すぐにキレて友達とトラブルになってしまうなど、お子さんがキレやすい性格で悩んでいるという方もいるでしょう。思春期や反抗期は自我の芽生えや心の葛藤からいつもより精神的に不安定になることがありますが、あまりにも気が短かったりカッとなって暴れてしまうなどは適切に対応していく必要があります。
本記事では、元保育士ライターが子どものキレる心理や原因、親の関わり方についてご紹介していきます。
キレるとは?
小学生くらいの子ども達は、集団生活をしていく中で自分の気持ちを相手に伝える方法や相手の気持ちを考えることを学んでいきます。社会性や協調性を身につけていきながら、時には感情を抑えて人と向き合うことができるようにもなってくるでしょう。
しかし、子ども達の性格や、個の特性上どうしてもすぐにカッとなってしまったり、怒りの気持ちをコントロールできずに暴れてしまう子もいます。そのような子達は周囲から“すぐキレる子”というイメージをもたれてしまいがち。
そもそも「キレる」というのはどのような状態のことかご存じでしょうか。実用日本語表現辞典によると激昂する、本気で怒るといった意味の表現のこと。堪忍袋の緒が切れるという言葉の“切れる”が由来の一つともいわれている日本の俗語です。
怒るとキレるの違いは?
「キレる」と同じような意味の言葉といえば「怒る」ですよね。この二つは似ているようで少し意味合いが異なります。まず「怒る」は、怒りそのものの感情を持っていること。理性をもったまま冷静に怒りを表現したり相手に伝えるような場合に使います。
対して「キレる」は怒るの最上級といった感じ。理性を保てずに衝動的に怒りの感情を相手にぶつけたり、限界を超えて一気に爆発する様を言います。急に激しく怒る状態のことを瞬間湯沸かし器というような表現もします。若者に関しては二つの言葉の違いはあいまいでちょっとイラっとしたときも「キレそう」「キレるわ」などと話す子も多いようです。
子どもがキレやすい原因
子ども達なぜはすぐにキレてしまうのか。そこには原因があるはず。子どもがすぐにイラっとしたりキレてしまうのは、個人の性格や生まれ持ったものの先天的な原因と、家庭環境や親の教育方針・関わり方など後天的な原因があります。
反抗期の心の葛藤
2、3歳の頃は第一次反抗期の俗にいうイヤイヤ期真っ只中。やりたいことができない時、要求を受け入れてもらえない時に癇癪を起こしたりする姿が見られます。
小学生の反抗期は第二次反抗期と呼ばれる時期。自我が芽生え、家族以外の人との関わりをもちながら社会性などを学んでいきます。このころは世間の矛盾を知ったり、親の意見に納得できない時などは親や大人に反抗的な態度を示したり、親の干渉や注意などが癪に障るようにもなるでしょう。
身体と心がグッと成長する頃ですが、うまく心の整理ができず思わずカッとなって友人とのトラブルに発展したり、問題行動を起こしてしまうことも原因の一つ。
本来反抗期の子どもの姿は成長の過程で見られる健全な姿。キレると表すのは相応しくありません。しかし、「キレる」という言葉を常用しやすい年代の子達は自身や友人の態度をそのように表現することが多いですね。
自己肯定感が低い
自己肯定感が低い子どもは、自分自身を認めることがなかなかできない分、他人にも厳しい傾向が見られます。許容範囲が狭いことで、他の子なら気にしないようなささいなことも気にしてしまい、それが自分にとって不都合なものならば衝動的に怒りを爆発させてキレてしまう心配も。
親に抑圧されて育った
よくキレやすい子は、親が甘やかしたり過保護にそだてたことが原因とみられがちですが、実はその反対。小さい頃から親に抑圧されたり支配的な態度をとられていた子の方がキレやすいともいわれています。
心を満たす経験が乏しかったり、肯定的な言葉使いよりも否定的な言葉のシャワーを浴びて育った子は自然と自分自身の発する言葉も人に対して否定的なもの・攻撃的な言葉が増えてしまいます。
虐待を受けた経験があるなども、怒りの感情を殴る蹴るなどの動作をもって表現することに抵抗がなくなりやすく注意してみてあげる必要があります。
発達障害が原因のことも
キレやすい子どもの中には、もともとの特性である「自閉スペクトラム症(ASD)」や「注意欠如・多動症(ADHD)」などの発達障害が原因の子もいます。
例えば、ASDのお子さんは対人関係を築くことが苦手でこだわりが強い傾向があるため、自分のルーティーンが急に変更されたり、自分のこだわりを邪魔されるとパニックになって暴れてしまったり、自傷行為をするなどの行動が見られます。
ADHDのお子さんは場の空気を読むことが苦手で、相手との距離感も独特。ケンカになった際に衝動的な行動をとってトラブルになってしまうこともあるかもしれません。
生活習慣が乱れている
キレやすい子の中には、生活環境の乱れが原因で情緒が不安定になっている子もいます。睡眠不足や栄養不足などは子どもの成長期に必要なホルモン・栄養素が足りず、わけもなくイライラしたり集中力が足りなくなってキレやすい子どもになる危険が。
大人だって睡眠不足の日は頭が回らず、体調が芳しくないとささいなことでイライラすることありますよね。子どもも同じ。特に小学生や中学生の成長期は生活リズムの乱れが影響されやすい時期なので注意が必要です。
年齢別子どものキレ方
すぐにカッとなってキレやすい子は、キレた状態の時にはどのような行動をとるのでしょうか。子どもの年齢年代別に特徴的なキレ方についてみていきましょう。
幼児期(2歳~就学前)
