マンション育ちの私にとって戸建ての近所付き合いには、「面倒なもの」という勝手な思い込みがありました。しかし、実際には気のいい仲間が得られ、人とのつながりというものの大切さを知る良い機会を与えてくれました。面倒なことばかりじゃない! そんなはじめての近所付き合いの体験談をお話しします。
引っ越してきたのは郊外の住宅地
夫の転職で引っ越してきたのは、一気に30棟が竣工した郊外の建売住宅地でした。それまで、マンションにしか住んだことのなかった私は「戸建て」への憧れを持っていました。ですが、戸建てに住んでいる友人から自治会へ強制的に加入させられた話を聞いていたのもあり、私は新しい環境に不安を残したまま、いざ引っ越しに。
引っ越してから1カ月ほど経ったある日、わが家のポストにこんなチラシが…
「ガーデンBBQ開催のおしらせ 5月10日 T宅の庭にて 出入り自由」
夫と2人でこのチラシを見てびっくり! もともと私たち夫婦はあまり社交的ではなく個人の時間を大切にしたいタイプ。ご近所さんとも一定の距離を保った付き合いをしたいと思っていました。夫婦そろって「これはないな」と判断し、面倒なご近所さんが住んでいるなぁ… というのが正直な感想でした。
社交的な主催者
しかし、驚いたことに毎月開催されるそのBBQは会を重ねるごとに参加者が増えていきました。4回目のお誘いチラシがポストに入っていた日、ついに息子から
「再来週の土曜日にBBQがあるってCちゃんが言っていた。行きたい!」と言われてしまったのです。
CちゃんはBBQの主催者であるTさん夫妻の娘さんで、息子とは同じクラスで隣の席でした。“子どもの友達関係のため”と今回は諦めて参加することに。
当日は、「自分たちが食べたいもの、飲みたいものと参加費1人300円」を持って行く、たったこれだけのルールしかありませんでした。
「参加費300円…?」
不思議に思いながらも、時間に行ってみれば会場はすでにセッティング済みで、2つの家の庭を横断する形で広々とした、建売住宅が並ぶ地だからこそできるような空間が出来上がっていました。チェア、テーブルにタープ、ビニールプールまであります。すでに10家庭総勢34名が集まっていて、勝手知ったる他人の家とばかりに自由に出入りしていてびっくり。
「こんにちは! ○○さんですよね。うちの子と来てくれるといいなーと話していたので、うれしいです!」と気さくに迎えてくれたのは主催のTさんでした。息子がさっそくCちゃんと遊びはじめると、手慣れた様子で次々にご近所さんを紹介してくれます。
元々の性格が社交的なのでしょう。常に笑顔を絶やさずに気配りする様子には嫌味なところが一切なく自然体。すぐに好感を持ち始めている自分に気づきました。その日は夕食までお世話になり
「楽しかったね」
「また行きたいね…!」と夫婦で目を丸くしながら話すまでになっていました。
「一緒にいることの心地よさ」を教えてくれた
それからというものBBQ会の仲間たちは、家族ぐるみの付き合いになっていきました。夫婦の結婚記念日には、子どもを預け合って夫婦2人きりの時間を作り、「パパデイ」には、パパたちはお昼から居酒屋へ行ったり、「ママデイ」は、ママだけのグループで一泊温泉旅へ行ったりと楽しみが増えていきました。
はじめは「極力避けよう」と考えていた近所付き合いが、私たちの人生に彩りを与えてくれる素敵な存在になっていき、なくてはならないものに変わっていったのは幸せなことでした。
子育てを肩の力を抜きながら楽しめたのは、こうした近隣コミュニティがあったからこそでした。きっかけを作ってくれたTさんには今でも感謝しています。
(ファンファン福岡公式ライター/Hoshi.ma.k.a東京ビッグブッダ)