息子が小学2年生から始めたソフトボール。仲良しの友達が入っていることもあって、体験練習に行ったその日に入団。しかし息子は体が小さく、運動神経も決して良い方とは言えないため、他の子と比べてもなかなか上達しませんでした。 同級生がどんどんレギュラー入りしていく中で、息子はベンチの温め役。時々代打で出してもらえる程度でした。
監督から驚きのひとこと
秋のリーグ戦が終わった4年生の冬。レギュラーメンバーが野球チームに移籍。残ったメンバーはたった10人。監督・コーチも一新され、 毎年4月末から始まる春のリーグ戦に向け、新体制で臨むことになりました。
新メンバーでの最初の練習日。息子は監督から
「お前はピッチャーをやれ」と言われ、親子でびっくり。ピッチャー経験なしのメンバーの中、なぜ選ばれたのかも分からないまま戸惑うばかり。とりあえず
「ピッチングはどなたに教えてもらえばいいでしょうか?」と監督に聞くと、
「コーチも僕もソフトはやってなかったからねぇ」とそっけない返事。
引退した元ピッチャーの親御さんに相談すると、
「個人レッスンで教えてくれる人は知っとるけど、お金かかるよ」と言われ、さらにがっくり。母子家庭のわが家では、これ以上出費を増やす余裕はない為、仕方なく見よう見まねで練習を始めてみることにしました。
やるしかない! 親子で自主練の日々
まずは公園での壁当てからスタート。
ソフトは腕を一回転させて投げるウインドミルという投球方法のため、なかなか思うようなところにボールを投げることができません。
ボールを離すタイミングが早いとすぐに地面に落下、逆にタイミングが遅いと上に浮いてしまうのです。投げ方をネットで検索してみたものの、その頃は情報も少なく、結局リリースポイント(離すタイミング)は自分で見付けるしかないという結論に至りました。
それからはピッチングだけでなく素振りやランニングなどのトレーニングもやる猛練習の日々。私は仕事帰りにキャッチボールの相手をしたり、投球フォームを撮影して確認したりと、自分の出来る限りのことで息子をフォローしました。ですがなかなかコントロールは安定しませんでした。
メンタルが成長した息子
そんな中、他チームとの練習試合を組むことが決定。祈るような気持ちで迎えた初めての試合でしたが、やはりコントロールが定まらず四球を連発。押し出しでどんどん点を与えてしまい、終わってみれば28-0で完敗。
悔しそうな息子に
「デビュー戦だから仕方ないよ」と伝えたものの、私はほかのメンバーや保護者の方々に顔向けできず、試合の間は長くて辛い地獄のような時間でした。
それでも監督・コーチ、メンバーは責めるようなことを言わず、
「打たせていい、あとは野手に任せろ」と次の練習試合でも息子をピッチャーで使い続けました。初戦に大敗を経験したことで逆に開き直れたのか、それからは少しずつ息子のコントロールも落ち着き始め、リーグ戦でも何とか戦えるレベルにまで上達しました。
投げた分だけメンタル面でも成長した息子はいつも飄々と投げているものの、母親である私は何度試合を観ても心臓バクバク! 結局ゆっくり応援する余裕などないまま引退までの2年を過ごしました。
ソフトボールを通して、ストライク1球を入れることの難しさ、チームワークの素晴らしさ、そして心身ともに鍛えられ息子も大きく成長しました。
この時の経験がその後の人生においても「諦めないことの大切さ」を教えてくれた気がします。
(ファンファン福岡公式ライター/Natsuki)