もしかすると私はこの世にいなかったかも、と思うくらい恐ろしい体験をしたことがあります。それは買い物へ出かけた時に起こりました。補助輪付きの自転車に乗った4歳くらいの男の子が、お母さんが数秒目を離した隙に、一人赤信号で道路を横断し始めてしまったのです。その時私がとった行動とは…。
赤信号で渡りだす4歳の男の子
息子が幼稚園に入園し、ようやく1人の時間が持てて、羽を伸ばせるようになった頃。息子が幼稚園に行っている間、私は1人、自転車で市内へ買い物に出かけることにしました。
目的地まであと少しというところで、赤信号につかまりました。「ああ、間に合わなかった…」と肩を落とし、信号待ちすることに。
同じ横断歩道には、私より先に4歳くらいの男の子とそのお母さんが信号待ちをしていました。それぞれ自転車に乗っていて、男の子の自転車にはまだ補助輪が付いていました。
車側の信号がそろそろ青に変わろうとしていた時、目を疑う光景が! 何と、その男の子が赤信号で道路を横断し始めたのです!
あまりにも危険な状況に立ち合い、私は驚きのあまり言葉が出ません!
お母さんが男の子に気付いた時には、男の子は車道の真ん中付近まで進んでいました。お母さんがちょっとよそ見をしていた、ほんの数秒の出来事です。
男の子の状況に気付いたお母さんは、自転車から転げ落ち、立ちすくみ、力が入らない様子です。男の子の名前をかすれる声で、一生懸命に叫んでいました。
男の子はというと、お母さんのところに戻りたいけれど、引き返せないのでしょう。道路のど真ん中で止まってしまって、泣いています。
自分の息子だったら?! 私の行動
周りを見渡しても、その親子以外は、私しかいない状況でした。 「もしあの男の子が、自分の息子だったら…」と親子を自分に置き換えた時、「行くしかない!」と私は覚悟を決めたのです。
国道で車の通りも多いため、私はできるだけ車の運転手に気付いてもらえるように、大きく両手を振りながら男の子のところへ向かいました。
すると本当に奇跡としか言いようがありませんが、全ての車が青信号の中、停止してくれたのです。
私は心臓が激しく鼓動を打つのを感じつつも、急いで男の子の自転車を押しながら、道路を横断しました。ほんの数秒の出来事でしたが、時間が止まったような感じでした。
横断歩道が青信号になると、男の子のお母さんが私たちのところへ走ってきました。そのお母さんは
「何てお礼を言えばいいか、わかりません!」と、涙を流しながら深々と頭を下げました。
しかし、私はまだ興奮冷めやらぬ状態であったため
「まだ小さなお子さんなのに、目を離したら危ないでしょ!!」と怒鳴ってしまいました。それだけ緊迫した状況だったのです。
今、その時の状況を思い出しても、怖さに鳥肌が立つほどです。
家の中に比べ外は、危険がたくさんあります。自分も子どもがまだ幼い時はできるだけ「危険予測」をしながら、子どものそばを離れないようにしたいと思いました。
(ファンファン福岡公式ライター/伊藤優香)