数年前、2歳の息子と8カ月の娘の育児に追われていた私。曜日感覚も無くすほどの忙しさで、うっかり父の日を忘れてしまいました。気づいた時には夕方で、急いで準備するより明日でいいかと思っていたのですが、この判断が父の日を仕返しの日に変えることになりました。
忘れられた事を根に持つ父
乳幼児の育児に追われていたこと、また母の日に比べて父の日は盛り上がりに欠ける(と感じる)こともあり、母の日は時計を渡したのですが、父の日はうっかり忘れてしまった私。当日は何もできず、謝罪とプレゼントのリクエストを聞こうと翌日、急いで実家へ向かいました。
しかし、時すでに遅し。私の顔を見るなり
「父の日もわからない人が来た!」と早速、真顔で嫌味ったらしく言う父。
以前、誕生日に連絡が遅れた時も嫌味を言っていて根に持つ性格だった、失敗した… と反省しながら
「昨日は来られずごめんね、何かリクエストある?」と受け流すよう会話をしました。それでも父は、
「もう父の日は終わっただろ?」
「父の日っていつ?」
「なんのプレゼントだ?」と、とぼけた顔でネチネチと嫌味を続けます。
小1時間我慢していた私でしたが、作り笑いをする頬が疲れ「子育てで手一杯なのにあんたに構っている暇はないんだよ!」と喉まで出かかっていたので、言い争いになる前に
「欲しい物がないなら勝手に買ってくるから!」そう笑顔で優しく言い、実家を後にしました
父への仕返し
車を走らせながら、父の日を忘れた私が悪い。でもこんなに嫌味言うか? とどんどんイライラが増していき「嫌味を言ったこと後悔させてやる!」私はそう心に決めました!
プレゼントで靴や時計などお洒落なものを貰うのが大好きな父。そんな父にあえて、地味なプレゼントを渡すことにしました。嬉しくないけれど使う物… と考えた結果。肌着等の日用品なら嬉しくないけれど使うから無駄にならず最適だと考えました。肌着と靴下のセットを綺麗な包装紙で包んでもらい、可愛いリボンを付けて、見た目と中身のギャップと貰った時の父の顔を想像するだけで私の口元は緩みます。
いざ父の元へ
実家へ戻るとプレゼントを見て
「来年の父の日か?」と嫌味を言いながらも少し喜んでいる表情を見せる父。包装紙を急いで開けた父は、出てきた肌着と靴下にキョトンとした顔をして無言。そんな父をみて、仕返し成功! と小躍りしたい衝動を抑えながら
「使える物をと思って」そう話す私の声は笑いを堪え震えていました。
横にいた母から
「何枚あっても困らない! 有難いね!」と言われ
「あぁ」と不満げな顔をしながらも納得しようとする父。父の日を忘れたことにあれ程嫌味を言うのに、プレゼントへは嫌味を言わないところは偉いななんて思いながら、父へ
「いつもありがとう」と感謝の言葉を伝えました。
けれど私の仕返しはこれで終わらず、その後2年は父の日に普段使いの日用品を渡し何とも言えない父の表情を見て楽しみました。3年目に
「どうせ靴下だろ」と言いながら開けた包みの中から欲しがっていた財布が出てきた時には
「ヤッター!」と声を上げて喜んでいた父。母によると終わりの見えない私の仕返しに
「冗談のつもりだった」と相当参っていたそうです。
この仕返し以降、父は冗談でも私に嫌味を言わなくなったので仕返しはこれが最後になりました。周りから父と「似ている」と言われても「似ていない」と否定していた私でしたが、根に持つ性格は父に負けないレベル。悔しいけれど似た者親子であることを実感する出来事となってしまいました。
(ファンファン福岡公式ライター/渡山笑名)