最終回!祖母が語った不思議な話・その玖拾玖(99)「たましい」

明治生まれの祖母が語ってくれた、ちょっと怖くて不思議な話を紹介するこの連載も99話…ついに今回が最後のお話です。

イラスト:チョコ太郎

人魂を見たことはないが、作ったことはある。
子供会の肝試しで脅かし役になった中学2年生の時だ。
棒の先に懐中電灯を付け緑のセロハンを貼り、周りを針金で炎の形にしネットを被せた。

夕暮れ時、庭で試していると祖母が見に来た。
「上手にできたね」
「ありがとう。今度の肝試しで使おうと思って。そうだ、おばあちゃんは人魂って見たことある?」
「あるよ。忘れられない体験が…話してあげようか?」
「うん。久しぶりに聞きたいな」
祖母は別棟の隠居家に移ったため、中学に入ってからは話す機会も減っていた。

「これは戦時中の話でね」と前置きすると祖母は縁台に座った。
私も隣りに腰を下ろした。

………………………………

敗戦色が濃くなった昭和十九年の初夏、祖母は瀬戸内に近い故郷を訪れていた。
子どもたちの疎開先を探すためだったが、親戚が多く残っていたため苦もなく決まった。
肩の荷が下りた祖母は久しぶりに懐かしい地を歩いてみた。
幼なじみと遊んだ小川や池、お地蔵さんや観音堂…どこも昔のままだった。

夕陽に照らされ茜色に染まった田舎道を歩いていると正面の山腹で瓦が光った。
子どもの頃、友達皆で泊まったことがある山寺だった。

そちらへ足を踏み出そうとしたとき、空襲警報が空気を引き裂いた。
一番近くの防空壕に飛び込むと中には仲の良かったJちゃんがいた。
声をひそめながらも昔話に花が咲き、緊張のときは楽しい時間に変わった。

二時間ほどして外に出ると日は落ちていたが、あちこちで起こった火災が空を赤く照らしていた。
見上げると山寺からも煙が立ち昇っている。

Jちゃんと別れ何かに引かれるように山寺に向かって歩いて行った祖母は、信じられない光景を見た。
ほぼ丸焼けになった寺から夥(おびただ)しい数の人魂が空に昇って行く。
それはとても綺麗で、怖いとは全く思わなかった。
自分でも理由の分からない涙が溢れて止まらなかった。

………………………………

「その寺は亡くなった子どもの人形や着物、無縁仏の持ち物や遺髪、幽霊の絵といったいわく因縁のある物を納めることで有名だったんだけど、その空襲で全部燃えてしまった。私が見たのは空に帰って行く魂だったと思う…戦争なんかやっている人間たちにあきれて、別れを告げたのかもしれないね」
「そんな人魂なら見てみたいな」
「あなたは昔から怖いものや不思議なことが好きだったね。三つ子の魂、百までか」
「おばあちゃんの影響だよ!」

それを聞いた祖母は昔と変わらぬ笑顔を見せた。

チョコ太郎より

「百物語において百話語ると怪しいことが起こる」…昔からそう伝えられています。
2年間に渡り連載してきた「祖母が語った不思議な話」も、しきたりを守り99話で一旦幕引きといたします。
この連載の感想や「こんな話が読みたい」といったご希望をお聞かせいただけるととても励みになりますので、ぜひ下記フォームにお寄せください。
最後になりますが、これまで読んでくださった皆さまには私チョコ太郎はもちろん、祖母も空の上から感謝していると思います。本当にありがとうございました!

※この記事内容は公開日時点での情報です。

  • URLをコピーしました!

著者情報

子ども文化や懐かしいものが大好き。いつも面白いものを探しています!

目次
閉じる