現在、福岡アジア美術館で「谷川俊太郎 絵本★百貨展」が6月16日(日)まで好評開催中です。本展の魅力を3回に分けてお届けします。<レポートvol.3>
子どもの方が楽しめちゃうかも?
6/16まで福岡アジア美術館で行われている「谷川俊太郎 絵本★百貨展」。キャリアの長い谷川さんのファンには大人が多いかと思いきや、実は子どもが楽しめる仕掛けもたくさん。大人も子どもと一緒に鑑賞すると、発見がたくさんありそうです。
ぜひ体験してほしいのは、大人気絵本『おならうた』の展示、おならドーム。黄土色(この色も意味深!)のドームの中には、飯野和好さんが描く個性豊かな絵本の原画が展示され、あたりに「ぶ」「ぼふっ」「ぷ」という、愉快な音が響きます。「いもくって ぶ」「くりくって ぽ」「すかして へ」と、絵本の一節を思わず思い出してしまう、おもしろコーナーです。それにしても、なんで「ぱぽぷぺぽ」「ばびぶべぼ」ってこんなに発音するのが楽しいのでしょう?
会場を通して、子どもの身長の方がきっと楽しめるのは『ぴよぴよ』の展示。一羽の小さいひよこの冒険が、壁のぐっと低い位置で繰り広げられます。「ぴよぴよ」と会場入口近くで卵から生まれたひよこは、一人で旅に出ます。「わん わん」と吠える犬に追われたり、「とぷん」と水たまりに落ちたりしながら、前に進みます。谷川さんらしいオノマトペを駆使したお話は、意味を離れて、音で楽しむ作品です。勇敢なひよこが最後どうなるのかは、ぜひ会場で確かめて!
そして全身で味わってほしいのが、『もこ もこもこ』の部屋。「しーん」「もこ もこもこ」と谷川さんのユーモラスな朗読と、大きなスクリーンに映し出されるアニメーションに、大人も子どもも引き込まれます。いったい何者なのか、どんなお話なのかはっきりしないナンセンスな展開なのに、なぜかおもしろいのです。
会場には寝転がって見られるソファも準備されているので、こころゆくまでゴロゴロしながら、『もこ もこもこ』の世界に没頭してください。
多くの人にとって、最初の本の体験は、実は目で読むものではなく、読み聞かせてもらい耳で楽しむものだったのでした。その最初の楽しみ方を思い出すような作品が詰まった展覧会です。現役子ども世代は、きっと躊躇なく作品に飛び込めるに違いありません。
その証拠に、会場には、「ぷ」とか「ふんわふんわ」とか、おもしろい言葉の断片を復唱している子がたくさんいました。谷川さんの絵本は、物語を語るだけのものではなく、思わず発音したくなる音の魅力がたっぷりです。大人も子どもも声に出して、この展覧会を2倍楽しんでください。
文/浅野 佳子(編集者・ライター)
谷川俊太郎
詩⼈。1931年東京⽣まれ。1952年第一詩集『二十億光年の孤独』を刊行。1962年「月火水木金土⽇の歌」で第四回⽇本レコード⼤賞作詩賞、1975年『マザー・グースのうた』で⽇本翻訳文化賞、1982年『⽇々の地図』で第三十四回読売文学賞、1993年『世間知ラズ』で第一回萩原朔太郎賞など受賞・著書多数。詩作のほか、絵本、エッセイ、翻訳、脚本、作詞など幅広く作品を発表している。
「絵本★百貨展」で紹介する絵本
『絵本』写真・谷川俊太郎 的場書房 1956(2010復刊 澪標)
『まるのおうさま』絵・粟津潔 福音館書店 1971
『こっぷ』写真・今村昌昭 福音館書店 1972
『ぴよぴよ』絵・堀内誠一 ひかりのくに 1972 (2009 復刊 くもん出版)
『ことばあそびうた』絵・瀬川康男 福音館書店 1973
『とき』絵・太田大八 福音館書店 1973
『もこ もこもこ』絵・元永定正 文研出版 1977
『えをかく』絵・長新太 新進 1973 (1979 復刊 講談社)
『せんそうごっこ』絵・三輪滋 ばるん舎 1982 (2015 復刊 いそっぷ社)
『なおみ』写真・沢渡朔 福音館書店 1982
『うつくしい!』写真・塚原琢哉 日本ブリタニカ 1983
『ままですすきですすてきです』絵・タイガー立石 福音館書店1986
『ぽぱーぺ ぽぴぱっぷ』絵・おかざきけんじろう クレヨンハウス 2004
『おならうた』絵・飯野和好 絵本館 2006
『かないくん』絵・松本大洋 ほぼ日 2014
『これはすいへいせん』絵・tupera tupera 金の星社 2016
『へいわとせんそう』絵・Noritake ブロンズ新社 2019
『オサム』絵・あべ弘士 童話屋 2021
『ぼく』絵・合田里美 岩崎書店 2022
『ここはおうち』絵・junaida ブルーシープ 2023 『すきのあいうえお』写真・田附勝 ブルーシープ 2023
和田誠との絵本あれこれ
展覧会概要
谷川俊太郎 絵本★百貨展
会期:4月27日(土)〜6月16日(日)
観覧時間:9時30分〜18時(毎週⾦・⼟曜⽇は20時まで)※最終⼊場は30分前まで
休館⽇:⽔曜⽇ 会場:福岡アジア美術館 7階 企画ギャラリー(福岡市博多区下川端町3-1 リバレインセンタービル7階)