保育園入園。1歳双子との怒涛の日々に届いた内定通知に、ホッとしたのを覚えています。しかし、それは嵐の前の静けさに過ぎなかったのです。入園までの約1カ月。超絶不器用な私の格闘の日々を聞いてください。
入園前の面談でびっくり
3月頭に入園前面談が行われました。受かった保育園は前年新設されたばかり。室内は柔らかなピンク色と木材が多用され、清潔感がありました。
面談担当は50歳ぐらいの、白髪交じりでふっくらした頬の女性。微笑みながらゆったり話すのが印象的な先生でした。入園準備の話になった時。穏やかに
「ミシンはお持ちですか? 手縫いだと2人分は大変ですよね」と言われ、ハッとしました。
先生が指差すのは、しおりに書かれたコットカバー。お昼寝の時に使うコット(10センチくらいの高さのメッシュが張られた台)にかけるカバーです。
私は思わず
「ネットで買えるので」と返しました。
すると先生は少し残念そうな声で、小首をかしげながら
「市販でも結構ですが、お子さんはママの手作りの物にすごく安心しますよ」と言い微笑みました。その優しい声と“すごく安心する”の言葉に、私は思わず
「頑張ります」と返していました。
眺めるだけの日々
面談から2週間。私はグズグズしていました。
常に視界に入るのは、買ってきたままの手芸用品店の紙袋と、10年間ミシンが眠る押入れ。
実母や夫は
「買った方が良い」と言い、「ごもっとも」と思いつつ頷けない私…。先生の“すごく安心する”の言葉が引っ掛かる。でも作り始めない… そんなモヤモヤした日々でした。
しかし3月半ばを過ぎタイムリミットは目前。子どもたちを寝かし付けた後、ついに布を裁断し、ミシンを引きずり出しました。しかし直後壁にぶち当たったのです。
それは下糸(ボビン)巻。10年前、1度しか巻けず音を上げた厚き壁です。何時間も挑みますが、疲れと苛立ちで思考が止まり、1日目はそこで終了しました。
2日目にはミシンでの下糸巻きを諦め、手作業で巻くことに。しかし不器用な私は四苦八苦。手がつったり途中で糸が絡んだり… 下糸巻きだけで2日目は終わりました。
3日目、4日目は縫う作業。何度もほどいては縫い直し、迫るタイムリミットと体力の限界に、じわじわと追い詰められていったのでした。
総仕上げと気付いた失敗
5日目やっと総仕上げ。しかし、そこで初めてしおりに書かれた幅より1センチも太いゴムを買ったことに気が付きました! 頭が真っ白になり、ボロボロとこぼれる涙。
間違えて購入したゴムを握りしめ、今日はもう無理だと布団に潜り込みました。
6日目は、前夜とことん泣いたせいか落ち着いて作業に挑めました。とはいえゴムを縫い込む部分が厚く、ミシンで縫えません。結局手で縫い付けました。
そしてやっと完成したコットカバー! 何度も手がつり、糸を凝視しすぎて頭痛まで起こした下糸巻きも乗り越え完成したのです。しかしホッとしている場合ではありません。これはあくまでも1枚目の完成。
わが家は双子、もう1枚作らないといけないのです!
結局2枚の完成に2週間かかりました。
終わった時はホッとするよりグッタリで、気絶したように眠りました。
保育園では、いびつなコットカバーを見て、面談の先生が
「大変でしたね」と大切そうに手に取ってくれ、恥ずかしくも嬉しかったです。
結局コットカバーは、昼寝が無くなるまで4年間使いました。苦労話を6歳になった子ども達に伝えても
「へー」だけの反応ですが、子どもの成長と共にほろ苦く良い思い出です。
(ファンファン福岡公式ライター/aki)