「いいことをすると家にお礼の品が届く」という昔話はありますが、現代ではなかなか体験ができない出来事ですよね。しかし、ある日を境にわが家にもプレゼントが届くようになったのです。差出人を調べてみると、思わずクスッとしてしまうまさかのオチが! 寒さも吹き飛ぶ、ほっこりする結末が待っていました。
玄関に届く謎のプレゼント
私が住むのは、住民同士のつながりが深い町。「おすそ分け」や「助け合い」が今も続く、とても住みやすい住宅街です。
そんな町に住んで10年が経過したころ、突然玄関にプレゼントが届くようになりました。プレゼントといっても、使い古されたビニール袋がドアノブにかけられている状態。袋の中身も「?」と感じる不思議な贈り物です。
最初のプレゼントは封の開いたビスケット。「近所の子どものいたずらかな?」と深く考えずゴミ箱に捨てたものの、「いたずらが続いたら嫌だな…」と心の片隅にモヤモヤが残りました。
モヤモヤが残る翌朝。新聞を取りに玄関に出ると、また不思議なプレゼントが届いていたのです! 2回目のプレゼントは、飴玉が4つ。私は地域の役員をしているので「きっと地域の子どもが届けてくれたんだ」と勝手に解釈し、喜びながら納得しました。
しかし、その後もプレゼントは毎日続きます。
ワンランク上のレトルト商品や、ご当地カップラーメンなど、子どもにしては高価に感じるプレゼントもあったため、私は「親御さんに申し訳ない」と罪悪感を感じるようになりました。
差出人は意外な人物
私は差出人を特定するために、起きてすぐに玄関を確認することにしました。
私が起きる時刻は朝5時半なのに、すでに届いているプレゼント…。あまりの早さに「子どもじゃない」と確信した私は、変な事件に巻き込まれているのではと急に不安になり、恐怖に包まれました。
そこで翌朝は、夫を巻き込んで監視活動を実施。
「今日こそ差出人を突き止めよう!」と意気込んだ私達夫婦は、4時半に起きてカーテンの隙間からこっそりと玄関を確認することにしました。
すると、あたりはまだまだ暗い朝の5時。50歳前後の女性がやってきたのです。そして案の定、玄関に何かを置いていくと、そそくさと帰っていきました。
「近所のSさんだ!」
最初は驚きましたが、Sさんは若年性認知症を患っている方。Sさんのお家にお話に行かなければいけないと、ハっとしました。
その日、仕事帰りにSさんのおうちに行き、ご家族にこれまでの経緯を話しました。
私が
「Sさんと知らないで、色々いただいてしまっていました…」と謝罪すると、Sさんのご家族は
「迷惑をかけてごめんね〜」と大爆笑。
そして、プレゼントをしている経緯をさりげなく探ってみると約束もしてくれたのです。
プレゼント 驚きの理由とは?
それから2〜3日たったある日のこと。Sさんのご家族がやってきて
「おたくの旦那さんが昔の恋人に似ているから、勘違いをしているみたい。恋人にプレゼントをあげていると話してたよ」と、連日続くプレゼントの理由を笑顔で教えてくれました。
そして
「(Sさんが)恋人に会うと言って今まで嫌がっていた歯磨きもお風呂も頑張るようになったから、このまま勘違いをさせていてもいいかな?」と相談されました。
私の答えはもちろんYes。
届いたものはLINEで報告し、貴重品ではないかの確認も行うことにしました。
1年経った今でも続いている光景
そんなやり取りから1年ほど経過した現在。
毎日ではありませんが、今も時々プレゼントが届いています。
夫が外で洗車や草むしりをしていると、Sさんが直接プレゼントを届けにきてくれることも。Sさんは夫を前にすると、いつももじもじ恥ずかしそうにしています。
そして、夫はいつも
「困る〜」と言いながらもとても嬉しそう。プレゼントを開ける瞬間は、まるで子どものようにワクワクしています。
モテない歴が長い夫。私以外からプレゼントをもらうのは初めてとのこと。夫もSさんのおかげで素敵な体験ができているようです。
(ファンファン福岡公式ライター / 綿毛たんぽぽ)