私が小さい頃、明治生まれの祖母がちょっと怖くて不思議な話をたくさん聞かせてくれました。少しずつアップしていきます。
祖母が十二、三歳の頃、病でふせっている親戚を見舞いに行った。
病気の儀助さんは座敷で寝ているとのことで、奥さんに具合を聴いていると叫び声が聞こえた。
「…を…てくれ!」
顔色を変えて立ち上がった奥さんに祖母がついて行くと、病人の寝ている部屋から意味の分からない悲鳴が聞こえる。
あわてて部屋に入ると寝ていた儀助さんが叫んだ。
「向きを変えてくれ!」
訳も分からないまま、奥さんと二人で敷き布団ごとぐるっと回すと儀助さんは落ち着き、眠ってしまった。
奥さんによると床を用意する時は床の間に頭を向けているのに時々逆向きになっており、そんな時病人は必ず叫ぶのだと言う。
さらに奥さんは「逆向きになると『はやく来いはやく来い』という声が聞こえるって儀助が言うのよ」と暗い顔で語った。
家に帰って家族にこの様子を告げ、広い家なのに何故ほかの部屋に病人を移さないのか尋ねると「あそこはいろいろあるんだ」と祖母のおじいさんがぽつりと言った。
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