私が小さい頃、明治生まれの祖母がちょっと怖くて不思議な話をたくさん聞かせてくれました。少しずつアップしていきます。
祖母が十二歳の夏の終わり、昼食を済ませ座敷でうたた寝している兄を残して外出した。
用を済ませ陽も傾きかけた頃に帰って来ると、家の中から「お〜い、お〜い!」と声が聞こえる。
ただならぬ雰囲気に草履を蹴脱いで駆け込んでみれば、真っ青な顔をした兄が座敷に横になったまま目をぎょろぎょろさせている。
何が起こっているのか理解できずに立ち尽くす祖母に、兄がこわばった手を懸命に伸ばして叫んだ。
「引っぱってくれ!!」
訳も分からずその手を取り三尺(1m)ほどずるずると引っ張ると、急に兄の体に力が戻り、起き上がることができた。
「梁(はり)に押されて動けなくなった。あぁ助かった」
血の気の戻った顔で兄はそう言った。
「梁の真下で寝ると動けなくなるって昔から言われているけど、兄さんは寝てるうちに真下に入ってたんだろうね。古い家にはそんなこともあるよ。それにしても兄さんの必死な顔は忘れられないね」
祖母は少し笑いながらそう語った。
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