した姿を見せたって、弱音を吐いたっていいんです。その姿で子どもも「僕も(私も)失敗したっていいんだ」と思えたり、心に余裕がもてるようになりますよ。
心が健康であることが、親にとっても子どもにとっても大切。素敵な親子関係を築いて脱・いい子症候群を目指しましょう。
【参考文献】
・テンプレ型の教育で増えた「いい子症候群」の若者 「最近の若者は…」と嘆く前に大人がやるべきこと | 東洋経済education×ICT (toyokeizai.net)
・「いい子症候群」とは?どんなお子さまに当てはまるの? |ベネッセ 教育情報サイト (benesse.jp)