私が小さい頃、明治生まれの祖母がちょっと怖くて不思議な話をたくさん聞かせてくれました。少しずつアップしていきます。
祖母が6歳の時の話。
「見つけると幸せになる」という噂を耳にした祖母は、友達の良子ちゃんを誘って四ツ葉のクローバを探しに出かけた。
家の近所を半日ほど探したが、他の友達が先に摘んだのか見つからない。
「山の方に行くと、きっとあるよ」
良子ちゃんの言葉に誘われ、山の中へ入って行った。
しゃがみこみ地面を丹念に探すと…「あった!」「ここにもあったよ!」
そこには四ツ葉のクローバが驚くほどたくさん生えていた。
小1時間、夢中で摘んでいた祖母はハッと、われにかえった。
「おかしい…こんなに四ツ葉ばかりなんて…」
薄気味悪くなった祖母が立ち上がって見回すと石碑が目に入った。
「いけない!」
そこは皆が「異人さんのお墓」と呼び、近付くのを避けている場所だった。
「帰ろう!ここは来ちゃだめなとこだよ。クローバも置いて行かなきゃ」
祖母は摘んだクローバを全部置き、良子ちゃんに声をかけた。
「せっかくこんなにたくさんあるのになあ…」
良子ちゃんのも「異人さんのお墓」のことは知っていたので渋々腰を上げた。
数日後、良子ちゃんの家に寄るとお母さんが暗い顔で出てきた。
「あの子は寝てるよ。あんたと山に行った日の夜、ずっと独り言を言っててケラケラ笑ってたかと思ったらパタンと倒れ…それからずっと」
見ると枕元に枯れた四ツ葉のクローバがある…置いて来なかったんだ!
祖母はそれを預かり「異人さんのお墓」に返しに行った。
程なく良子ちゃんは目が覚めたが、四ツ葉のクローバを摘みに行った日から数日間のことはまるで覚えてなかったそうだ。