第一次反抗期を迎える2,3歳の頃は、怒りの最大の表し方は泣くこと。まだ言語が未発達の年齢なので、思ったことを言葉にするより、泣いたり床に突っ伏して大声をあげたり癇癪することで怒りの気持ちを伝えています。
言葉より先に手が出てしまうこともしばしば。おもちゃの取り合いからお友達をたたいたり噛みついたりしてしまう子もいるので、そのような行動が見られた際にはケガにつながる恐れを事前に回避できるように大人が仲介していく必要もあります。
小学生
小学生になるとキレた時は身体だけでなく言葉での攻撃も激しくなります。キレやすい子は大人にも反抗的な態度をとってみせたり暴言を吐くなどするため、学校での先生トラブルや親とのトラブルも増えていくでしょう。
特に10歳前後のギャングエイジ世代になると、周囲の友人やメディアの影響を受け、相手を傷つける悪口などで数人で盛り上がる傾向も。
中学生~
中学生や高校生になると、第二次反抗期と合わせてより親への反抗が激しくなります。キレやすい子は物に当たって怒りを表現することも多く、ものを投げたり壁をなぐったりなどの行動が目に付くこともあるでしょう。
発達障害などで個々の療育を進めている子の中には、中学生頃になるとすこしずつ落ち着いてくることもありますよ。
この時期は友達関係がより蜜になり、影響をうけやすいことから非行グループに入ってしまうとキレやすい性格がさらにエスカレートしてしまう可能性もあります。
キレやすい子へ寄り添う親の関わり方
キレやすい子ども達は、どのようなアプローチをして心を落ち着かせてあげたり、寄り添ってあげればよいでしょうか。キレることを叱るだけではなかなか解決せず、場合によってはエスカレートしてしまうことも。
子どもの怒りポイントを探る
キレやすい子といっても一人ひとり怒りのポイント・沸点は異なります。わが子がキレやすくて困っているという場合には、まずどんなことで子どもがキレてしまうのかを探ってみましょう。
遊びの場面ならどんなやり取りをしたときなのか、生活の場面ならどんな会話をした時(親や兄弟がどんな行動をしたとき)にキレてしまうのか特徴が見えてくるかもしれません。そのポイントがわかることで、事前にキレることを回避したり、違うアプローチで気持ちをスムーズに向かせてあげられることもあります。
気持ちが落ち着くまでそばで見守る
怒鳴って暴れている時に、親がさらに怒ったりヒステリーになるのはNG。子どもがキレたりパニック状態になっている間は冷静に物事を見聞きできていません。まずは、子どもが気持ちを落ち着かせることが大切です。
思わず「いい加減支しなさい!」「何度いったらわかるの!やめて!」など言いたくもなりますがそこはグッと我慢。気持ちが落ち着いて話が聞ける様子になったらゆっくりと子どもの気持ちを聞いてあげてください。
見守る=放置ではありません。自傷行為や他害の恐れがないか、すぐに介入できるような距離感で見守りましょう。
安心できる場所作り
兄弟が多くいる家庭や、学校などは終始にぎやかで子ども達も楽しいですがその分気持ちを落ち着かせられるパーソナルスペースが少ないです。
キレやすい子が怒りを落ち着かせて気持ちを切り替えられるような場所を一つ作ってあげるというのもよいでしょう。家なら、部屋の一角やトイレなどでもよいです。安全に静かにできる場所に子どもの好きなものをおき、パニックになったら「○○スペースで休んできたら?」「落ち着くまでゆっくり休憩しようか」などと誘導してあげるのもGOOD。
子どもの気持ちを受け止めてあげよう
子どものキレた行動の裏には必ず何かきっかけや、こどもなりの譲れないものがあります。大人には?と思うようなことでも子どもにとっては一大事なことも沢山あります。イライラしてしまったこと、嫌だった気持ちをうけとめてあげることもとっても大切です。
頭ごなしに拒否したり𠮟責すると、自分のことは大事じゃないんだ・誰もわかってくれないんだと自尊心を傷つけてしまうことも。親はありのままの子どもを大切に思っていることをきちんと伝えてあげましょう。
規則正しい食生活に改善する
1日3食バランスの良い食事をとることで、心も体も元気になります。そして睡眠時間をたっぷりとって体力を回復させると同時に、適度な運動をするなど規則正しい生活習慣を身に着けてあげることも大切です。
とはいえ、生活環境を厳しくしすぎるのも逆に子どもが窮屈な思いをすることもありますし、親自身も大変になりますよね。夜更かしした日があったって、簡単なご飯になる日があっても大丈夫!という心のゆとりを持つことも忘れずにしてくださいね。
子どもの発達に心配がある場合は抱え込まず相談を
キレやすい子の中でもその原因が発達障害の場合は親だけで解決しようとせず、発達相談センターなどの機関やスクールカウンセラー、学校をどんどん頼ってOK。気になることは何でも相談してみましょう。
サポートしてくれる人たちは必ずいます。どうか一人で抱え込まずに、子どもにとって最適な支援方法を探してみましょう。親のイライラやストレスは大人が思っている以上に子ども達は敏感に感じ取っています。子どもと一緒に親自身の心の健康・イライラ解消を目指しましょう!
【参考文献】
・「完全カラー図解 よくわかる 発達心理学」監修者 渡辺弥生 ナツメ社
・「キレる」と「怒る」の違い!わかりやすく徹底解説するよ! | 贈る言葉情報館 (okurukotoba.tokyo)
・キレやすい子供になる11の原因!キレさせない8つの方法 – マーミー (moomii.jp)