義母が亡くなり、母の日を祝う側から祝われる側になって初めての年のことです。自分で夕飯を作る気になれず、外食がしたいとリクエスト。お店選びや予約を面倒がる夫に文句を言うと…。ブチ切れた夫の口から飛び出したのは、耳を疑う言葉だったのです。
母の日に外食をリクエスト
同じ市内に暮らしていた義母が亡くなるまで、母の日は義実家にプレゼントを持って行くのが恒例行事でした。しかし、結婚するまで母の日を祝った事がことがなかった夫は、全て人任せ。前もってプレゼントを用意するのも、子どもたちに似顔絵や手紙を書かせるのも私。当日、義母宅まで車を出すのが、夫の唯一の仕事でした。
一方、自分も母親である私は、子どもたちから肩叩き券をもらうくらい。義実家の帰りに必ずファミレスに寄るので、夕飯の支度をしなくていいのが唯一、母の日らしい小さな贅沢でした。
しかし義母が亡くなると、母の日の準備もお出かけも不要に。とはいえ、自分で食事を作る気になれなかった私は、昼過ぎから
「夕飯は外でおいしいものが食べたいな~、母の日だからな~」と猛アピールしました。
しかし面倒くさがりの夫は
「えー、今年は出かける必要ないのに…」と後ろ向き。
「でも、ママが自分で作るんじゃかわいそうでしょ」と小学生の娘が援護してくれたものの
「じゃあ好きなところに行けば?」と投げやりな返事。
「母の日だから、早く予約しないと取れなくなっちゃうよ」と私が膨れて催促すると
「だから、自分が行きたい店に予約すれば?」と語気が荒くなってきました。
「え? こういう時はパパが予約するものなんじゃないの?」他人事のような夫に、中学生の息子も加わって意見しはじめます。
うちに母の日はない!?
その時、夫が怒鳴り声をあげました。
「うちに母の日はないっ!」ブチ切れた夫の口から飛び出した言葉に、一同ドン引き。
「信じられない」と私。
「それはないでしょ…」と子どもたち。
すると夫はもっともらしく
「うちには父の日もないんだから、母の日だってないんだ」と訴えはじめたのです。
いえいえ、うちに父の日はあります。プレゼントこそ買いませんが、そこはお互いさま。毎年、夫好みの手のかかる料理を作り、今日は父の日だから、と食後にデザートまで出すじゃありませんか。母の日の外食が気に食わないのなら、あなたが代わりに作ってくれるの? って話です。
「うちに父の日あるよ」と娘が言ってくれたので
「ハイ、父の日には毎年ご馳走を作ってますけど」と私も後に続きますが、夫はすっかりへそを曲げ、だんまりを決め込んだようでした。
結局、自分でレストランを予約
夫がこうなると面倒だ、と家族は知っています。
「仕方ないから、ママが行きたい店に予約すれば?」と現実的な息子が口を開きました。
深くため息をついて、私は気になっていた韓国料理店を提案します。子どもたちはすぐに乗ってくれたものの、夫は無視。
「パパ、韓国料理でもいいですか?」と声を掛け直しても、返事はなし。仕方がないので
「予約するよ!」と宣言し、自分で電話をかけました。
時間になって車を出してとお願いすると、バツが悪そうに動き出した夫。しかし、店に着くと、韓国出張が多い夫は物知り顔で注文を取り、本場韓国のうんちく話を子どもたちに披露。ようやくわが家にいつもの団らんが戻ってきたのでした。
感動やサプライズがなくても、家族でおいしい食事が楽しめれば私は大満足だったのに、サービス精神ゼロの夫のせいで後味の悪い一日に。 “忘れられない母の日” になりました。
(ファンファン福岡公式ライター / 繭子)