これは数年前の話です。同僚A子のオシャレなホテルウエディングにワクワクしたのも束の間。A子の実の姉や弟、そして叔父までも出しゃばる結婚式に会場全体がドン引きムードに!
新郎新婦の入場にドン引き
同僚だったA子の結婚式の会場は、とてもオシャレなホテルウエディングでした。 教会での挙式は厳粛なムードの中執り行われ、当時独身だった私は、美しいA子にそれはそれはうっとりしたものです。
挙式が終わると、そのまま披露宴会場に移動し、一緒に出席した同僚達とお喋りをしながら、披露宴の開始を待ちました。
司会者が現れ、披露宴開始の挨拶が始まり、会場の照明が全て消えました。これから音楽が流れて、A子と新郎が入場かな、とワクワクしながら待っていると、突然会場の片隅がパッとスポットライトで照らされました。何事かと会場にいた全員がそちらに視線を向けます。
そこに現れたのはグランドピアノに座る、ピンクのドレスを身にまとった女性でした。
「それでは新婦A子さんの実のお姉さんであるB美さんのピアノ演奏で、新郎新婦入場です!」 司会者の紹介の直後、ピアノがバーン! と鳴り響き、安室奈美恵さんの「CAN YOU CELEBRATE?」が奏でられました。お姉さんは体をゆっくり揺らしながら、それはそれは気持ち良さそうにピアノを弾いています。
全員がお姉さんに注目したまま、新郎新婦が入場してきたのですが、あまりにピアノのインパクトが強過ぎてみんな呆気にとられた顔。
「珍しいよね? 実の姉のピアノ演奏で入場って…」 隣に座っていた同僚が私に耳打ちをし、私もコクコクと頷きました。
今度はお色直し中にも事件が?!
それから式は滞りなく行われていき、新婦A子は1回目のお色直しに。 A子が退場後、突然会場がざわつきだしました。何事かと見渡すと、金や赤、青といった様々な色の頭をした男の子達がそれぞれギターやベースなどを持って、ずかずかと大股歩きで前に現れました。会場全体が息をのむ音が聞こえるような静けさに包まれます。
「えー、新婦がお色直しの間、新婦の実の弟であるC太さん率いるロックバンドの演奏をお届けします!」
司会者の言葉に思わず「え」と漏れる声。すると、ギュイーーン! とギターの音が鳴り響き、大音量で演奏が始まり、なんだかよく分からない歌を歌い始めました。
結婚式にはとてもそぐわない、そのうるさい演奏に会場全体が明らかに引いているのが分かります。 そのまま3曲、ロックテイストの歌が終わったところで、お色直しの入場となりました。正直やっとうるさいのが終わった… とホッとする私。
その後式は進み、キャンドルサービスや新婦A子の母への手紙、新郎父の挨拶、新郎謝辞など、普通の流れで披露宴は終盤へと差し掛かりました。司会者が締めて終わるだろうと思っていたその時。
「それでは新婦の叔父であるDさんからお知らせがあります。Dさんよろしくお願いします!」
前代未聞の事態が
最後の最後に新婦の叔父?! 一体何が始まるのだろうかと、なんとなく嫌な予感がする私。
「えー。本日は姪である新婦A子の結婚式にご参列頂き…」 普通に挨拶をはじめる叔父さんに、何事かと見守る会場の空気。
「実は私、3カ月前に私自身の自伝書を自費出版にて発売させて頂きました。これは私が産まれてから今に至るまでの山有り谷有りの人生を書き記しております。ぜひ皆様お手にとってご覧くださいませ。こちらは1冊1,800円となっております。会場の外にて販売いたしますのでどうぞよろしくお願い致します」
叔父さんは堂々と頭を下げると、満足そうな顔でニコリと笑いました。 会場は完全にドン引きです。パチ、パチ、パチ… と拍手の音はまだらに聞こえてきますが、全員顔が引きつっています。
その後、新郎新婦が退場し、私達も会場を出ると、新郎新婦の隣に一緒に並んだ叔父さんが、目の前に小さな机を置いて、自費出版の自伝書を堂々と販売していました。買っている人は誰もいませんでしたが…。
今までたくさんの結婚式に参加してきました。しかし、ここまで新婦の身内がでしゃばる結婚式は初めてです。その後、会社内でA子の結婚式がネタとなってしまったことは、本人は恐らく知らないでしょう…。
(ファンファン福岡一般ライター)