クリニックで、10年以上キャリアを積んできた私。2人目を妊娠した時はコロナ禍だったため、妊婦特例により早期産休取得をしました。キャリアに傷がつくという不安もありましたが、院長からは「役職については心配ない。あとはこちらでなんとかするから安心してほしい」という言葉をいただき、安心して産休に入ることに。ところが復帰後、まさかの現実を突きつけられるのです。
妊娠に配慮してくれた院長
私はクリニックで院長秘書、事務リーダの仕事をしていました。10年以上のキャリアを積んで職務実績も認められ、役職もいただき、私にとってとてもいい環境の職場でした。そんななか2人目の妊娠が発覚。1人目妊娠時は、クリニックでは珍しい産休、育児を取得させていただき、今回も通常通りその予定でした。
しかし「コロナ禍にクリニックで勤務することは妊婦には危険」と看護師長、院長より判断され、早期産前休暇を勧められたのです。
キャリアを失う不安
1人目の産前産後、育児休暇は雇用契約と同じ条件で取得していたため、復帰後も問題なく仕事に戻ることができました。しかし、今回の院長からの提案は予想外。
予定より半年も早い産休に私の頭をよぎったのは、“キャリアを失う不安”でした。私は思い切って院長に直接相談することに。
通常より早く産休に入り、私のキャリアは守られるのかと尋ねると、院長は
「契約に反してでも、今は赤ちゃんが無事に産まれることを優先に。キャリアについては復帰後も確約する」と答えてくれました。
いつもは寡黙な院長も、妊婦の私に笑顔を見せ、早期休暇を促してくれたのでした。
復帰後、待っていた仕事に愕然
半年間の育児休暇から復帰する日。院長、その他のスタッフは皆にこやかに迎え入れてくれました。
しかし、院長から指示された業務は想像もしていなかった内容だったのです!
書類整理や待合の清掃、オペ器具の洗浄や診察患者の誘導… 「これが私の仕事なの?」と疑問だらけでした。
顔も知らないスタッフが、院長の隣で秘書をしていたことにも違和感が。少しでも手を出すと
「ここは私がやるので!」と冷たい目線で私に指示をするのです。そして院長も黙々と仕事をしている環境。
その時、私は気づきました。所詮女性のキャリアなど確約されるものではないと。敗北感と劣等感からか、この頃から食欲もなくなり体調に異変を感じるようになりました。
院長からの衝撃の一言!
雑用ばかりの毎日に不満が募り、ついに院長へ直談判することにしました。
スタッフが休憩しているときに時間をとっていただき、自分がすべき仕事は正しいのか、産前休暇に入る前に約束をした話を全て伝えました。
すると院長からは思いもよらない一言が。
「子どもが生まれれば、優先するものも変わるもの。君はまだ今の状況も理解していない。今すべきことは自分で考えなさい!」あんなに笑顔で送り出してくれた院長からきつい口調で言われ、突き放された疎外感を感じました。
その頃にはだんだん胃痛が悪化し、体調不良から気づけば3カ月。なんだか嫌な予感はしていましたが、健康診断で胃潰瘍を発症していたことがわかり、やっぱりか… と悲しい気持ちを抱えて帰宅したのでした。
100%の確約や安心はない産後の仕事復帰
院長や他のスタッフを信頼していたからできた仕事復帰。しかしその裏では、私が産休に入った約1年不在の間、コロナ禍で人手が足りないなか働いていたスタッフや、感染症外来という全く初めての対応をしていた院長。
そこに育休あがりの私が復帰をしたとしても、私が思っているほど甘い世界ではなかったのです…。
幸いにも胃潰瘍は薬を服薬して3カ月ほどで完治し、仕事も少しずつ普通の業務へ戻ることができました。最終的には私の気持ちへの配慮もあり、復帰前の秘書業務に戻ることができています。
“約束”があっても“環境”は変わる。子どもが生まれると働きにくくなることは事実です。ですが、休んでいた時の感謝を職場の人に伝えつつ、子を持つ女性が少しでも働きやすくしてくださる職場が増えればいいなと思います。
(ファンファン福岡公式ライター / niko mama)