私が小さい頃、明治生まれの祖母がちょっと怖くて不思議な話をたくさん聞かせてくれました。少しずつアップしていきます。
開かない…
暗い蔵の中、何かに急かされるような気がして、焦って函(はこ)を開けようとしていた。
あっ、蓋が少し動いた! これで…
「大丈夫かい? ずいぶんうなされていたよ」
祖母の声で目を覚ました。
寝汗をびっしょりかいていた。
「夢か…もう少しで開きそうだったのに」
「開くって?」
「この何日か、同じ夢を見るんだ。蔵の中で古い真っ黒な木の函を開けてるんだけど…」
「…その函には紙が貼ってなかったかい?」
「あったよ。○に十みたいな印を書いた紙が」
「函は開かなかったんだね?」
「うん。でももう少しで開きそうだった」
そこまで聞いた祖母は顔色を変えた。
バタバタと手紙や帳面を調べていたと思うと、どこかに電話をかけた。
先方に挨拶を述べた後、祖母はこう聞いた。
「あの函はまだそちらにありますよね? ちょっと見ていただきたいのですが」
調べてかけなおすとの返事に電話を切り、しばらく待っているとベルが鳴った。
「はい。やはり…ではよろしくお願いします。」
祖母の説明によると夢に出てきた函は、昔、親戚の蔵の中にあった物だという。
「その函を開けると災いがあると伝わっていてね、触らないようにしてたんだけど…。幾人かは知らずに開けて、病にかかったり事故に遭ったりしたんだよ。捨てるとさらに悪いことが起こるんじゃないかと皆困ってしまってね。結局お寺さんに納めてもらったんだ。あんたの夢で嫌な感じがしたので調べてもらったら、封じたお札が剝がれかかっていたそうだよ。新しい札を貼ってもらったから、もう夢は見ないよ。安心安心」
祖母の言った通り、函の夢は今日まで見ていない。