子どもが大きくなってくると、身の回りのものは、親ではなく子ども自身の意思で選ぶことが増えてきますよね。大人の私は「男の子のものはピンクじゃなくて青」などと固定観念に縛られがちですが、息子の選択はとてもユニークです。息子の無垢な感性を尊重したいとは思うのですが…。
「ピンクの自転車がほしい!」という息子
息子が5歳になる頃の話です。誕生日プレゼントに買うことにしていた自転車を選びに、家族で自転車屋さんに行きました。
お店に入ると、私と夫は当然のように、青や黒などの男の子向けの自転車があるところに向かいましたが… 息子が飛びついたのは、女の子向けのかわいいピンクの自転車でした。
思わず顔を見合わせ黙ってしまった私と夫。男の子向けの”かっこいい”自転車を見せて
「これもかっこいいよ!」などと勧めましたが、何度聞いても息子は
「ピンクがいい!」と言うのです。
結局、その場では親の私たちが決めきれずに
「あとでほかのお店も見てみようか」と濁して帰ることに。その日の夜、子どもが寝たあとにピンクの自転車について夫婦会議を開きました。私は
「周りの子にからかわれないか心配。でも、本人の気持ちも尊重したい」という意見。対して夫は
「ピンクは無理だな」と完全否定。普段は意見を押し通すタイプではない夫ですが、この件だけは譲れないようでした。
その後も何度か話しましたが、私と夫の意見は平行線のまま。最終的には、息子の好きなキャラクターの自転車が見つかったことで、自転車選びはなんとか収束しました。
ドレスを着たいのは単なる好奇心?
同じ時期に、ほかにも似たようなことがありました。
七五三撮影の衣装選びに、写真屋さんに行ったときのこと。
店員さんに衣装部屋に通されると、息子は男の子向けのスーツと袴には見向きもせず、女の子向けのドレスに興味を示したのです。
「これを着たい!」の一点張りで、ドレスから離れません。このままでは試着が進まない… と困ってしまいました。すると店員さんが
「ドレスを着たらスーツと袴も着てくれるかな?」と、特別にドレスを着させてくれることになりました。機転を利かせてくれた店員さんには感謝です。
ドレスを着ると、息子はとてもうれしそうな表情。スマホで写真を撮ってあげると満足したようで、その後はスーツと袴も無事に試着してくれました。
着るだけ着て満足した様子を見ると「もしかして息子は、見慣れないものだから着てみたいだけだったのかな?」と思い始めました。ドレスを”女の子らしいもの”とは思っていないのかも、と。
そのため、あまり深刻には考えなかったのですが、帰って夫に話すと… やはりため息まじりに
「マジかぁ…」という反応。息子と同性の夫にとっては、いわゆる”女の子らしい”ものに興味を持つのは、どうしても抵抗があったようです。夫の気持ちも理解できなくはないのですが、一貫して否定的な態度にはちょっとがっかりしてしまいました。
息子のカラフルな世界観
後日、よく行く子育て支援施設でこの話をすると、スタッフの方が
「人生のはじまりの時期に選んだ色がピンクだなんて、とてもカラフルですてきだね。年を取ると地味な色を選ぶようになっちゃうんだから」と言ってくれました。
私には全くなかった視点でした。息子の心の中には、とても鮮やかな世界が広がっていると思うと、その世界観をなんとしても守ってあげたくなりました。
一連の出来事から1年。息子は最近、買い物に行くと、”男の子らしい”ものを選ぶことが増えてきましたが、女の子向けのテレビ番組も夢中で見ています。
5歳の誕生日にピンクの自転車を買ってあげなかったことで、息子の選択肢を狭めてしまったかな… と後悔することもありました。でも、相変わらず「好きなものは好き」な息子を見ると、ほっとします。
ちなみに、女の子向けの番組を見せていることは、夫には内緒。息子のカラフルな世界観は、私がこっそりと守っていこう、と思っています。夫が許容できて私ができないものもきっとあるはず。価値観を押し付けずに、違いをうまく利用することも必要かも、と今は思います。
(ファンファン福岡公式ライター/れな)